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 そしてクジの結果、ミックの獲物はコアになったようだった。


 残すクジは二本。



 クジを持っているのはレガシーなので、次に引くのは必然的に俺になる。



「じゃあ、次は俺か。はい、ボス! ボス抹殺引きましたよ、こん畜生」


 二番目にクジを引いた俺の獲物は組織のボスとなった。


 警備が厳しそうで面倒臭そうだ。



 俺がため息をついていると、最後に残されたクジをレガシーが確認する。


「ってことは残りの俺はSHB破壊だな。せいぜい暴れさせてもらうぜ」


 残されたクジは当然、SHB。レガシーの獲物はSHBとなった。


 と、いうわけで俺が向こうの組織のボス、ミックが空中要塞のコア破壊、レガシーが搭載されたSHBの破壊に決定した。


「で、向こうのボスって強いの? 多分、結構高齢だよね?」


 一人だけ対象の情報がはっきりしない俺はミックに相手のボスのことを尋ねた。


 ついさっきミックが語っていた情報から察するに、相手方のボスはスタンリーやクルスと同じく創設メンバーの一人っぽい。スタンリーとクルスがかなりの高齢だったことから考えると、そのボスなる人物も相当いい歳してそうである。


「こいつだ」


 ミックが懐から紙切れを出し、俺へ投げて寄越す。


 どれどれと畳まれた紙を広げてみると、おっさんの似顔絵がでかでかと描かれていた。見るからにいい歳した爺感がある。



 ただ、スタンリーやクルスよりは若干若く見えた。


 何というか、健康のために早朝ジョギングとかしてそうな面である。



「名前はハイデラ、魔法使いだ。スタンリーさんよりは年下だが孫がいてもおかしくない年齢だな。だからスタミナはないだろうし、身体能力も低いな」


「お、じゃあ一番簡単なんじゃね? いい意味での当たりなんじゃね?」


 ミックから得た情報を聞き、喜ぶ俺。



 組織のボスってことは後方で指揮をとってばかりだろうし、長らく前線に出ていないはず。しかも職業は魔法使い。


 魔法使いの爺相手なら体力勝負に持ち込めば、意外に簡単に倒せそうである。



 これは案外当たりくじを引いたのかもしれない。


 などと俺が爺を楽に殺せそうだとほっこり喜んでいると、ミックがやれやれといった様子で告げる。


「だから護衛がいるな。多分、仕事熱心ではないが強い護衛がぴったり張り付いてるはずだ。勇者二人が相手だ、良かったな」


「悪い意味で大当たりだったよ! 後衛に熟練の魔法使い、前衛に勇者二人とか完璧な布陣じゃねえか!」


 俺の喜びはミックの追加情報により、数秒で消し飛んだ。


 偉い人に護衛はつきもの。そりゃあそうである。しかもその護衛が勇者というオマケ付き。どうやら俺の相手は最強パーティーのようだ。


 これは案外外れクジを引いたのかもしれない。


 やっぱり高齢者をいたぶるなんて可哀相だし、やめておいた方がいいかもしれない。


「いつもみたいに背後から刺すという卑怯極まる行為に専念すれば、勇者も魔法使いも関係ないだろ?」

「そうそう、いつもどおり卑怯に行けばいいんだよ、卑怯に行けば」


 俺ががっくりと肩を落としていると、ミックとレガシーがニヤニヤしながらいつも通りにやれば強いお前なら大丈夫と慰めてくれる。


 ――て、慰めてるか? これ。


 いや、違うな。これは怒っていいところだろう。


「お前ら、わざと言ってるだろ。そうするしかないから、そうしてるだけなんだよ。俺だって生きたいんだよ!」


 俺だって名乗りを上げて正面から堂々と戦えるものなら戦いたい。


 だがそれをすると死んでしまうんだ。


 前の世界でも、はかなく命を散らしたというのに、こちらに来てまで裸の王様みたいな死に方をするくらいなら、しぶとく生き残りたい。


 生きたい! などと名台詞っぽく心の中で叫んでみる。


「はいはい、大体俺なんてコアの破壊だぞ? 失敗したら誘爆するんじゃねえの」

「いや、それを言うなら俺の方だろう。SHBの破壊ということは失敗すれば確実に爆発するよな」


 俺が命の大切さを説いている中、ミックとレガシーの二人はそれぞれのターゲットにも問題があることを悟り、顔を曇らせていた。


 ――それは爆発。


 高エネルギーを秘めたブツが近距離にある状況でハッスルしないといけないため、火達磨どころか粉々に吹き飛ぶ危険と隣り合わせなのだ。



「よし、みんなどっこいどっこいということが分かったところで飛空艇に乗るか」


 みんなきつくてどれも酷い。とてもよく分かった。


 と、いうわけでさっさと地獄へ旅立とうと、皆を促す。


「待て、ケンタ」


「なんだ?」


 俺が意気揚々と飛空艇に乗り込もうとすると、ミックに止められてしまう。


「アレを譲ってくれねえか? 機関部のコアを破壊すれば間違いなく爆発する。俺の自慢の拳で破壊すると逃げきれん。つまりは遠く離れたところから遠隔操作で発動できる爆弾が必要なわけなんだな、これが」


 ミックは俺が持つ最後の爆弾を譲って欲しいと言ってきた。



 確かにミックの言うとおり、拳で殴れば破壊は出来ても逃げ切れない。


 遠隔操作で破壊するのが一番だろう。逆に俺は破壊工作には参加しないので爆弾の必要性は薄い。ならばここはミックに爆弾を譲るべきだろう。


「ああ、それもそうか。これが最後の一個だから慎重に使えよ」


 俺はそう言って、爆弾と起爆装置をミックに手渡した。


「恩に着るぜ」


「俺だってSHBを破壊するのに爆弾が欲しいんだが……」


 と、ミックが爆弾を受け取るのを見ていたレガシーが愚痴をこぼす。


「SHBに爆弾はまずいだろ。魔法使って炉を切り離すか破壊した方が死ににくいと思うぞ?」


 一応SHBは巨大な爆弾だ。



 そんなものを爆弾で破壊しようとするのは、さすがに危険ではないだろうか。


 そう思った俺は、自身の経験からSHBの破壊方法を提案する。


 SHBは炉さえなんとかすれば、意外とすんなり機能を停止するのだ。


「安全って言えよ……。死ににくいってなんだよ」


 が、俺の説明に不満を抱いたレガシーがまたもや愚痴る。


「それならこれを使うといいよ」



 と、ここまでのやりとりを隅の方で静かに聞いていたラクルがこちらへ寄って来る。



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間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

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