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肝試し大会  作者: 椎名れう
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不吉な黒雲

1章


 あるところに、四人の子供がいました。全員男の子で、名前は…そうですねA君、B君、C君、D君とでもしておきましょうか。

 夏休みのある日、この四人は「肝試し大会」をすることにしました。彼らの「肝試し大会」とは、真夜中に、今は廃墟となってしまった一昔前の小学校に忍び込むことです。

 彼らは親に内緒で家を抜け出して、前々から目をつけていた廃学校に集まりました。全員集合すると月明かり一つ差さない闇の中で、さびれた校門を乗り越えました。A君が先頭でD君が殿です。D君はカメラ係で、前の三人を写したり廃学校の校庭を写したりしていました。もっとも、暗くてあまりよく写ってはいませんが。

 校舎の前まで来たとき、先頭のA君が急に立ち止まりました。驚いたB君が、

「どうしたんだよ、A」

と、聞くとA君は口をきゅっと結んで目の前の昇降口のドアを無言で指さしました。懐中電灯担当のC君が光を照らしてみると、そこにはたくさんの文字が書いてありました。

「消えろ」

「お前なんて必要ない」

「顔を見るだけで気分悪い」

C君、

「どうやら、いじめがあったらしいな」

B君が文字に触れてみて、

「こりゃ、書いたものじゃないな。小刀かなんかで彫ってある。消せないようにな」

D君、

「一枚とっとくぜ」

 それから四人は、古びた昇降口のドアを開き校舎の中に入りました。たくさんの木製の靴箱の中を通り抜けていると、不意に四人の目が一つの靴箱に引きつけられました。その靴箱にも、昇降口のドアと同じような悪口が彫ってあったのです。A君、

「こいつが被害者か。なんてやつだ」

B君が靴箱をのぞき込むと、中に汚れた上靴がつっこんでありました。

「…六年一組十三番(しゃどう) 紗同陰子(かげこ)だと」

C君、

「暗い名前だな」

D君はカメラを自分たちに向け、

「おいみんな笑え。撮るぞ」

パチリとシャッターを切ったはいいのですが...。

「いかん、手元が狂っちまった」

A君、

「レンズが足元向いてるぞ」

「悪い、もう一回撮る」

暗闇の中で、皆思い思いのポーズをとり、今度は無事撮影できました。

それから四人は靴箱を上がり、校舎を思う存分探検して回りました。たいていの教室は施錠されていましたが、手先の器用なB君がキーピックで錠をこじあけて、中に入ることが出来ました。布切れ等がいっさいがっさい剥ぎ取られた、ほこりまみれの金属ベッド二つがあるだけの保健室。本が一冊もない図書室。妙にゴキブリが多い配膳室。破れかぶれの上かびだらけの人物画(モーツァルト、滝廉太郎など)がかかった音楽室。職員室(ここは固く閉鎖されていて入れませんでした)など。

A君、

「これで専門教科の教室は回り尽くしたな」

B君、

「次は一般の教室を回ろうぜ」

C君、

「生徒用の教室か? そんなのつまらないぞ」

A君が腕時計を見て、

「それに時間もやばい。もう一時だ。うっかり親が目を覚ましたら...」

D君、

「じゃあさ、締めくくりとして六年一組の教室に行くってのはどうだ?」

B君が不思議そうに、

「なんで六年一組なんだ?」

D君、

「なんだっけ...ほら、あの紗同陰子の組だからさ。どんないじめをやってたのか、何か手がかりがあるかもしれない」

C君、

「じゃあ、最後にそこだけ行くか。終わったらさっさと帰ろうぜ。俺もなるべく怒られたくない」

四人はそう決め、階段を上って三階の六年生教室に向かいました。一応足並み揃えて力強く階段を上ってはいるのですが、どことなく皆雰囲気が暗いように見えます。皆押し黙ったまま一言も口をききません。さっきまで専門教科の教室を探検していた時のワクワク感が感じられません。言い出したD君ですら、どこか後悔しているように見えるのです。こうして一同は不吉な黒雲に包まれたまま、六年一組の教室へと向かったのでした。







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