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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
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44.森の中の出来事

強い決意を持って、カレブに気持ちを集中していく。

でも、もしかして。

あの時、力を呼び覚ますことができたのは、相手がリアンだったから、だろうか…?


「雑念を感じますねぇ」


握られてた手にリアンがキュッと力を入れてくる。

なんでわかったんだろ…?


「…すみません」


もう一度仕切り直し。


カレブと出会った時の事や、再会した時のやりとり。

マダムのクルートで一緒に塔に向かったこと。

最後に別れる時、「オニイサンを助けるんだろ?」と励ましてくれたこと。


いろんな場面を思い巡らせる。


その時。


瞳の奥が熱くなった。

前回の時のような激しい痛みはないけれど。


じっと目を閉じていると、映像が瞼の裏に浮かんできた。

水色のフィルターがかかっている、不鮮明なものだ。

映像は時折少し揺れ、音は全く聞こえない。


森の中にいるのはカレブの姿…?


そこへ、ローブをすっぽりと被った人物が近づく。

フードに隠れ、顔は全く見えない。


カレブは地面からその人を見上げていて、何か話しているように嘴を動かしている。


人物はゆっくり身を屈め、そして右手をカレブに向けた。

光が手のひらから放たれ、カレブを包んでいく…!


映像はそこで途切れ、わたしはハッと目を開けた。


「リアン、見えました!」


「瞳、青色になっていますよ」


リアンに指摘され、廊下にある鏡で確かめると、青い瞳の見慣れない自分が映っていた。


「ローブを着た人物がカレブに何か光を…」


「ローブを着た人物…」


リアンは口の中でその言葉を転がした後、早口でわたしに促した。


「アリス、とりあえずその瞳でカレブになりすました者を見るんです。真の姿がわかるかも知れない」


「はい!」


わたしたちは部屋に戻り、カラスの姿に目をやる。

その瞬間、瞳の奥の熱さがすぅっと引いた気がした。


「リアン、もしかして…」


「…残念ながら、薄紫に戻ってます」


非常に言いにくそうに教えてくれる。


…持続しないし、不安定。


そんな自分にがっかりするけれど、映像を見れたことで確信した。


「もう一度聞くけど、あなたカレブに何をしたの?」


冷えていく部屋の空気なんか、もう気にしない。


「わたしは見たの。森の中で、ローブ姿の人がカレブに近づいて、手の平から光を放った。あれはあなたなの?」


カラスも含めて、皆、口を閉じてわたしを見つめてる。


「カレブは無事なんでしょうね?カレブのふりしてここに来た目的は何?」


「リアン。こいつはもしかして、アリスの言うように…?」


ドム爺さんが一番最初に口を開いた。


「ええ、きっとそうです。私はアリスを信じてますよ」


リアンがさらりと答えてくれる。


「誤魔化したって、わたしにはわかる。あなたはカレブじゃない。全く別のものよ」


カラスは小さく丸い目でただわたしを見つめている。


静寂が部屋を包んだ。


「オーウェンさま!」


それを飛び込んで来た女性のお手伝いさんが切り裂いた。


「突然申し訳ございません!」


「何事だ?」


その慌てた様子にオーウェンさんが立ち上がる。


「それが…」


お手伝いさんはちらりとカラスに目をやり、


「確認しますから、少々お待ちくださいと申し上げたんですが…」


「なんの話だ?」


「でもすぐにここに来たいと聞かなくて…。でも同じ名前の方がそんな…」


「アリス!!」


もじもじしているお手伝いさんの背後から無理やり飛び込んできたのは…!


「カレブ!!」


間違いない、本物のカレブだ!


「アリス、良かったあ!」


カレブはわたしの周りを飛ぶと、向かいにいるカラスに向き直った。


「あれはオレの偽物だよ!!」


そう言われたカラスはポン、と床に降り立った。


「…なかなか面白いものを見せてもらいました」


その声色はカレブのものではない、穏やかな男性のものだった。










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