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異世界転生したけどヒロインなんていないし、ハーレムとも無縁だぜッ!  作者: 館林利忠
九章 特別篇 ゴウカキャクセイン号にて
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35 イハタクは驚愕する

 

(くそっ! 外に出れないっ!)


 イハタクは限界まで切羽詰っていた。



 目の前に捜していた女がいるのに身動きがとれない。


 しかも女はドンドン離れていく。



 イハタクと女の間には賊とフードの者がおり、簡単に外には出れない状態となっていた。


 それでもなんとか隙を見つけて飛び出そうと構えるイハタク。


 その時――。



 店の出入り口付近にいたフードの者が一人、宙を舞って一気に奥へと吹き飛んだ。


「え?」


 呆気にとられるイハタク。


 それと同時に店の中へと飛び込んで来る人影があった。



 人影は瞬時に客の中から賊とフードの者を見分け、次々仕留めていく。


 目を凝らせば妙なマスクをつけた三人組が暴れまわっているのだと判明する。



(行くしかないっ!)


 今がチャンスだと判断したイハタクは決死の覚悟で出入り口へと走った。


 フードの者に掴まれそうになるも、それを振り払って全力で駆ける。


 そしてマスクをした三人組が店の奥へと突き進むのと入れ替わるようにして外に出ることに成功する。


(やった!)


 脱出に成功し内心で激しく喜ぶイハタク。


「ど、どこだ!?」


 だがそんな喜びの余韻に浸る間もなく女を捜そうと慌てて視線をぐるりと一周させる。


(居た!)


 そしてすぐに目的の女を発見する。


 女はこのエリアから出ようとしているのか、駆け足で店から離れていくのが見えた。



「くっ、おい! おい待てっ! 待てと言っているんだ!」


 イハタクは女を立ち止まらせようと大声で叫んだ。


 しかし、周囲の注目を買っただけで、女がこちらを向くことはなかった。


 諦めて女へ向けて走り出す。



 そしてイハタクが女へ向けて走り出す中、周囲に異常が発生する。


 周りにいる客の中に薄茶色のフードつき外套を羽織りだすものが現れたのだ。



 その恰好を見てイハタクは戦慄する。


 それは店内で賊とは関係なく無差別に人を襲っていた者たちと同じ姿だったのだ。


 女を追いかける中、フードの者たちの数が急激に増加していく。



 それは前方を走る女の周囲も同様であった。


 このエリア全体にフードの者たちが大量に現れたのだ。



 そして危機的状況はイハタクより先に前を走る女の方に訪れた。


 前を走っていた女はフードの者たちに取り囲まれてしまったのだ。


 多分、囲まれる少し前に邪魔をしようとしたフードの者の一人を斬り倒してしまったのが災いしたのだろう。その行為のせいで目立ってしまった女は全方位を囲まれ、ジリジリと距離を詰められる状態に陥っていた。


(クソッ、クソッ、あのままではトランクが無事で済むかわからないじゃないかっ!)


 女の窮地よりトランクの損傷を心配するイハタクの前でフードの者たちは一斉に短い曲刀を構えた。


「やめろおおおおおおおおおっ!!」


 絶叫するイハタクの眼前で女に向けて一斉に曲刀が振り下ろされる。


 ――が、曲刀が女に届く事はなかった。


 全ての曲刀はその握った手首ごと空中へと跳ね飛ばされてしまったのだ。


 そして、イハタクが宙を舞う曲刀を目で追うのを止め、視線を元に戻すと手首から下があったであろう場所は真っ赤になっていた。まるでその辺りの空間だけガラスで閉じ込めたかのように赤い。


(な……!? 血……、いや、肉なのか……?)


 目を凝らしたイハタクはその空間が赤く区切られている理由をようやく理解する。


 細かい破片となった肉、その断面から飛び散った血液が霧のように舞っていたのだ



 ――イハタクが視線をそらしたほんの僅かな間に女の周囲にいたフードの者たちは一瞬にして肉片と化していたのだった。



 ◆



(な、なんとかなった……)


 食堂で賊に包囲されたが、なんとか脱出に成功したヘザーは全力で走りながらも安堵していた。


 これでトランクを奪われることもない。金は無事だ、と。



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間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

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