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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
20/67

20.綿飴と地下室

コウモリはペンの後ろで自分の額をポリポリかいた。

3人の間には沈黙がひたすら横たわっている。


「…あのですねぇ」


コウモリがイラついた声を上げた瞬間。


ブワッと辺り周辺が白い煙で包まれた。


「こっち、早く!」


力強く腕を掴まれ、わたしは引きずられるような勢いで走り出す。


煙が薄くなり、その姿が見えた。

白くて長い耳が揺れる。


「デイジー!」



「あの店に入れ」


リアンの横で指示を出してるのはドム爺さん!


4人で飛び込んだ店はバーのようだった。


酒瓶が大量に並んだ棚にビリヤード台、ダーツの的がある。


「地下室借りるぞ」


「ドム爺!久しぶりだなぁ!」


蝶ネクタイをしたマスターらしき男性への挨拶もそこそこに、ドム爺さんは床にある扉を開けるようリアンに命ずる。


開けるとそこには縄梯子があり、それを使って下へと降りていく。


最後に降りたリアンが扉を閉め、内側から鍵をかけると、わたしたちはほぅっと息を吐いた。


「あ〜もう。なんなのよぉ」


地下室に置いてあったグレーのソファーにデイジーは倒れ込んだ。

相変わらずのミニスカートだから、太ももは丸出しだ。


「さっきの《けむり綿飴》ですよね。凄い煙幕でした」


リアンが微笑みかけてもデイジーはふくれっ面だ。


さっきの煙も魔法のお菓子の力なのか…。


「あたしはアリスを無事ホテルへ逃すよう、母ちゃんに言われて来たの。アリスを!」


デイジーはわたしの名前を強調して訴える。


「なんでこの時間にコウモリがいるのよ、信じらんないっ」


「しかもあいつはコナーだな」


「コナー?」


デイジーは体を起こしてドム爺さんを見る。


「切れ者って噂のコウモリ界のエースだよ」


「あぁ、もう。大ピンチじゃん!」


隠れていても見つかるのは時間の問題ってことかな…。

わたしは部屋をぐるりと見回す。


あまり広くないこの場所には、ソファーに本棚、お酒とグラスの入った小さな棚、丸いテーブルがあった。


「ドム爺さんはこの地下室をよく利用してるんですか?」


「あぁ、この店のマスターとは古い馴染みでな。たまに来てはここで寝泊まりする時もある」


確かに小さな洗面台もあるし、小柄なドム爺さんには快適な部屋だろう。


洗面台の横には楕円形の鏡も掛けてある。


リアンはそれに近づくと顔を寄せた。


「何よ。どうしたのよ、色男」


デイジーが毒づくと、リアンは振り向き、銀色の枠を指差す。


「ハワード社製の鏡です。名前が掘ってある」


「オーウェンのところの鏡?なんでこんな場所にあるのよ?」


「オーウェンの親父さんが生前この店によく来てたんだ、珍しい酒が揃ってるってな。ある時、この地下室が殺風景だからって1枚くれたらしい」


訝しげなデイジーにドム爺さんが解説してくれる。


「魔法の鏡は2枚1組って聞きましたけど、もう一枚はどこに?」


「これは魔法の鏡じゃないぞ。この狭い店に移動は必要ないからな。魔法を込めてない、普通の鏡だ」


今度はわたしの質問に答えてくれた。


リアンは腕組みをしながら鏡を見つめていたけれど、

ふいに口を開いた。


「ドム爺さん、ここに電話はありますか?」


「あるぞ。本の下敷きになってるがな」


ドム爺さんが指差した方向には、本棚から溢れた本が床に散乱していたり、山になったりしている。


リアンがそれをよけると、黒い電話機が出て来た。


「デイジー、オーウェンさんに電話して下さい」


「えぇ?」


「ここから脱出できるかも知れません」


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