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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
42/67

42.疑惑の朝食

「アリス、良かったぁ!」


デイジーに強く抱きしめられ、わたしはその豊満な胸で窒息しそうになる。


「デイジー、く、苦し…」


「あぁ、ごめん!」


堪らずうめくと、彼女はわたしを離し、リアンに目をやった。


「…久しぶり」


「ご無沙汰してました。用意してくれたお菓子は凄い威力でしたよ」


トゲのある挨拶にリアンは微笑みで返す。


「わかってるだろうけど、こいつはお前さんの事を凄く心配してたぞ」


その様子を見てドム爺さんがフォローをした。


「あたしは、アリスの、心配をしてたの!」


デイジーはわたしの名前部分を強調して、顔を赤くする。


ドム爺さんはそれを華麗にスルーして、


「リアン、怪我とかはしてないか?アリスもよく頑張ったな」


とわたしたちを心配し、労ってくれる。


「ええ。全くもって大丈夫です。心配をおかけ致しました」


「はぁ〜とりあえずホッとしました」


そんな様子を見ていたオーウェンさんは大きく息を吐いた。


わたしたちが辿り着いた部屋は初めて見るところだった。


デスクにクローゼット、とても大きなベッド、ソファ。

モノトーンのシックなインテリアだ。


「もしかして、ここはオーウェンさんのお部屋ですか?」


「そうです」


わたしが尋ねると頷き、壁にかかっている姿見を指差す。


「自室の鏡と繋げていたんです。今日は寝ないで、アリスさんたちがここに戻ってくるのを見張るつもりだったんです」


わたしは急に胸がいっぱいになって、涙が溢れそうになった。


「オーウェンさん、本当に何から何までお世話になって…ありがとうございます」


「いいんですよ、好きでやっていた事です」


「あれ、もう戻ってこれたのか!」


そして、部屋にブルーノさんが入ってきた。


「ちょっとトイレに行ってる隙に…お嬢ちゃんやるなぁ。あのカラスは嘘つきじゃなかったのか?」


「はい。ちゃんと助けてもらいました」


わたしたちは塔から最短で戻って来れたけど、カレブが移動してくるのは時間がかかるだろう。

改めてお礼を言わなくちゃ。


「そいつは良かった。…ふぅん、なるほど」


ブルーノさんはリアンに近づいてジロジロ眺める。


「初めまして」


勿論リアンは無遠慮な視線に動じない。


「よろしく」


ブルーノさんはニヤリと笑った後、わたしにそっと耳打ちする。


「お嬢ちゃん、苦労しそうだなぁ」


「リアンさんもアリスさんも、皆さんもお疲れでしょうから、少し食べたら飲んだりして落ち着きましょう。ご用意致します」


聞き返す間も無く、オーウェンさんの提案で、わたしたちは部屋を移動することになった。


オーウェンさんて本当に優しいし、仕事が出来るし、気が効く。


「デイジー、オーウェンさんと結婚すればいいのに」


思わず小声で彼女に呟くと。


「はぁっ?」


色白の顔が赤く染まっていく。


「な、なんでよっ?」


「あんな良い人に想ってもらえてるなんて、幸せだと思うし」


「デイジーは素直じゃないからな」


いつの間にかドム爺さんが会話に参加していて、


「地獄耳!」


毒づくデイジー。


リアンはニコニコしながら側にいる。


久しぶりに心が平穏に戻った気がした。


最近までずっと黒い影がくっついて離れない状態だったから…。


そしてわたしたちは軽食を食べながらお喋りをし、眠りについた。


緊張から解放され、満ち足りた気持ち。

ベッドに横になったらすぐに睡魔はやってきた。


眠りに落ちる直前。


オーウェンさんの部屋に辿り着く瞬間、リアンはなんて言ってくれたっけ…?


そんな事を考えたけど、思い出す前に世界は暗くなった。



次の日。

朝食を食べる為、一同はオーウェンさんが用意してくれた応接室に集まった。


わたしが一番最後だったらしく、リアン、デイジー、ドム爺さん、ブルーノさん、オーウェンさん。

全員が勢ぞろいしていた。


「ごめんなさい、お待たせしました」


「アリス!」


談笑していた中にはカレブの姿もあった。


「カレブ!」


「無事で良かったよ、本当に!」


「ありがとう!あのね…」


再会が嬉しくて駆け寄ったわたしの足が止まった。


「アリス?」


カレブが首を傾げ、皆もわたしに注目する。


…声も仕草もカレブだけど。

このカラス、カレブじゃない。


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