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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
17/67

17.慰めるのはどちら?

…それ相応の対応。


つまり、処罰とか…なんだろうか…?

この世界の大魔法使いの署名が入ったその言葉が、ずしりと重くのしかかってくる。


「えぇ〜?あたしはそれに含まれないよね?やだやだ!」


その暗い雰囲気をデイジーが切り裂いた。


「異世界を混乱させたってことは、道を作っただけのドム爺はセーフ?リアンとアリスは間違いなく該当するだろうけど。あたしは大丈夫だよね?」


「…デイジーって本当、ブレないですよねぇ」


半分感心、半分呆れ顔でリアンが言う。


「あたしはアンタに向こうで使うなって言ってたんだからね。自業自得!あたしは巻き込まれたくないの!」


「デイジー、リアンちゃんは幼馴染みたいなものじゃないの。そんな言い方しなくたって」


「そんな言い方もしたくなるっつーの!」


リアンに人差し指を向けるデイジーは、クレアさんにたしなめられても目を釣り上げている。


「…確かに好奇心に負けてルールを破ったのは不味かったと思います。私の判断ミスです」


ふぅっと長い溜息を吐き、リアンは壁にもたれかかった。


「アリス。巻き込んでしまって申し訳ないです。きっとどうにかして、貴女だけでも元の世界に戻れるようにしますから」


わたしが何か答えるより早く、それだけ言うとリアンは店を出て行った。


「リアンちゃん!」


クレアさんがその背中に呼びかけていると、デイジーの方は無言で地下の厨房へ戻っていく。


「ちょっとデイジー?」


「あの、わたし、行きます」


困惑気味のクレアさんにそれだけ言って、わたしはリアンの跡を追うことにした。


「アリスちゃん、オーウェンちゃんの所でじっとしてるのよ!」


「気をつけるんだぞ!」


「はい!」


クレアさんとドム爺さんの声を背中に、急いで長身の黒い影を追いかける。

足の長さが違うから、なかなか距離が縮まらない。


「リアン!」


思い切って大きな声を出すと、リアンは少し驚いた顔で振り返った。


「アリス」


「リアン…あの…謝らないで」


わたしは息切れしながら切り出した。


「こんな事になったけど、不思議な世界や魔法に触れることができて、良かったと思ってるから。わたしは魔法のお菓子を使っちゃったけど、あれがあったから助かったわけで、その…」


会った時からずっと笑顔だったリアンの、傷ついたような寂しそうな顔を見るのが、なんだか嫌で。


わたしは思いつくまま喋っていく。


ぷ。


リアンは口元に拳をあてて小さく吹き出した。


「もしかして慰めてくれてます?」


「…そうかも知れないです」


「普通、逆ですよ。私が慰めなくてはいけないのに。元の世界に暫くは帰れないんですよ…待ってる人だっているだろうに」


そう言って小さく微笑む。


父の顔がちらりと浮かんだ。


それでも。


「あの、わたしの事なら大丈夫ですから!」


「待って下さい、私が慰めますから」


勢い込むわたしを片手で制して、リアンは身を屈めた。


「できるだけ早く元の世界に戻れるよう、努力しますから。心配しないで下さい。貴女だけは必ず守ります」


「…心配してません」


わたしはなんだか恥ずかしくなって、わざとぶっきら棒に答えた。


リアンは笑いながら上体を起こす。


うん。

わたしはこんな風に楽しげに微笑むリアンが見たかったんだ。

その為に追いかけてきた、そんな気がする。


カアカア



その時、カラスの鳴き声が聞こえてきた。


「《カラス》たちが集まってきていますね」


空を見上げてリアンが声を潜めた。


上空に黒い鳥たちのシルエットが見える。


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