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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
33/67

33.出発

「これで説明は終わり。わかった?」


「う、うん」


渡された魔法のお菓子の使い方をデイジーから一通り説明された。

彼女が早口な事もあり、わたしが緊張してることもあり…ちゃんと頭に入ってるか心配だけど。


わたしはそのポーチにオーウェンさんからもらったコンパクトもいれ、斜めがけをしている小さなポシェットにしまった。


「ところで」


デイジーはわたしの横のカレブをジロリと睨んだ。


「何よ、このカラスは?」


カレブはわたしの体の後ろへ隠れる。


「カレブ。道案内をしてくれるの」


「カラスがぁ?信用出来るの?」


デイジーはわたしの後ろに回りこみ、カレブは目をそらして距離を取っていく。


「デイジーの店のお菓子、好きらしいよ?」


「ふぅん」


とりあえずフォローしてみるけど、疑わしそうな視線は変わらない。


「…気の強いオンナは苦手なんだよなぁ」


「なんか言った?」


カレブが首を振るとデイジーが即座に反応する。


その時、クルートがこちらに近づいてきた。


自家用だけあって、街で見かけたものよりはずっと小さいけど。


卵を横に倒したような楕円形の白いボディ。

表面はつるつるしてる感じで、全体的に柔らかく発光している。

ほとんど音はせず、猫のように静かにこちらへやって来た。

屋上にギリギリまで接近すると、小さなドアが開き、銀色の階段がゆっくりと伸びてくる。


そして、中から1人の女性が姿を現した。


「マダム!」


オーウェンさんが驚きの声を上げる。


マダムと呼ばれたそのご婦人。


スラリとした細身の体に白いブラウス、黒いタイトスカート、黒のハイヒール。

胸元に深いブルーの宝石がついたネックレス。


黒髪はまとめられ、耳にはネックレスと同じ石をつかった大振りなピアス。


白い肌に映える赤い口紅。

顔の皺さえ品良く見えるような、凛とした雰囲気の美しい女性だった。


「久しぶりね、オーウェン」


「マダム、どうしてここに…?」


「主人と貴方が何か面白そうなことを計画してる様だったので、参加してみたくなったのよ。女だって冒険したいんだから。ねぇ?」


マダムはわたしの顔を見て、優しく微笑む。


「この後、主人は私へのプレゼントとして、花火を上げる。それで沢山の目を誤魔化し、塔へ侵入する。面白そうね」


「は、はい…」


オーウェンさんは頭をポリポリかいて、居心地悪そうにしている。


「主人は運転手だけつけた、空っぽのクルートを貸すつもりだったみたいね?でも私は上空から花火を見たかったのよ。無理を言って乗り込んでみたの」


「流石、マダム・グレース・マイヤーズ。このお方に隠れてコソコソするのは無理ってもんだ」


ドム爺さんは笑ってオーウェンさんの足を叩く。


「主人が隠し事が下手なだけよ」


マダム・グレースはチャーミングにウインクして、


「塔までは結構な距離があるわ。女同士でおしゃべりしながら向かいましょう。さぁ」


わたしに促すと、先に階段を上っていく。


「はい!」


わたしは返事をすると皆んなを見つめた。


「気をつけて。待ってますよ」


「色々ありがとうございます。我が儘ばかり言って」


オーウェンさんがいなければ、本当に何も出来なかった。


「お前さんならやれる。勇気があるからな」


「ドム爺さん…ありがとうございます」


ドム爺さんにそう言ってもらうと、本当に勇気が湧いてくる。


「お嬢ちゃん、頑張れよ。カレブ、わかってんだろうなぁ」


ブルーノさんに凄まれて、カレブはサッサと階段を上っていく。

…全く。


「アリス!」


デイジーに腕を引っ張られて、抱き寄せられた。


豊満な胸に顔が埋まり、窒息しないように気をつける。


「デイジー…」


「気をつけて。絶対戻ってきて。リアンの馬鹿の事もお願い」


「…大丈夫。デイジーの魔法のお菓子もあるし。このお菓子の凄さは、わたし知ってるから」


階段を上り、いま一度屋上のみんなを見渡す。


みんなは手を振ってくれる。


わたしも手を振り返し、唇をギュッと噛み締めた。


さあ、行こう。

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