表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/401

7 鬼狩り


「ありゃぁあ、オーガじゃぁ」


「それはダメなやつだな」


 即答する俺。


 超ダメだ。避難しないとまずいやつだ。



 って避難…………できるか?



「オーガはこっちに向かっているのか?」


 村に向かっていないのであれば時間はまだある。



「うんにゃ、そぉの辺りをウロウロしていただけぇじゃ」


 なら急いで移動する必要はない。しかし危険な状態に代わりはないだろう。


「ん〜全員で逃げたりできるか?」


 俺は振り返って後ろにいた村長に聞いてみる。


 やはりここは避難するのが一番安全だろう。



「無理じゃろうなぁあ。街まで遠すぎぃる」


 だが、帰ってきた答えは無理というものだった。



 確かに村と街の間に他の村はないし、街まで相当距離がある。


 ギルドに救援を呼びに行ってもタダというわけにもいかないだろう。


 この村にそんな金はない。



(こうなったら俺が仕留めるか。一応経験はあるし、二日分の距離があるならヒットアンドウェイを重ねれば何とかなるはず)


 正直気は進まないが、村で戦う羽目になったら目も当てられない。


 それならこちらから迎え撃った方がいいだろう。



「俺が倒してくるわ。詳しい位置を教えてくれ」


 俺はオーガを倒すことを決断し、位置を聞く。


「あぶなぃぞぉい」


「一応村の護衛依頼を受けてるわけだしな。問題ないよ」


 オーガは力と耐久力は異常だったが足は遅かったので、持久戦に持ち込めばなんとかなるだろう。


「わかったぁ。わしも行くぅぞい」


「いや、逃げながら戦うつもりだからじいさんがいると邪魔だ。一人で行ってくる」


「むぅう。仕方ないのぅ」


 少し不服そうだが実際一緒に行動すると危険だし納得してもらうしかない。



「やばくなったらこの村には来ないように誘導して逃げ帰ってくるよ」


 モンスターの死体をばら撒けばある程度誘導できそうだし、何とかなるだろう。


「気をつけるんじゃぞぉい」


「おう。そうだ、今回は厳密に言えば依頼外のことだし、うまくいったら例の村長が造った酒を臨時報酬でくれよ」


 ゆるく潜伏生活を続ける予定が気がつけば単独でオーガ討伐することになってしまった。ここはちょっとくらいご褒美があった方がやる気が出るってもんだ。


「ええぞい。無事に帰ってくるんじゃぁぞぉお」


「お、太っ腹。約束忘れるなよ!」


 これは俄然やる気が出てくる。


 オーガくらい何とかしてやろうではないか。


 その後、じいさんにオーガの位置を詳しく聞いた俺は準備を済ませて村を後にした。


 …………


 村を後にして二日経過した。


 今、じいさんからの情報を元にオーガが目撃された場所を目指している。


 方角的には元ルーフの家の近くだ。



 しばらくして目的のポイントに到着した。


 早速【気配察知】を使用してモンスターの気配を探ってみる。


(お、これか?)


 一度しか戦ったことのないモンスターなので少し自信がなかったが、それらしい気配を発見したので注意深くそちらへ向かう。


「いたわ」


 気配を辿って森の中を進み、目視で確認できる距離でオーガを発見する。



 やはり森の中で赤い色は目立つ。


 目の前にいるオーガは前回戦ったときと大体同じ大きさだった。


 全身が赤く、上半身と腕が発達している割に下半身がほっそりしている。


 額には申し訳程度に角と思わしき突起がある。


 あの力の固まりのような腕から繰り出される打撃は丸太を振り回したようなもので、直撃すると死ななかったとしても行動不能になり、次撃をかわせず詰んでしまう。


 また、弓での攻撃は効果が薄く、足を止めるのも難しかった。



 そのため、戦うのであれば接近戦になる。


 ここは背後から忍び寄って攻撃をお見舞いするのがいいだろう。


 その後は様子を見て逃げるか戦うのを続行するか決める方向で行くことにする。


(うし、行くか)


 俺は【気配遮断】と【忍び足】を使ったままオーガの背後へ近づく。


 そこからドスを手にして【かまいたち】を発生させる動作に入る。


 このスキルは発生させるまで少し時間がかかるが、多少リーチが伸びるので大型の敵には最適だろう。


 溜めが完了し、発動可能になったのでオーガの脚目掛けて【居合い術】を放った。


 真空の衣をまとった剣閃は白銀の軌道を残してすっと鞘に収まる。


 ……チン。


 刃を鞘に収める音がすると同時にオーガの片足が膝下からばっさり切断された。


【暗殺術】と【かまいたち】と【居合い術】の複合技が決まった。


 これならオーガの脚もなんとか切れるようだ。


「ゴアアアアアッ」


 片足になり悲鳴を上げながらその場に崩れ落ちるオーガ。


 俺は倒れたオーガに止めを刺そうと武器を構えて近づこうとする。


 だが、オーガは苦痛のせいか倒れたその場でのた打ち回り、近接武器で攻撃するには近づきにくい状態となってしまう。


(むう、移動力を奪ったのはいいが、暴れまわって近づけないな)


 オーガはかなり大きいので槍があったとしてもこの状態では攻撃するのは難しかっただろう。今までもそうだったが大きい個体相手だと近接武器で戦うのは厄介なことが多い。


「仕方ない。弓で行くか」


 以前オーガと戦ったときは矢の効果が薄かったのであまりダメージが期待できないが近寄るのは愚策だ。


 弓ならのた打ち回るオーガとの位置関係も調節し易いので被害を受けないためには仕方ないだろう。


 そう判断した俺はオーガに向けて弓を構え、矢の続く限り撃ち続けた。


 …………


「……なんか生け花とかハリネズミみたいになっちゃったな」


 眼前の息絶えたオーガを見ながらそんなことを呟いてしまう。



 オーガは俺の矢を大量に受けてトゲトゲした別の生き物の死体のようになっていた。とりあえず矢をほぼ撃ち尽くす結果となってしまったが、オーガを倒すことに成功した。


 こちらは無傷だったので素晴らしい結果だろう。


 無事オーガも倒せたし、これで村も安全になったわけだ。


 俺がほっと一息ついていると妙に聞きなれた咆哮が近くから聞こえてくる。


 具体的に言うと数分前に聞いた感じがする。


 恐る恐る声のする方へと振り向いてみる。


 まさかそんなことはないだろう、とゆっくり顔を動かすとそこには……。


「ゴアアアアアアアッ!」


 オーガがいた。


 どうやらもう一匹いたようだ。


 声をする方を向けば一匹のオーガがこちらに気づいて威嚇しているのが見えた。



「……そういや何匹いるか聞いてなかったわ」


 オーガがいるとは聞いていたが、それ以上のことは聞いていなかった。


 強い固体だし一匹だろうと勝手に思い込んでいたのだ。


「まずったなぁ……」


 オーガと目を合わせながら失敗を嘆く。


 大体残りがこいつ一匹なのかも怪しい……。


「ゴアアアアッ!」


 俺がそんなことを考えている間もオーガはこちらに気がついて走り寄って来た。


「撤退だ!」


 向こうに気づかれた状態での連戦は避けるべきだろう。



 即断した俺はその場から足早に逃げだした。


 俺の素早さにオーガは対応できず、ドンドン距離を離すことに成功する。


 オーガは俺に追いつけないと判断すると走るのを止めて森の中へ消えていった。



 その後、木の上に身を隠し、辺りを詳しく調べてみるとオーガは二匹いた。


 どうやら、もともと合計三匹いたようだ。


(戦闘中に気づかれなくてよかったわ)


 木の上で安堵しながらも肝を冷やす。


 残りのオーガは集団で行動しておらず、それぞれが微妙に距離を開いた状態を保っている。【気配察知】にかするスレスレの距離だ。気がつくのが遅れたのはそういうわけなんだろう。


 これなら二匹の距離も離れているし、不意打ちを重ねていけばなんとか倒しきれそうだ。


(でも矢がもうないんだよなぁ)


 先刻のオーガ戦で矢を撃ち切ってしまったため、戦うなら近接武器での戦闘になる。そういう意味では少し心細い。


(爆弾を使うか?)


 残された爆弾は二個。一匹に一個使えば倒しきることも可能だ。



(でもなぁ、今はピンチって状況じゃないから爆弾はとっておきたいよなぁ)


 現状逃げる選択肢が残っているのに切り札の爆弾を使い切るのは正直惜しい。


(……やっぱり爆弾はなしでいこう)


 一応すぐ使えるように懐にしまってはおくが、なるべく使わない方向で立ち回ることにする。


「うし、行くか」


 俺は木から下りるとオーガを倒すべく移動を開始した。


 気配を頼りに進み、一匹のオーガを補足すると一定距離まで近づいて周囲に注意しつつタイミングを計る。


 俺は素早くオーガの背後へ移動して構えをとる。


(さっきは脚を斬って手間取ったから今度は腕を落としてみるか)


 そう考えて【かまいたち】の溜めに入る。


 溜めが完了し、オーガの片腕目掛けて【かまいたち】でコーティングした【居合い術】を【暗殺術】が適用される形で発動する。


 まるで閃光のような軌跡をオーガの腕に残して刃は鞘へと収納される。


 ……チン。


 鞘と柄がピタリと重なる音と共にオーガの腕が上腕辺りから切断されて地面にボトリと落ちた。


「ゴアアアアアアアアアッ!」


 こちらへ気がついたオーガの悲鳴をよそに俺は【跳躍】と【張り付く】を使ってオーガの背にピッタリと張り付いた。


 背に張り付くとき切り落とした腕よりになるよう位置を調節し、残っている腕になるべく当たらない位置関係を作る。


 そして【剛力】と【膂力】を発動させると【短刀術】に身を任せて骨の隙間を狙ってナイフを腹に突き立て続けた。暴れるオーガを無視してひたすら滅多刺しにする。


 オーガの表皮は分厚いタイヤでも刺しているような感覚だったが、一応刃は通るので構わず刺し続ける。


 咆哮を続けるオーガは暴れて疲労が蓄積したうえに大量に出血したため、しばらくすると動きが鈍くなり、そのまま顔から地面に倒れた。


 俺は慎重に様子を見ながら【張り付く】を解除し、オーガから放れて立ち上がる。


 改めて確認するとオーガは息絶えていた。



 倒れたオーガから目を離す間も惜しんで武器を収めると急いで【気配察知】を使う。


 さっきはこのタイミングで襲われたので慎重な行動を心がける。


【気配察知】は複数の動作をしながら使えるほど軽いスキルではないので集中が必要になる。


 集中してスキルを使用し、気配を探ると残されたオーガはまだこちらには気づいていないようで遠方をブラブラと動き回っている様子を感じ取った。


(うし、これなら【剛力】と【膂力】のクールタイムが終わるまで待ってから奇襲できるな)


 俺は武器についた血を拭いながら次の行動を考える。


 クールタイムには一時間かかるので持続時間とあわせるとしばらく接触することはできない。このまま持続時間の間に接敵する方法もあるが途中で効果が切れたら目も当てられないので、ここは慎重にいくべきだろう。


(昼寝でもして時間を潰したいけど見失ったら笑えないし大人しくしておくか)


 俺はオーガの死体をアイテムボックスに回収すると残されたオーガへある程度近づくため歩き出した。


 …………


「ふぃ〜〜。オーガを三匹も倒しちゃったよ」


 その後、二匹目と同じ方法で三匹目のオーガもうまく倒すことに成功し、今は木の上で休憩中だ。


 こんなことができるようになるとは、俺も成長したものだ。


 だが、二匹同時や三匹同時に相手にすることになっていれば危険どころの話ではなかった。


「そういやレベルはどうだろ?」


 これだけの強敵を三匹も倒したのだ。上がっているかもしれない。


 ケンタ LV15 ニンジャ


 力 78

 魔力 0

 体力 32

 すばやさ 92


「おお! やったわ〜」


 今日までも結構モンスターは倒しまくっていたのでいつ上がってもおかしくなかったのだろう。レベルも15ともなればちょっと一人前感が出てきて嬉しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

   

間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ