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異世界転生したけどヒロインなんていないし、ハーレムとも無縁だぜッ!  作者: 館林利忠
九章 特別篇 ゴウカキャクセイン号にて
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46 ケンタは言い当てる 四

 

「ぇ」


 俺はバードゥの予想外の行動に声が漏れる。


(ここ十四階だぞ……)


 上部構造物の階層でいっても九階、かなりの高さだ。


 呆気にとられた俺はバードゥが飛び込んだ方へと移動する。



 そしてフロアの端にある手すりに掴まりつつ下を見下ろすも、バードゥの姿も首飾りも見付け出すことは叶わなかった。


 周囲は穏やかな波と風の音が聞こえるだけだった。



「……一体なんだったんだ」


 俺は一連の出来事が納得できず、そんな呟きを漏らしてしまう。


 少し海でも眺めて落ち着きを取り戻そうと考えた俺は手すりに身を預けて辺りを見た瞬間――。


「ん?」


 ゴウカキャクセイン号の後方から黒一色の船が近付いてくるのが見えた。


(もしかして救助船か?)


 誰かが通信機的なもので助けを呼んだのだろうか。



 それにしては黒一色というのはなんとも不吉なカラーリングだ。


 救助船ではなく、賊の増援だろうか……。



 俺がそんな考えを巡らせている間にも黒い不審船はどんどんこちらへと近付いてくる。


 現状こちらは停船している状態なので、あの船がこちらへ着いてしまうのはあっという間だろう。



 俺はその船が気になり、もう少し詳細を見ようと上甲板のある六階へ降りた。



 多分六階では救命ボートへの乗り込みを行っている筈なので船を確認したらそちらへ合流するつもりでの移動でもあった。


「すげえ速度だな……」


 六階へ到着し、手すりに掴まりながら目を凝らすと黒船が一直線にこちらへと向かって来ているのが分かる。



(でもあの船がこっちの側面から近づいてくれたのはありがたかったな)


 俺が今現在居る船体側面では救命ボートの乗り込み作業は行われていない。


 救命ボートの切り離し、及び乗り込み作業が行われているのは反対側面なのだ。



 まだこちら側ではそういった作業は行われていないが、案外反対側面だけで収容人数が足りてしまうのかもしれない。


 あの黒船がなんの目的で接近しているかは分からないが、救命ボートと接近する事態を避けれたのは良かっただろう。




「やっぱりこっちに来てるよな……」


 俺は船体側面の遊歩通路で手すりに掴まりながら黒船をじっと見つめる。


 不審船がこちらへと近付くにつれ、船の大きさや外観がはっきりと分かってきた。


 大きさはクルーザー位。色はやはり黒一色。船全体は妙な光沢があり、日の光を受けて煌びやかに反射している様が高級外車を思わせる。


 そして複雑なパーツが一切ない。


 なんというか船の形をしてはいるが手すりのような物が一切無く、人が甲板に乗れば落っこちそうなデザインだ。


 そんなデザインのせいか船上に人影はない。


 不審船は何度も使われてこなれた感じがするというより、初めて進水したばかりのピッカピカの新造船のような印象だった。


 そんな黒船が凄まじいスピードでこちらへとやってくる。


(……なんだあれ?)


 俺はそこで船体のある部分に目が留まる。


 船全体が黒一色だったため、一部分だけに妙な違和感があることに気付いたのだ。



 それは船首部分だ。


 何故かは知らないが黒船の船首部分に茶色の毛玉が乗っていたのだ。



 はじめ見たときは海のゴミが絡みついてしまったのかと思ったが違う。


 よく見るとそれは高級外車のエンブレムのようにきっちりと船首部分に固定されているのが分かる。


「んんん?」


 俺がいぶかしんで目を凝らすのと、毛玉が九十度グリンと回転するのが同時になる。


「うおっ!!」


 それは人の頭だった。



 船の船首部分に人の頭部が接合されていたのだ。


 そしてその頭部がこちらへと向き、俺に視線を合わせてくる。



 その顔は茶髪に片目が眼帯の見慣れた顔。


(エルザだ)


 エルザだった。


 船首部分での見張りを任されたエルザは俺と目が合うと下まぶたに届くかというほど口端を吊り上げる。


「なんか言えよっ!!」


 今まで散々大声で笑っていたイメージがあったので、無言でニヤッとされると背中に寒気が走る。



 エルザは俺の言葉を受けてゆっくりと口を動かす。


 だが大声を出したわけでもなかったため、口の動きしかわからない。


 読唇術ができるわけでもないが数語しか発しなかったその言葉は多分“見つけた”と言っていたのだろう。




(ちょっと〜、今までのハイテンションな感じはどうしたんだよ……。そんなしっとりいかれるとめちゃ怖いんですけど……)


 怯えて立ちすくむ俺を無視して黒船はこちらへと方向を調整しながら突進してくる。



(止まる気はなさそうですよね……)


 一切迷いのない全速力での直進を見るに、俺の予測は外れそうにない。



「……てか、こんな船の真ん中に体当たりをかまされたら横転するんじゃないか……」


 今俺がいる位置は大体船の中央だ。


 多分今ごろ反対側面では救命ボートの出航準備をやっているはず。


 このままでは下手をすると、そちらに被害が及ぶ可能性がある。



「くっそ! やべえええええっ!」


 危機感を感じた俺はその場から離れようとすぐさま走り出す。


 俺は視界の端で黒船の動きを確認しながら【疾駆】を発動し、少しでも被害が少なくなればと船首を目指した。



 すると黒船も俺を追うようにして少しずつ方向転換してくる。


 避難誘導が完了したせいか進行方向には何も障害物がなく、走りやすい。



 昼間の船上とは思えないガラすき感だ。


 が、よく見れば死体がチラホラと散見できる。



 俺は何も考えずに船首目指して必死に走る。


 そんな俺の背後から一切声を出さず口端を吊り上げたエルザが凄まじい速度で迫ってくる。



(つ、着いたぞっっ!)


 なんとか黒船が接触する前に船首にたどり着く。



 が、何か様子がおかしい。


 船首には妙な雰囲気が漂っていたが、注意深く周囲を観察する暇もない。


 違和感を気にしている暇のなかった俺は少しでも衝突の被害を減らそうと更に前へ駆ける。


 眼前にはイベント用なのか趣味の悪いヤギの巨大オブジェがあったが、今は悠長に鑑賞している場合ではない。


「くそッ!!!」


 俺は必死で駆ける。





 ――死になさい。





 囁くような声でそう聞こえた気がした。



 声が聞こえた方を向けば黒船が高々と飛翔していた。


 日の光を一身に受け、ギラギラと黒光りするそれはトビウオを思わせるほど軽快なジャンプでこちらへと降りかかってくる。


「ふぬうううううおおおおおおおおおっっっ!!!」


 必死の俺は全身を投げ出すようにしてジャンピングダイブし、黒船をかわそうとする。


 黒船は俺をすり潰そうと凄まじい速度で船上へと乗り上げた。



 ◆



「殺るよ……」

「真ん中がまずそうですね」


 それぞれの武器を構えたオリンとロッソが陣を囲むフードの者たちへと近付く。



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間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

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