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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
39/67

39.確信

突進してきたわたしに押されて、リアンは少し後退したものの、そのまま受け止めてくれた。


わたしはおでこを押しつけ、リアンがきちんとここに存在してる事を確認する。

光となり、ファイルに吸い込まれてしまって…もう会えないかと思った。


だけど、今。


確かにわたしはリアンにしがみつく事が出来ている。

そんな幸せが、じわじわと込み上げてきた。


リアンの手がわたしの頭に触れて、ゆっくり髪をなでてくれる。


そうか、わたし、やっぱりリアンのことが…。

この気持ちに名前をつけるとしたら…。


「1人でここまで来て、不安だったでしょう?もう大丈夫ですよ」


リアンは小さい子供をなだめるように優しい声で言った。


ん?


1人で塔に乗り込んできて。

不安で、リアンに会った瞬間、緊張の糸が切れて、ホッとして。

それで子供のようにしがみついてきたと、思われてる…?

迷子の子供が親とようやく会えたかのように…??

子供、扱い…???


わたしはガバッとリアンから離れた。


「大丈夫ですから!平気です!」


早口で答えると、ポシェットを探る。


「脱出用の道具をオーウェンさんとデイジーに作ってもらったんです」


そして取り出したのは、棒つきのペロペロキャンディ。

透明感のある水色の飴がついている。


「そういえば、ここにはリアン以外の異世界の人たちはいないんですか?」


「よくわからないんですが、ここに連れて来られてからはずっと1人で、他の人には会ってないんです」


ふと疑問に思った事を口にすると、リアンは首を振る。

リアンは特別に塔に連れて来られたんだろうか。


考えてる時間はなさそうだ。


「いきます!」


わたしはデイジーに教えられたように、大きく宙に円を描くようにキャンディを振り回した。


バシャアン!!


「!?」


飴が一瞬光った途端、膝くらいの高さまで、水が出現した。


わたしの手にはただの白い棒だけが握られてる。


「…凄い」


棒と足元の水を見比べ、思わず呟いた。


「この量の水を閉じ込めておけるとは…デイジーもやりますねぇ。で、どうするんです?」


リアンは感心した後、愉快そうに問う。


水面には揺らめきながら、わたしたちの姿が映ってる。


「オーウェンさんがくれた小さな鏡を水面に映して、移動を…」


わたしはコンパクトを開いて、ピタリと動きを止めた。


鏡に映った自分をまじまじと見つめる。


「…瞳が、青い」


薄紫のはずの自分の瞳が、深い青色になっている。


「えっと、実はここにいらっしゃった時から、青かったです」


リアンが固まってるわたしに言いにくそうに伝える。


お母さんと同じ青色だ…!

さっき目が痛くなって、いろんな物が視えたのはこの為…?

でも《女神》は人に触れて運命を視るんじゃ…?

わたしは何も触ってないし…。


見たところ、髪は金色にはなってない。

お父さん譲りの黒髪のままだ。


「アリス、大丈夫ですか…?」


心配そうなリアンの声に我に返る。


とりあえず、ここを出なくちゃ。


「大丈夫です!行きましょう!」


コンパクトを水面に向けようとした、その時。


扉の前に黒い塊が凄いスピードで飛んできた。


そして次の瞬間。

塊は人の姿になり、バシャッと音を立てて水の中に立った。


「はぁ…はぁ…。最悪ですよ」


両手を膝にあてて、肩で大きく息をしてるのは、1番会いたくない人物だった。




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