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9 戸惑い


(盗賊か!?)


 俺は自然と駆け出していた。


 状況を把握するために【聞き耳】を発動させる。



「ライオネルさんはいないって帰ったけどよ、俺は来る派なわけよ」



「何言ってるか分かんねぇよ」


「つまりあれよ、俺はここにそいつが来ると思うわけよ」


「はぁ、こんな辺鄙なところまで三人で来るなんて最低だぜ。もう移動した後なんじゃねぇか?」



「来るって。よっと」


「おい! こっちに血が飛んできたぞ!」


「わりぃわりぃ」


 男達は雑談しながら足元に倒れた人へ剣を振り下ろしていた。


 近づくにつれ倒れている人が村長だと分かる。


 村長は完全に動かなくなっていた。


「おい……、何やってるんだ?」


 男達の前に立ち、尋ねる。


「ほら! な? 来ただろ?」


「お前の勘も捨てたもんじゃねぇな」


 俺の質問を無視して嬉々として騒ぎ出す二人。



「何やってるんだ?」


 もう一度尋ねる。


「あ? 見て分からないのか? 暇つぶしだよ」


「そうそう、お前を待ってる間暇だったんだよ」


「お前がケンタなんだろ?」


「まあそれは殺してから確認すりゃいいだろ?」


「それもそうだな」


 二人は俺のほうへ視線を向けると剣を肩に担ぎながら近づいてきた。



 俺は二人が射程に入ったのを見計らって【縮地】で二人の間を抜ける。


「あ?」


「え?」


 通り抜け様にナイフと剣を抜き、腹を斬った。


 二人はそれに気づかず、俺が瞬時に移動したことに呆気に取られて声を上げる。



 俺は二人を通り越したあと、すぐさま振り返って斬りかかる。


「てめぇ!」


「おらっ!」


 二人の剣と俺の両手に持った武器が重なり合う。



 こちらは片手で武器を持っているのに対して相手は両手で持っている。このままの状態では力押しで負けるかもしれない。


 だが俺は冷静にさっき斬った腹を順に蹴った。


「がっ」


「グッ」


 二人は腹を蹴られてはじめて腹が切れていることに気づいて身をよじる。


 俺はその隙を逃さず、二人の頭部に剣とナイフを振り下ろしてとどめをさした。



 死体になった二人には目もくれずに村長へ近寄る。


「おいっ!」


 屈みこんで肩を揺するも何の反応もなかった。



「……っ! 他はっ、他の人たちは!?」


 被害にあったのは村長だけなのだろうか。


 他の人たちは逃げ延びているのだろうか。



「おい! 誰かいないか!」


 俺は周囲に呼びかけながら村の中へ入っていく。


「ッ!」


 村の中心へ着くと地面に横たわる人達が目に映った。



 俺は一番側で倒れている人に駆け寄って肩を揺する。


 そして立ち上がると、その次に近くにいた人へ近寄る。


 ……その作業を端から端まで済ませる頃には走ることもなく歩いていた。



 途方に暮れて村の中心にあるベンチに腰を下ろす。


 村の中は生き物の気配が全くなく、とても静かだった。


「……一体どうなっているんだ」


 わけが分からなかった。思考の整理がつかない。


「墓を作るか……」



 いくら考えても結論が出る気がしなかったので体を動かすことにする。


 まとまらない感情はひとまず置いておいて皆を弔うべきだろう。


 …………


 全ての村人を土葬し、それぞれの上に大きめ石を置いた。


 こちらでの弔い方など知らないので石に酒をかけて回り、両手を合わせる。


「これをやった奴には必ず報いを受けさせる」


 自然とそんな言葉が出た。


 そんなことをしても何の解決にもならない。


 だがこんなことをしてのうのうと生きているのを見過ごすほど俺も大人じゃない。



「あらあら、一足遅かったようですね」



 顔を上げるとそこには旅慣れた格好をした美麗な顔の女が立っていた。


「え? 何であんたがここに」


 目の前に立っていたのは海賊の一件で助けてもらった女だった。


 だが、なぜこんな所にいるのだろうか。



「自己紹介がまだでしたね。私の名前はイーラといいます。以前言っていたでしょ? ギャングを追っていると」


 自己紹介を済ませると淡々とした口調でそう告げる。


 名前はイーラというらしい。


「そういえばそんなこと言っていたな……。あ、ケンタだ」


 思考が追いつかないのでおざなりな自己紹介をしてしまう。



「こんにちはケンタさん。どうやら、私は入れ違いになったようですね」


「……どういうことだ?」


 入れ違いということはイーラは俺に会いに来たわけではないのだろうか。


 俺の前にこの村に来た奴に用があったといったところか。



「私はこの村へ来ていた幹部のライオネルを追ってここまで来ました。どうやらあなたを殺すのが目的だったようですね。ですが会えずにそのまま帰ったようです」


「何で俺が……大体この村の人は関係ないだろ……」


 どうやらイーラの話を信じるならギャングの幹部が俺を殺そうとここに来ていたということらしい。


「そこまでは知りませんね。あたり構わず好き放題やるのが彼らですからねぇ」


 受け入れがたいが、村の人たちは目当ての俺がいなかった事への腹いせにやられたということなんだろう。


「どうしてこんなことに……」


 なぜ俺を狙ってきたのだろうか。



 考えられるのはよっしー達とドンナだ。


 俺がハーゲンを殺したことをふれ回ったと予想するくらいしか思いつかない。


 オリン婆さんにはきつく忠告されていたのに俺が格好をつけたばかりに取返しのつかないことになってしまった。


 だが、あのときの俺に果たしてその選択ができただろうか。


(俺がこの村に来なければ……)


 後悔で頭が一杯になる。



(でもなんで俺がこの村にいることが分かったんだ……。ギルドも通していないしゴブリンの森で長期間潜伏してから移動したし、目立つことも極力していない。街で買い物したときだろうか……)



 ここ数週間、目立つようなことはしていないし、足跡もほとんど残していない。


 なぜここが分かったのだろうか。


 村に残っていた二人の話しぶりからして、当てずっぽうで来たという感じでもなかった。



 俺が俯いてまとまらない感情と考えを整理していると、イーラが声をかけてくる。


「ちなみにギャングの本部はフィアマの街にありますよ。ここに来たライオネルもそこに帰ったのでしょう。場所は……」


 聞いてもいないのに俺が知るべきことをイーラはスラスラと話してくれた。


「詳しいんだな」


「こう見えて私は偉いうえに有能ですからね」


 感情のこもっていない淡々とした口調でイーラは自慢を事実のように話す。



「そうか」


「フィアマの街に行くんですか?」


 自分から言っておいて行くのかと聞いてくる。



「ああ、ちょっと用事ができたからな」


 当然答えは行くだ。


 会わなければならない奴ができてしまったので行かざるを得ないだろう。



「あらあら、そうですか」


 言葉の内容とは裏腹に表情や声音は分かっていたといわんばかりに棒読みだ。



「この間の飯の約束もまだだし、今回のと合わせて二倍豪華な飯を奢るよ」


 以前助けてもらった時に奢ると言ったがその約束もまだだった。


 今回も有力な情報を貰ったので前回のとあわせてすぐにでも奢りたいところだが、今はやることがある。


 イーラには悪いが少し待ってもらおう。



「あらあら、それは楽しみです。私にご馳走するためにも死なないで下さいね」


「ああ。飯はすっごいやつにしてやるからな。助かったよ」



 俺はイーラに礼を言うと村を離れてスーラムの街を目指した。


 すぐにフィアマの街を目指したいところだが、その前に情報屋へ寄りたかったからだ。



 以前、情報屋でギャングの情報が錯綜していて入手できなかった。


 そろそろ情報も整理されて取り扱いが可能になっているかもしれない。


 フィアマの街へ行く前に詳しいことが分かるなら知っておいた方がいいだろうと判断して街へ向かう。


「何でこんなことに……」


 移動中も頭の中ではそんな思考が消えない。


 どうにも納得がいかない。


 その部分をすり合わせるためにも、少しでも多くの情報が必要な気がした。


 …………


 スーラムの街に侵入し、どこにも寄らずに夕闇亭へ赴く。


 扉を開けて中に入るとあいかわらず客は誰もいなかった。


 カウンターに証しのカジノチップを見せて情報を聞くことにする。



「ギャング情報の公式見解ってやつは出たのか?」


「待たせたな。少し前に報告があったところだ。ギャングの情報が知りたいんだな?」


「ああ、頼む」



「ギャングはほぼ壊滅状態だ」


「は?」


 情報屋から理解不能の情報を得て、開いた口が塞がらずに妙な声が漏れる。



「順を追って説明すると今年の春頃から支部が片っ端から潰されている」


「春から? 夏ではないのか?」


 俺がかかわったことでいえば、冬にもメイッキューで一悶着あったが、あれは俺がやった痕跡は残っていない。


 目撃者が残っていてギャングにも知られているのは夏の一件だけだ。


「夏にも武闘派の幹部が一人殺されていたが、あれは多分別件だろう。春からの方はもっと酷い。潰された支部に生存者はいない、ゼロだ。全員皆殺しにされている」


「は?」


 聞けば聞くほどにわけが分からない。一体どうなっているんだ。



「数年前の話だがギャングは数え切れないほどの組織があり、組織間で延々抗争をしていたが一つの組織がその全てに勝ち、全組織を吸収する形で抗争は終結した」


「いきなりなんだ? それが何か関係あるのか?」


 急にギャングの歴史とか話されてもピンとこない。そんな頃からの話を聞かないと理解できないレベルになっているのだろうか。


「まあ待て、少し長くなるが聞いておけ。そしてその巨大さを活かして隣国から麻薬や武器を密輸入しはじめた」


「自分で生産はしてなかったのか」



「やってはいたようだが小規模だ。どうも作るより隣国から買ったほうが安かったようだ」


「なるほど」



「そして仕入れた物を裏で悪どいやり方で売りさばいていた」


「それが今回の春からの騒動と関係あるのか?」


 ギャングが一つの大きな組織で資金源が武器と麻薬というのは分かった。



「ああ、二年くらい前から隣国から買っていた麻薬と武器の価格が急激に高騰しはじめた。そのせいで資金繰りがうまくいかなくなって内部でごたついていたようだ。流通も安定せず麻薬に手を出してた奴はもれなく阿鼻叫喚の状態に陥った」


「ふむ」


 ギャングは稼ぎが減って、麻薬に手を出した奴は薬が手に入りにくくなったと。


「そんな中で今年の春に宿場町で起きた事件がはじまりだ」


「宿場町?」


「そうだ。そこで中毒の奴が色々事件を起こしたみたいでな。その事件は解決したんだが、それを解決した奴がそれでは治まりきらずに皆殺しをはじめたらしい」


「それがはじまりで支部が襲われ、今じゃ壊滅状態で本部しか残っていないということか」


 要はギャングが行き詰った影響で中毒者が暴れまわっていたと、それを解決した奴が大本のギャングを潰そうと画策して暴れまわっているといったところだろうか。


「そういうことだ。しかもやったのは二人組だっていうんだから驚きだよ。支部を壊滅させて今は本部へ向かっているとの情報もある」


「は? 二人でギャングを壊滅まで追い込んだのか?」


 なんという無茶苦茶な二人だ。


 ギャングが何人いるか知らないがありえないだろう。


 そいつらは人類最強コンビか何かか?



「そうだ。何でも刀を持った老婆と赤毛で長身猫背の男のコンビらしい」



「はああああああああ!?」



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