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「そういうことだ。きっとクルスさんはこういう事態を予測して独断でドラゴンの爪を探しに行っていたんだな……。やっぱり、分が悪いから逃げたんじゃなかったんだ……」


 ミックが今は亡きクルスの行動を予測し、呟く。




 そしてその予想は、多分正解なんだと思う。



 あの男は単独でドラゴンのダンジョンに潜っていた。


 そのことに気づいた当時は何の目的があってそんなことをしていたのか疑問に感じていたが、今の説明で納得だ。



 クルスからすれば組織を抜けたつもりはなかったのかもしれない。


 ただ単に何の説明もせずにドラゴンの爪探しに行ってそのまま死んだ、ってだけなのではないだろうか。短い時間しか言葉を交わしたことは無いが、あの男の性格上、非常にありえる話である。


「スタンリーさんにもそのことを伝えてやれれば良かったのにな……」

「ああ……」


 レガシーが亡骸となったスタンリーに目を落としながら呟くと、ミックが息を吐くように頷く。



「じゃあ、ドラゴンの爪探しが当面の目標になりそうだな」


「そんな時間は……、ない。ドロップ品は確実に出る物じゃない。ということは必然的にドラゴンを何度も倒すことになってしまう。残念だが他の手段を探すしかないだろうな」


 鬱々とした気分を晴らすように少し声を張ったレガシーが次の目的を提案するも、それを聞いたミックが首を横に振る。



「ああ、他に防壁を破壊する手段がいくつかあるって言ってたな。他のは簡単な方法なのか?」


 ドラゴンのいるダンジョンへ向かい、爪が出るまで倒し続ける。


 確かにそれは時間のかかる作業になってしまう。


 こんな一触即発の状況でやるべきことではないだろう。



 そのことはレガシーも理解しているようで、ミックに否定されることを予想していたのか、すぐさま問い返していた。


(なんか口を挟みにくい雰囲気に……)


 二人の会話が段々ヒートアップして速度が増しているため、俺が口を出す暇が無い。


 なんとか発言しようとタイミングを窺うと余計に無口になってうまくいかない。


 どうしたものか……。


「勇者の剣技なら防壁を破壊できるはずだ。といっても、ドラゴンの爪ほどの効果は期待できないだろうな。多分、人一人がやっと入れるくらいの隙間を作るのが精一杯といった感じか……」


「じゃあ、勇者捜しか。まあ、そっちの方が現実的だな。ドロップ品が出るまでドラゴン退治を繰り返すなんて、狂気の沙汰だからな」


「そういうことだ。しかし、勇者の知り合いか……。皮肉なことに俺が知っている勇者は全員敵対勢力の方に行っちまったからな」


「あ? 向こうには勇者がいるのか? 勘弁してくれよ。って、おい、どうしたケンタ。さっきから黙ったままで」


 真剣な表情のミックとレガシーが空中要塞の防壁破壊に向けて活発に意見交換をする中、俺が無言なのに気づいた二人が急にこちらを見てくる。


 ――よし、やっと話せそうだ……。


「あるよ。ドラゴンの爪」


 言えた。



 中々タイミングがなくてどうしようかと思ったが、やっと言えた。


 妙に感慨深い。


「「え?」」


 などと俺が一人感動をかみ締めている中、ミックとレガシーは驚愕の表情で固まっていた。



 だが、その驚き方にはどちらかというと本気にしていない感が微妙に伝わってくる。


 むしろこれは持っていない、冗談だと思われている節すらありそうではある。


「これだろ?」


 俺は仕方なくアイテムボックスからドラゴンの爪を取り出して、二人の目の前に置いてみせた。出してみるとやはりデカい。ちょっとしたテントサイズである。


 ただ、案外重さはなく、軽い。多分、スポンジや軽石のような構造になっているのだろう。


「ほ、本物だ……」

「おおおおお! やったじゃねえか!」


 ドラゴンの爪を前にし、声を上げて喜ぶミックとレガシー。



 しかし、ドラゴンの爪があったとしても、問題はまだまだ山積みな気がする。


 大体どうやってあの空中要塞に近づけばいいのだろうか。


「でも、これでどうするんだ? 向こうはお空の上だぞ。まさかこれ持ってジャンプでもするのか?」


 俺がダンクが得意なプロバスケットボールプレイヤーでもちょっと無理な高さだ。


「もろもろの時間を考えると、飛空艇の先端に取り付けて突っ込むしかないだろうな」


 と、腕組みしたミックがとんでもないことを言い出す。なぜ、特攻……。


 もっと大砲の弾とかに取り付ける的な発想はないのだろうか。


 そう考えた俺はミックに尋ねる。


「俺、飛空艇に乗ったことあるけど、あれってそんなに速度が出ないよな? 低速で空中要塞にフラフラ近づいたら撃ち落されたりしないのか? それより大砲の弾とかにつけた方がよくね?」


「爪のサイズがでか過ぎる。大砲の弾だと特注になるし、弾は一発。失敗したら終わりだ。それ以前に魔法使い協会の絡みで大砲の調達がかなり厄介で時間がかかる。だから船の先端に付けてある程度軌道をコントロールしながら突っ込むしかない。それに防壁を破壊した瞬間に侵入できた方がその後の展開が楽だ」


「そうだよな……、この爪デカいんだよな……。となると、何か高速で空を移動できる手段が必要ってわけだな」


 俺の大砲案はミックに却下されてしまう。確かにこんなギリギリの状況なら軌道をコントロールできるようにしておいた方が失敗は少ない気がする。


 そしてミックの言う通り、防壁を破壊した瞬間に向こうに辿り着ければ、敵の応戦が軽微な間に姿をくらませることができそうだ。つまり、特攻が決定したことになる。やったぜ。


 つい最近もSHBをボードに高高度でエアサーフィンを楽しんだ身としては、もうどうにでもしてくれって気分である。


 だが、軌道をコントロールできたとしても低速の飛空艇では不安が残る。


 できるなら敵の攻撃や発見を逃れられるほど高速で移動できたほうが好ましいと思うわけで。


「多分いけるぞ。金はかかるけど」


 俺が思案していると、何かを思い出したようにレガシーが呟いた。


 なんと高速でお空を移動できる手段に心当たりがあるらしい。


「「おおお?」」


 俺とミックは期待に満ちた表情でレガシーの方を見ると、先を促した。



「俺の知り合いならなんとかしてくれると思う。一から作ることになるかもしれないから、時間はかかるだろうが確実だと思う。無理だったとしても何か伝手を紹介してくれる可能性もある」


「よし。じゃあ、レガシーの知り合いのところに早速行くとするか」

「時間が惜しい。空中要塞が何かやらかすかもしれんし、急ごう」


 と、全員での検討の結果、レガシーの知り合いのところへ行くことが決まった。


「ちょっと前に何かあれば頼ってこいと言われたばかりだし、早速利用させてもらうとするか」


 レガシーが思い出すように呟く。



 というわけで、スタンリーの遺体を弔った俺たちは、レガシーの案内で一路、飛空艇の調達に向かうのだった。



 …………



 俺の目の前には先端にドラゴンの爪が取り付けられた飛空艇があった。




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