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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
43/67

43.揺り起こす力

上手くは説明できないけど…違和感を感じる。


カレブのぬいぐるみの中に別のものが入ってるというか…そういった感覚だ。


「…あなた、誰?」


わたしの唇の隙間から、低い声が溢れた。


途端に部屋がシン、と静まり返った。


「どうしたんだ、お嬢ちゃん?あのやかましいカラスだろ?まぁどれも黒くて見た目は似たり寄ったりだけど」


すぐさま沈黙を破ったのは、バターロールを頬張っているブルーノさん。


「アリス、どうしたって言うんだよ?そういう冗談はは傷つくなぁ」


椅子の背もたれを止まり木がわりにしてるカレブ風のカラスは、不満げに嘴を開く。


わたしはハッとして、リアンの顔を見る。


「リアン、わたしの目…」


「いつもの紫色です」


わたしの言いたいことがわかったようで、彼は即座に返答してくれた。


また《運命の女神》の力が目覚めて、瞳が青色になったらこのカラスの正体を見極めることができるんだろうか?


気持ちを集中しようとしても、力のカケラも感じることができない。

わたしの奥底でぐっすり眠ってるようだ。


「…アリス、寝ぼけてるの?それかまだ疲れが残ってるんじゃない?とりあえず、なんか食べたら…?」


心配そうに、おそるおそるデイジーが声をかけてくれる。


「そうだ、そうすると良い」


「さぁ、どうぞどうぞ」


ドム爺さんとオーウェンさんも続けて席を勧めてくれる。


わたしはカラスから目を離さずに、空いているその隣の席に腰かけた。


ちらりと向かいのリアンに視線をおくると、彼はテーブルに頬杖をついて、カラスを眺めていた。


そしてわたしの視線に気づくと小さく微笑み、頷く。


目の前にいろんな種類のパンが盛ってあるカゴがある。

わたしが手を伸ばしデニッシュを取ると、それが合図になったように、皆は会話を再び始めた。


なんとなく周りがホッとしたような雰囲気になる。


ブルーノさんと軽口を叩きあってるカレブの声。


わたしはそれを聞きながら、バターの香りがするデニッシュを噛みしめる。


わたしがおかしくなっちゃっただけで、あれは本当にカレブなの?


それともやっぱりカレブじゃない誰か?


そうだとすると、本物のカレブはどこに?


塔のある島から戻ってこれたんだろうか?


門番を塔から引き離したことがバレて問題になってたとしたら…?


いろんな思いが頭の中で渦巻いて、たまらずカラスに向き直る。


「本当のカレブはどこ?カレブに何かしたの?」


「アリス〜、いい加減にしてくれよぉ」


カラスは情けない声を出し、またしても部屋に緊張が走った。

皆はピタリと手を止めて、こちらの様子を伺っている。

そんな空気感と頭の中の混乱に耐えられず、わたしは席を立つと廊下へ飛び出した。


「はぁ…」


ひんやりとした壁に背中を押しつけ、深いため息をつく。


どうしよう…。


後頭部をゴツンと壁にぶつける。


そこへリアンがやってきた。


何も言わずにわたしの横に並び、同じ様に壁に背中を預ける。


「あのカラス…カレブじゃない…多分」


「私はアリスを信じてますよ」


しばらくしてわたしが小さな声で言うと、リアンは優しく答える。


「凄く違和感を感じるの…でも、わたしが間違ってるんだろうか?皆んなだって、きっと変に思った。だけど…」


自分の足元を見つめながら、独り言のように呟く。


すると、わたしの右手がひんやりとした大きな手に包まれた。


「アリス。自分の力に呼びかけてみるんです。そうすればきっと、あのカラスの本当のこと姿が見えてくるはずですよ。そうやって迷わずに、自分を信じることです」


自分を信じる…。


わたしは頷いて、目を閉じて集中してみることにした。


カレブは何処だろう?

あのカラスは何者?


お願い、わたしの中の力!


力を貸してくれる?と聞いた時、カレブはその為に来たと答えてくれた。


わたしも自分の中の力を揺り起こしてみせる!

カレブに何が起こったか知る為に。


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