表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
35/67

35.突入

やがて、街の灯りがどんどん小さくなっていた。

目指すのは海の中にある小さな島。

確実に塔に向かっている証拠なのに、灯りが遠ざかるのは寂しいというか…少し不安になる。


そんな気持ちを紛らわすため、窓の外を眺めてるカレブに声をかける。


「そういえば夜なのに大丈夫なの?鳥って暗いところ見えにくいんでしょう?」


「あのさあ、それはアリスの世界の鳥の話でしょ。オレはちゃんと見えるよ。一緒にしないでくれる?アリスの世界の鳥もこうやって喋る?喋らないよね?」


「…ごめん」


なんだか倍になって返ってきた。


マダム・グレースは手首にしている華奢な鎖の腕時計に目をやる。


「そろそろかしらね」


小さく呟くと、スッと人差し指で指し示した。


「街の方から花火が上がるわ。一応、2人が出会った記念日に私へ贈る花火ということにしてある。実際は今日ではないのだけれど。でも贈り物はいつ貰ってももいいものよね」


マダムは楽しそうに微笑む。


そして五分後だろうか。


街の方角から光が立ち上り、大輪の花を咲かせた。


ドオオン!


ビリビリ震えるような大きな音。


「皆は空に気を取られ、この大きな音が小さな音を隠してくれるでしょう」


次々に色とりどりの花火が夜空を彩り、わたしもカレブも夢中で窓に顔を近づける。


「たっぷり1時間は打ち上げてもらうのよ。…お二人さん、そちらばかり見てないで、逆の窓も見てちょうだい」


マダムに言われて、わたしたちは慌てて逆方向を向く。


「…塔だ」


目に飛び込んできたものをそのまま口にする。


闇の中でぬうっと建っていて、不気味な塔がそこにあった。


小窓から小さな灯りは漏れているものの、全体は薄暗くぼんやりしている。


花火とはまるで正反対の暗いオーラを纏っていた。


「塔の入り口の逆側にクルートを回すわ。なんでも着陸しなくても良いと聞いたけど?」


「そうなんです。カレブは飛べるし、わたしもちょっと魔法のお菓子の力を借ります」


…そう。上空からこの島に突入するのだ。

デイジーからもらったお菓子その1を使うわけだけど.

緊張するなぁ。


「これを持って行って」


マダムは突然、ネックレスを外すとわたしの手に握らせた。


「逃げ道を作りたい時などにこれを投げるのよ。自慢じゃないけど、高価な宝石だって一目でわかるから、大抵の人はこれに食いつく。その隙に逃げるの」


「えっ、そんな、頂けません」


わたしは押し返そうとするけど、マダムは両手で優しく包み込む。


「私が貴女と2人で冒険に出たとする。追っ手がきたら、私は迷わずネックレスを投げて囮に使う。そして逃げるの。私だったら絶対そうするわ。…そんな冒険、してみたかったの。良く空想したのよ」


「…そういうことでしたら」


わたしはマダムの気持ちと共に、ネックレスを受け取った。

わたしは1人じゃない。沢山の人達と一緒に頑張るんだ。


クルートは灯りを消し、慎重に塔の裏側の茂みへ進む。


「この辺りがいいかな」


カレブが口を開いた。


「アリスはまず隠れてて。オレが門番を引きつけてる間に中に入って、左側の廊下を進む。そこに地下への階段があるよ。そこには柱が沢山あるから、隠れながら進んで。わかった?」


「わかった。左側ね」


わたしはポシェットから板状の黄緑色のガムを取り出す。

それを噛むと、ライムの様な爽やかな味がした。

デイジーに言われた通り、沢山素早く噛んでみる。

すると体がふわりと浮き上がり、あっという間にクルートの天井にぶつかった。

そして今度はゆっくり噛んでみると、ふわりと下降する。


「まあ凄い!面白そう!」


マダムがわたしの様子を見て、目を輝かせる。


「マダム、色々ありがとうございました」


床に降り立ったわたしは改めてお礼を言う。


「気をつけてね。今度は地上でゆっくりお茶をしましょう」


「はい、喜んで」


クルートの扉が開かれた。


下は真っ暗で良く見えないから、昼間より怖くないかも知れない。


真っ先にカレブが飛び出す。


わたしは振り返ってマダムを見た。

マダムはゆっくり頷く。


ガムを噛みながら、思い切って夜空へ踏み出す。


勇気を出して突入するんだ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ