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68

 

 俺は攻撃の衝撃に耐え切れずに両膝をつき、次いで両手もついてしまう。


 そのため、庇っていた頭部ががら空きとなってしまった。



「これはこれは! 頭が割り易そうな位置にありますねぇッ!!」


 エルザが楽しそうに笑うのと同時に、しなった蛇腹刀が俺の頭部目がけて振り下ろされる。



「ぐおっ!?」


 俺は振り下ろされた蛇腹刀を転がるようにしてかわし、その勢いに任せて立ち上がる。


 素早く剣を鞘へと仕舞い、反撃とばかりに鉄杭を投擲。



 エルザは旋回しながらそれを回避。


 間合いを調節し、様子を窺うようにして構える。



「もう一発だ!」


 俺が再度鉄杭を投擲しようとした瞬間、エルザもそれに合わせて鉄杭を飛ばそうと腕を伸ばす。が、鉄杭は発射されなかった。意図せぬ不発。――弾切れだ。


「フレイムアロー!」


 エルザは鉄杭が弾切れと分かるや否や、魔法を唱える。


 放たれた炎の矢は俺が投げた鉄杭と衝突。炎の矢は鉄杭に裂かれて霧散。鉄杭は威力を減衰され落下した。


(行くしかねえ!)



 好機と判断した俺は飛び出し、けん制に鉄杭を投げようとする。


 が、鉄杭はなかった。意図せず、こちらも弾切れとなっていたのだ。



 途中から集中しすぎて残りの本数を気にせず投げていたのがまずかった。


「アッハ、どうやらそちらも残弾が尽きたようですねぇ」


 止む無くそのまま突っ込む。こちらの様子に気付いたエルザが余裕で構え直し、迎撃態勢を整える。


「はああああああっ!」

「アーーーーーッハッハッハッハッハ!!!」


 俺は片手剣を振り下ろした。エルザの二刀が十字に交差し、それを防ぐ。


 鍔迫り合いになろうとした瞬間に、【短刀術】に切り替える。



【短刀術】に身を任せた俺は、相手の周囲を踊るようにして回りながら、ナイフで流れるようにして斬りつけた。


 しかし、エルザは蛇腹刀を全身に蛇をまとわりつかせるようにして展開。


【短刀術】で頭部から首、胸、腹、腿と上から下へ連続で斬るつけるも、その全てが防がれ、血の代わりに火花が散る。



(くっそ、こっちの方が手数が多いのに蛇腹刀がうまくガードしやがる)


 俺の攻撃が一拍置かれた瞬間を狙い、もう片方の刀が伸長してこちらに迫る。


 なんともいやらしい攻防一体となった攻撃だ。



 俺は蛇腹刀の攻撃から離脱するため【縮地】を短距離で発動。


 発動中に剣を鞘にしまいつつ、弓を取り出す。



 そして、【縮地】終了と同時に、後方へ大きく【跳躍】。


 間合いを開けながら弓を引き絞る。



(こいつなら炎の矢で相殺できないはず……)


 俺は限界まで集中力を高め、狙いを定めた場所以外の視界を意図的に消していく。狙うはエルザの目。赤く輝くアイレンズだ。



 照準する範囲をギリギリまで狭め、狙いを明瞭にしていく。


 【弓術】スキルに身を任せ、絶妙の力加減で弦を引き絞る。



 矢じりからはスキルの影響で矢の軌道が赤いラインとなって伸び、エルザの面に繋がっていた。弦を引き絞っていると、弧を描いていたラインが一瞬直線となる。


「フッ」


 俺はその瞬間を見逃さず、すかさず矢を放った。


 矢は限界まで速度を高められ、直線に近い軌道でエルザへ向けて突き進む。


「フレイムアロー!」


 エルザが手をかざし、魔法を発動し、俺の放った矢を迎え撃とうとする。



 そして、空中で俺の矢とエルザの炎の矢が衝突。


 俺のスキルに限界に挑戦した矢は魔法を貫き、勢いを殺さずエルザへ向けて突き進む。



「ッ!?」


 予想外の展開だったのか、アイレンズ越しに目を見開いて驚くエルザ。


 回避が遅れ、矢が頭部側面装甲に命中。装甲を貫き、矢がめり込む。


 途中で迎撃されたため、軌道が逸れたが、なんとか命中してくれてホッとする。


 どうやら限界まで集中すれば俺の【弓術】スキルも中々の威力を発揮してくれるようだ。


「このおッ!」


 装甲から矢を引き抜き、激昂するエルザ。



 俺はその間に再度矢を番え、引き絞りながら空中で【縮地】を発動。


 横へとスライドしながら矢を放つ。



 それを見たエルザが手をかざす。


「フレイムアロォオオオオ!」


 今度は連射タイプの炎の矢がこちらへ向けて放たれた。


 が、一歩遅れての追随となり、その全てが外れていく。



 俺の放った矢は黒甲冑の肩へ命中。ガクリとのけぞるエルザ。



 俺は【縮地】が終わると同時に着地。柱の傍へ移動する。そのまま柱へ張り付き、天井へ向けて走りつつ矢を引き絞る。



「ちょこまかとぉおおおおおッ!」


 エルザが叫びながらフレイムアローをばら撒いてくる。


 が、連射タイプの魔法は一発一発の威力がそれほど高くない上に、狙いが甘い。


 掠った程度では大したダメージもないし、そもそも命中精度が低くて当たらない。



 こちらへの攻撃妨害がメインなのだろう。



 エルザは魔法を放ちながら、こちらへ向けて飛行を開始する。


 凄まじい速度で急速に距離を縮め、一定距離に到達すると蛇腹刀で突きを放ってきた。



 刃が分断して伸長し、俺との間合いを一気に縮める。


 天井へ向けて放たれた突きは刃を伸ばし、蛇のようにこちらを追尾してくる。



 俺はすかさずスキルを解除し、天井から落下。



「フッ」


 落下と同時に矢を放つと、【縮地】を発動して軌道を修正。近くの柱を目指す。


 放った矢は黒甲冑の腹へと命中。途端、蛇腹刀の軌道が逸れ、天井に突き刺さる。


「ぐぬぅッ!!!」


 悔しさを滲ませたような声を上げたエルザは蛇腹刀を戻し、両腕を大きく広げる。



 そして両腕を伸ばしたまま――


「これでどうだぁぁアアアアアアアアアッッ!!!」


 ――その場で回転をはじめた。



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