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奇跡のお菓子屋と運命の女神  作者: 源小ばと
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16.白い鳥の宣告

ドム爺さんの言葉が急には飲み込めなかった。


「こっちに来てみろ」


戸惑っているわたしたちは促され、開かれた扉の前に並んだ。

ドム爺さんがドアの向こう側へ小さな手を伸ばすと、透明な壁があるように途中でピタリと止まった。


そしてそれを手のひらで叩くと、ボムボムとくぐもった音がした。


「嘘でしょ…」


デイジーがドア枠に囲まれた四角い空間を、上から下まで両手で叩く。

まるでパントマイムをしてるように見えた。


「『道』が塞がれたってことは、わたしたち…?」


わたしはそれ以上は口に出せずにリアンの顔を見た。

不安が黒い染みのように広がっていく。

彼は少し眉間に皺を寄せただけで、気持ちは伺えない。


「デイジー!」


店舗の方からクレアさんの声がした。


「リアンちゃん、アリスちゃん!早く!」


その切羽詰まった声に、わたしたちは急いで階段を駆け上がった。


「母ちゃん!?」


デイジーが勢いよくドアを開けて飛び込むと。

クレアさんは両手を胸の前で握りしめて、レジのあるカウンターを見つめている。


そこには白い鳥が止まっていた。

体全体が淡い光に包まれている。


「な、なに?この鳥」


「貴女たちはまだ見たことなかったわよね」


わたしたち3人はお互いの顔を見合わせる。


「レヴィ様からのお知らせだ」


リアンの足の間からドム爺さんが顔を出した。


「ドム爺さん!お久しぶりですね」


強張っていたクレアさんの顔が少し緩む。


「レヴィ様からのお知らせ」


「そうだ」


リアンが呟くとドム爺さんは重々しく頷く。


「住民全員に届けたいメッセージがある時は、こうやって各世帯に送ってくるんだ。回覧板みたいな軽い内容じゃないことは確かだな」


「『道』について、でしょうか?」


喉に貼りついた言葉を無理矢理押しだすように、わたしは尋ねた。


「だろうな」


小さく頷くドム爺さん。


「なんだか怖いわ…どんなお言葉があるのかしら。ちょっとデイジーちゃん、開けて来て」


「はぁ?なんだかわかんないやつ、あたしだって嫌だよ。そもそも開けるってどうやって?鳥じゃん!」


母は娘の片手を握るけど、それは冷たく振り払われた。


「デイジー!母親の言うことが聞けないの!?」


「娘のために色々やるのが母親だろ!」


「私がやりますよ。どうすれば?」


母娘喧嘩が勃発しそうになり、リアンが前に進み出た。


「あの鳥に触れるだけでいい」


ドム爺さんのアドバイスに白い鳥へ静かに近づく。


鳥は首をチラリと動かしただけで、大人しくしている。


リアンの長い指がその羽に触れた瞬間、鳥は眩い光に包まれた。

そして姿は消え、代わりに光が文字のようなものとなって空中に踊った。


「なんて書いてあるんですか?」


「私も少ししかわからないんですが」


わたしは5行程、横に並んだ文章らしきものが全くわからず、リアンも全ては理解できないらしい。


「つまりだ。無期限でこの世界にある全ての『道』を封印する、と書いてある」


ドム爺さんがため息と共に吐き出した。


「今まで大目に見てたけど、道が増えて、異世界での揉め事も増えて来たからって」


デイジーが顔をしかめながら、わたしとリアンを見る。


「それじゃあ、こっちにいるわたしたちや、別の世界に行ってるここの世界の人はどうなるの?」


わたしの声は少し震えていた。


「そうだ、父ちゃんは…どうなるんだろ」


デイジーがクレアさんの腕をつかんだ。

クレアさんは唇を噛んだまま、答えない。


「その者たちの処遇については後に発表する、と書いてあるから、強制送還かもしれないな。すべての『道』を封印するだけで膨大な魔力を使う。強制送還する程の力は今は使えないから、先送りにしてるだけだろう。お前さんの父ちゃんは無事に帰って来れる」


母娘の表情が明るくなった。


「だが」


ドム爺さんは最後の5行目を指で示した。


「他の世界で混乱を起こした者たちにはそれ相応の対応をする、と書いてある。最後にレヴィ様の署名入りだ」

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