六年一組の教室で
2章
階段を上ってすぐ前に六年一組の教室がありました。A君、B君、C君、D君の四人はドアの前まで進み、B君がドアに手をかけました。当然施錠されていると思ったのですが...。
なんと、ドアはスルスルと開いたのです。A君、
「なんでここだけ開いてんだ!」
B君、
「か、鍵のかけ忘れだよ。きっと」
C君、
「気味悪いな。とっとと探検して出ようぜ」
四人は恐る恐る教室に足を踏み入れ、ドアをきちんと閉めました。教室は薄汚れていてあたりにほこりが飛び散り、四隅には蜘蛛の巣が張っていました。当たり前の話、机やいすは一台もありません。黒板も取り外され、ただ残っているものとしてはドアから見て一番遠いところにある、壁に取り付けられたロッカーのみです。(むろん、中は空でした)D君、教室にカメラを向け
「一枚撮っとこう」
B君、
「撮ってどうするんだ。ほんとここ、なにもないぞ。つまらないから、もう帰ろうぜ」
C君、
「何もないことはないぞ。ほら、壁に悪口がいっぱい…」
B君、
「彫ってあるんだろ。もういいよ」
C君、かっとして
「もういいとはなんだ! おまえが一般の教室を回ろうっていったんだろうが!」
A君、
「しっ、大声を出すなよ!」
C君、
「いーや、こいつの態度はがまんできん!」
C君は持っていた懐中電灯でB君を照らし、すかさず殴りかかろうとしました。ところが、一歩踏み出した途端…。
「あいって!!!!」
A君、
「大声を出すなといっただろう!」
C君、かがみこんで
「な、なんかに足ぶつけたんだ! おお痛い」
B君は慌てて
「おれじゃない、おれは知らない!」
A君、
「なにかって…ここには何もないじゃないか。机とかあるんならいざ知らず…」
そこまで言ってはっと我に返って、
「そういや、Dのやつはどうしたんだ。さっきから声がしないぞ。」
すると暗闇の中、少し離れたところからシャッター音とD君のか細いこえがしました。
「…い、いるって」
同時に、するするとドアの開く音…。
A君、
「おいD、外に出たのか!」
すると彼の背後から、
「出やしないよ…」
「ひゃああああああああ!!!!」
A君、B君、C君(彼は足の痛みすら、忘れていたのでしょうか)はびっくりして飛び上がりました。腰を抜かした三人の前で声の主は、C君から懐中電灯を奪い取り光を自分の顔に当てました。その顔は…。
A君、
「なんだ、Dじゃないか」
D君は少しむっとした様子で、
「なんだとはなんだ」
B君
「まじで、幽霊かと思った」
C君はひょいと立ち上がって、
「もう、帰るか」
A君、
「足は大丈夫か?」
「びっくりしたはずみに、痛みがどっかに飛んでった。もう大丈夫」
そんなこんなで四人は教室を出、校舎を出、帰路につきました。各自家にたどり着いたのは一時半頃だったのですが、運よく親たちに外出がばれることはありませんでした。
こうして、肝試し大会は一見つつがなく終わったのですが、家に帰ったA君にはどうも腑に落ちないことがありました。それは、六年一組を出た後のD君の、妙に落ち着かない態度でした。
ずっと青い顔をしているばかりか、しょっちゅうカメラを握りしめたり離したりして、誰かが話しかけてもうんともすんとも言わず、ただぼうっとしているのです。そうかと思えば、突然C君の顔をのぞき込んでは恐ろしげに頭を振ったり...。
布団の中でもA君はそのことを気にかけていましたが、
「たぶん、どこか体の調子がおかしかったんだ」
と、一人で納得してその夜は眠りにつきました。




