表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/401

26 潜入


 なら、やることは一つ。


(全員消す)


 それしかないだろう。



 甘い対応をすれば跳ね返ってくることは確実だ。


 複数の相手に対してこちらは一人なので緩いことをやれば、五体満足で生還できるかは怪しい。


 だが、ギャングと聞けば威圧感があるが、要は全員素行が悪いただの冒険者崩れだ。


 今の自分なら、なんとかなると思いたい。



 『腹括りな』



 オリン婆さんの言葉が頭をよぎる。


 まさかこんなに早くそのときが来るとは思ってもみなかった。



 一人でも残せば足がつく。行動を起こすのが遅れても情報が広まっていく。


 今なら逃げたエルザに目が行く。店へのたかりはうちだけじゃなく手広くやっているはずだ。



 エルザは俺の指示でやったと言っていたようだが、話が二転三転していたようだし、信用されていない様子だった。おやっさんの店へ来る程度にはこちらの事も調べられているようだが、今ならまだなんとかなるかもしれない。懸念材料がある分、徹底的にやった方がいいだろう。


 今日一気に片をつける。


 言及されないようにおざなりに話をつけたが、もう少し安心させてから出てきた方がよかっただろうか。


 俺はそんなことを考えながら頭巾で顔を隠し、服も変える。


 背にナイフ、腰に片手剣とドスを差して準備を整えた。



(まずはあいつらを見つけないとな)


 一人でも見つけられれば、後をつけて住処を探すことができる。


 俺は治安の悪いエリアに移動すると、スキルを全開にしてギャングを探した。



 しばらくしてさっき目撃した二人連れのギャングを見つける。



 まだ昼間なのでどういう行動をするか分からないが、ひとまず後をつけ続けた。


 二人は何件か店を回ると、街のはずれの方へ移動をはじめる。


 この先は廃墟が多数あり、人は住んでおらず再開発される予定の地域だ。


 ギャングはその中にある廃墟の屋敷に入っていった。



 俺は屋敷の裏に回ると建物に近づき【気配察知】と【聞き耳】を使う。


 中には複数の人間がいるようで、雑談しているのが分かる。


 雰囲気から察するに、どうやらここがギャングのアジトのようだ。


 探りを入れた結果、屋敷は二階建てだが全員一階にいることが分かる。



 俺は人の気配の一番遠いところから屋敷へ侵入した。


 元は立派な建物だったのだろうが、今はそこかしこがボロボロの上、鍵もかかっていない有様だ。


 中へは簡単に入ることができたし、隠れられる場所も多い。



 俺は人の気配が集中している場所へ少しずつ近寄る。


 広い屋敷だが人の気配は応接室と思わしき場所から全て感じられた。


 現在屋敷にいる人数は十一人。会話を聞く限り、まだ外にいるのが四人。


 さっき会ったボス格の男もまだ外から帰っていないようだ。


 さすがに中に飛び込んで大立ち回りをするのは危険なので、単独行動する者から狙っていくことにする。



 しばらくすると一人がトイレのために部屋の外に出てくる。


 俺はそいつの後をつけ、応接室から十分距離を離したところで後ろからロープで首を絞めた。


 出血させると痕跡が残ると思い絞殺したが、かなり時間がかかった。


 多少抵抗されたが、接触していたので【忍び足】の効果で音は漏れずに済んだ。


 死体はアイテムボックスへしまい、応接室の側まで戻る。



 少し時間が経過するとまたトイレに一人たつ。どうやらギャング達は俺がこの屋敷に来る前から酒を飲んでいたようで、全員の気が緩んでいるのが分かる。こちらとしてはありがたい。



 その一人も同じように絞殺して元いた場所に戻ると、さすがにトイレに行った奴が戻って来ない事に中がざわつきはじめる。


 そこで一人が様子を見てくると席をたった。俺はそいつをわざと見逃し、応接室に戻るのを待つ。


 屋敷を見て回ったそいつが部屋に戻ると、トイレに行った二人がどこにもいなかったことを皆に告げた。


 中の面子はどうせどこかに行ったのだろうと結論をつけ、また酒盛りをはじめた。



 そしてまたトイレにたつ奴を狙って絞殺する。


 さすがに新たに二人殺す頃には中が騒がしくなっていた。さすがに異常に気付いたようだ。



 【聞き耳】の結果、全員で屋敷の中をくまなく調べることになったことが分かる。


 ギャングたちは分散し、それぞれ屋敷の中を歩き回りはじめた。



 その頃俺は二階の一室にいた。


 扉を閉めて誰かが入ってくるのを扉の側でじっと待っていた。


 どうやら二階には二人上がってきているようだった。



 しばらくすると一人が扉を開けて室内を調べに来た。男が明けた扉を俺は内側からそっと閉め、そいつの背後に立つと石を後頭部に振り下ろす。



 ゴンッとそこそこ大きな音を立てて鋭利な石は相手の頭を凹ました。


 力尽きて倒れようとする男を抱えつつ、アイテムボックスにしまう。


 事が済んだ頃、音を聞きつけたもう一人が異変に気づいてこちらに向かって来る。俺はまた扉の側に立ち、そいつが来るのを待った。


「おい、なんか大きな音がしたけ…………グッ」


 そいつの言葉を遮り首を絞める。ある程度警戒されていたので多少抵抗されたが、問題なく絞殺しアイテムボックスにしまう。



 俺は二階の二人を殺すと窓から【跳躍】と【張り付く】を使い、地面へ降りた。

 そこから屋敷へまた入る。


 一階では二階に行った奴が戻ってこないと騒ぎになっていた。様子を見守っていると、どうやら二階に何かいる可能性を考慮して三人で上の様子を見てくることになったようだ。


 それを聞いた俺は一階に残った二人を狙うことにする。



 二階に行った奴らが十分奥まで進み、部屋に入ったのを確認して弓を取り出す。



 俺は二本の矢を番えて弓を横向きに構える。


【弓術】スキルに身を任せつつ、矢の先端から出た照準ラインが話している二人の頭部に当たるよう調節し矢を射った。


 放たれた矢は的確に二人の頭部を貫く。


 頭に矢を受けた二人は大きな音を立ててその場に倒れた。



 俺は【疾駆】を使って素早く階段を上り階段側の部屋に入る。扉を完全に閉めずに階段側が見える状態で三人が戻ってくるのを待つ。



 両手にナイフと片手剣をそれぞれ持ち、音に気づいた三人が戻ってくるのを待ち構える。ドタドタと足音を立て、騒ぎながらやってくるので距離感が掴み易い。


 一階を見下ろそうと三人が階段の側まで来たところで扉を開け、背後から順に首を斬りつける。スキルの影響で流れるような動作で三人をあっさり沈黙させる。


「ふぅ」


 俺は一呼吸入れると眼前と一階にいる五人の死体を全てアイテムボックスに回収した。


「一応血も拭いておくか」


 撲殺したところ、矢を射ったところ、斬ったところの血を綺麗にふき取る。



 拭き掃除が終わるころに【気配察知】が屋敷に近づいてくる気配を感じとった。


 近づく気配を二人分感じる。二人は話しながらこちらへ向かっているのか同じ速度でこちらへ近づいているのが分かる。



 俺はすばやく玄関へ向かった。


 外から二人の気配が扉を開けて中へ入ってくる。俺は扉の側で二人が屋内へ進むのを待ち、ナイフと片手剣で背後から襲いかかった。


 一人は片手剣で胸を突き、一人は腹にナイフを突き立て捻る。


 胸を突いて絶命させた方をアイテムボックスにしまうと腹を刺したほうを突き倒し、何度か傷口に蹴りを入れて暴れないようにする。



「この街で活動しているお前らは全部で何人いる?」


「アア……ヒッアアアア!」


 傷が痛むのか、まともに喋るのも難しい様子だ。



「答えたら傷を治して逃がしてやる。約束は守る。全部で何人だ?」


 俺は懐から半分出したポーションの空瓶を男にチラつかせる。


「ハァハァ……ア、十五人んん……だぁ」


「よし」


 簡潔に返事をすると俺は止めを刺した。


 死体をアイテムボックスに回収し、血を拭き取る。



 応接室で聞いた人数と今聞いた人数が一致したので十五人で間違いないだろう。


 そうなると残りは二人。


 その内一人はボス格の男で決定だ。下手に街中を探し回るよりこのまま待つべきと判断し、俺はそのまま玄関で待機することにした。



 一時間ほど経った頃、こちらへ近づく気配を感じ取る。


 気配は一つのようだった。


 同じように玄関で奇襲をかけようと待ち構えていると、【気配察知】がもう一つの気配を感じ取った。


 今感じたもう一つの気配まではまだ距離があるが、屋敷に近づく気配の相手をしていると後から来る方と玄関で鉢合わせてしまう。二人は微妙な距離を保って屋敷に向かって来る。



 俺は慌てて応接室へ移動した。


 応接室の扉の側で待機し、はじめの気配がこちらに来るのを待つことにする。


 結局後から来る気配には不意打ちできずに対面で戦うことになってしまうだろうが、玄関だと逃げられる可能性があるのでここまで移動した。


「やけに静かだな……おい、誰かいないのか?」


 そう言いながら応接室の扉を開けて中に入ってくる男。


 俺は開けられた扉の影からすっと背後に近寄り、男の頭を石で殴った。


 石はその場に投げ捨てナイフを抜いて振り向く。



 そこには丁度、玄関から応接室に向かって来るボス格の男がいた。



 ――男と目が合う。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

   

間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ