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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
50/67

50.1枚の風景画

上昇していた小さな部屋はやがて止まり、扉が開いた。


コナーがするりと外へ出て行き、わたしたちもその後に続く。


ついた場所は下のホールとは打って変わって、狭い廊下だった。


左右には茶色のドアが並んでいる。


どれも全く同じに見えるけれど、コナーは突然立ち止まるとそのうちの1つを開けた。


そして、その中へと進む彼についていくと。


その部屋には沢山の絵が飾られていた。


主に柔らかい色彩の風景画だ。


空と海をテーマにしたものもあれば、街の景色を描いたものもある。


「この絵は誰が書いたものなんですか?」


「私にはよくわかりません」


リアンの質問に即答するコナー。


「聞いていただけで、ここに来たのは初めてなもので」


そう言いながら、1枚、1枚、絵を確認するようにして部屋を回っていく。


「ああ、これですね」


やがて、小さな声で呟いて、1枚の絵の前で立ち止まった。


金色の枠がついているその絵は、長閑な風景が描かれていた。


花が咲いている小さな庭と石畳のポーチ。

蔦がからまる煉瓦造りの古い家も右側にある。


コナーはその絵に両手を伸ばし、壁から外すと床に置いた。


その絵の下には…鏡があった。


コナーは部屋の隅にあった木の丸椅子を鏡の下に置くと、


「これを踏み台にして、鏡の中へ進んでください。レヴィ様の元へと行けるはずです」


と言った。


「コナー…さんはここでお別れですか?」


わたしが尋ねると、眼鏡を押し上げる。


「招かれてるのは貴女たち2人です。これ以上先には行けません。又、私には仕事が山積みなもので。本当はこの時間は寝てるんですが」


そうだった。

こんな朝はコウモリの時間じゃない。


「案内、ありがとうございました。また会えますかね?」


「あまり会いたいとは思いませんけど」


にっこり微笑むリアンに、コナーは腕組みをしながら涼しい顔だ。


「では、アリス。私が先に」


リアンは椅子に足を乗せると、ひらりと飛び込むようにして鏡の中へ消えていった。


「あの、ありがとうございました。クリフさんにもよろしくお伝え下さい」


「あの人の事はいいです」


わたしもコナーに会釈をすると、クリフさんに対しての冷たいコメントがかえってきた。


こうやって彼の目の前で移動するのは3度目だ。

なんか変な感じ…。


丸椅子に乗り、鏡の中へ飛び込んでいく…!



一瞬、光に包まれ、それが消えたとたん。


足元にジャリッとした砂の感覚が現れた。


乾いた風に髪が揺れる。


ここは…?


「さっき見た絵と同じ景色ですねぇ」


背後にいたリアンがのんびりと言った。


本当だ。


花壇に石畳のポーチ。

蔦の絡まる家もある。


「わたしたちは絵の中に入ってきたんでしょうか?それともここの風景を絵に書いただけ…?」


「不思議な事といえば、ここには鏡がないという事です。鏡をくぐってきたなら、対のものがあるはずなのに」


確かにそうだ。

辺りをキョロキョロしてもそれらしいものはない。


「ここに本当にレヴィ様はいらっしゃるんでしょうか?お屋敷みたいなものもないし…」


「あの煉瓦の家で聞いて見ましょう」


わたしが首を傾げるとリアンは煉瓦の建物を指差す。

周りを見回しても他に建物はないし、それが1番良さそう。


わたしたちは石畳の小道を進んで、古びた家に近づいた。

すると、玄関先で茶色いローブを身にまとい、箒で掃除をしている人物がいた。


「あの、すみません」


こちらに背を向けているその人にわたしは声をかける。


「レヴィ様を探しているのですが…」


「…お待ちしておりましたよ」


その人は振り向くと、サッとローブのフードを下ろした。


輝く金髪のロングヘアに…瞳は青色の女性だった。

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