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1 到着

本作品は残酷なシーンが含まれます。そういった描写に不快感を感じられる方は読むのをお控えくださいますようお願いします。


あらすじにも書いてありますが本章より残酷なシーン、登場人物の死亡、主人公が殺人を犯す描写が本格的に出てきます。なろう内の投稿作品を見ていると該当話の前書きに注意書きをするのをよく見受けますが、本作は該当シーンがネタバレになる部分もあるため前書きでの注意喚起は行わない予定です。また、そのシーンを読み飛ばして読んでも意味が分からなくなってしまうというのもあります。そのため冒頭に当たる第一話での注意喚起とさせていただきます。ご了承ください。







 俺は今、メイッキューの街を目指している。


 以前いたスーラムの街は物価が高く治安が悪かったため、冬を乗り切れそうなメイッキューの街に向かって移動中なのである。


 目的地であるメイッキューの街にはダンジョンがあるそうで、冒険者が稼ぐにはもってこいの街らしい。


 出来ればさっさと目的地に着きたいところだが、馬車や馬はを利用しようにもお金がなかったので移動手段は徒歩だ。


 と言っても街道を行く馬車などを見ていると無理に利用する必要はなさそうだ。


 馬車の移動スピードは案外遅い。俺的には馬と言ったら、テレビで見た時代劇や競馬の印象が強かったので、もっと爆走しているイメージがあった。


 だが、実際にはそんなことはなかった。馬も生き物だし、あんな全速で走っていたら疲れて使い物にならなくなるのだろう。


 やはり、旅で問題になってくるのは荷物の重さだ。


 そういった部分を軽減させるために馬車は重要になってくるのだろう。


 そう考えると俺が馬車を利用する意味はあまりないのかもしれない。


 なぜなら俺にはアイテムボックスがあるからだ。そうなってくると移動速度も歩いている方が少し遅い程度だし、利用する意味があまり見いだせない。



 それに、こうやってのんびり歩くもの案外悪くない。


 何より、同乗者に気を使う必要がないのは大きい。一人で気楽に行動できるのはポイントが高い。


 少し暑さが和らいできたのもあって、景色を楽しみながら歩く旅は中々いいものだった。



 街道は綺麗に舗装されているので足に負担がかかることも少ない。


 道の両端には一定間隔で結界石が設置されており、弱いモンスターは石を嫌って寄って来ない。


 この結界石は町の外壁にも利用されていて、モンスターが近寄らないようにするのに一役かっているそうだ。



 そのため、街道沿いで野宿すればモンスターの奇襲も防げるため、意外に快適な旅を満喫できている。


 しばらく進んでいると大きな川が見えてきたので今日はそこで休むことにする。


 俺は川に着くと早速魚獲りの準備をはじめた。


 以前蓄えた焼き魚がまだ少しあるが、尽きる前に補充しておきたい。



 といっても目的地まで後少しの距離になっているので食料確保というよりは息抜きという意味合いが強い。


 適当に魚を獲ったあと、下準備だけ済ませてアイテムボックスに一旦しまう。


 焼くのは翌日にして、今日は日が高いうちから寝てしまうことにする。



 そして翌朝、というより深夜に起きる。


 まだ日の出にはかなり時間があるため、肌寒さを感じる。


 俺は前日のうちに準備しておいたかまどに、薪と串に刺した魚をアイテムボックスから出して魚を焼く準備をしていく。


 周囲は暗く、普通の人なら何も見えないだろうが俺には【暗視】のスキルがあるのでてきぱきと準備が進む。


火をおこし、串を地面に刺したあとは温めた白湯をちびちび飲みながら串を回転させて、焼き加減を調節していく。


 空はまだまだ暗く、星が良く見える。


 まるで米びつをひっくりかえしたように空一面びっしりと星々が散りばめられていた。


(米が食いてぇなぁ)


 焼ける魚の匂いを嗅いでいると、神秘的に輝く星々もご飯粒に見えてしまう。



 しばらくして魚が焼きあがる頃には辺りが少しずつ明るくなってきていた。


 遠くを見ると山の谷間から明るい光が漏れ出てきている。


 段々周囲を照らす明るさが焚き火のものから陽の光に切り替わっていく。


 俺は日の出を楽しみながら、今焼き上がったばかりの魚を口に運ぶ。


(贅沢な時間だなぁ)


 俺は魚を口にくわえたまま、全体の後片付けを済ませる。出立準備を整えた後は、完全に明るくなるまで焼きたての魚に舌鼓を打ちつつ、山の緑が陽の光に照らされていく様を楽しんだ。


「よし、出発するか」


 腹ごしらえも終わり、朝の清々しい空気を肺一杯に吸い込んで今日もメイッキューの街を目指す。



 旅の一日のざっくりとしたスケジュールは、午前中は黙々と進み、昼食前に一旦街道をそれてモンスター狩りを行っている。


 モンスターを狩っているのは街に着くまでに暗殺者のスキルレベルを上げておきたいためだ。


 スーラムの街(というか森)にいたときに相当モンスターを倒したのでそろそろ上がってもおかしくないだろうと踏んでいるのだが、中々上がってくれない。



 この辺りに生息するモンスターもゴブリンやオークが多く、慣れているので相手にしやすい。


 ゴブリンなら問答無用で狩り、オークなら倒せそうと判断したらいく。


 他の見たことないモンスターはやり過ごし、狩りを行う時間を決めて行動している。



 そんな事をしているので旅をはじめてそれなりに日数が経過していた。


 丸一日移動に費やせばもう少し日数を短縮できた可能性もあるが、それをすると今度は怪我の危険も出てくる。無理をしたり、全力で事を進めようとすると、余裕がなくなってトラブルを誘発しやすい。


 一見、無駄に見えたり、時間がかかっているように見えても、ここは急がば回れの精神を大事にしていきたい。


 というわけで、今日も昼の日課となっているゴブリン狩りを終えた俺はステータスを確認してみる。



 ケンタ LV5 暗殺者


 力 21

 魔力 0

 体力 8

 すばやさ 22


 暗殺者スキル(MAX)

 LV1 【暗殺術】

 LV2 【忍び足】

 LV3 【気配遮断】

 LV4 【跳躍】

 LV5 【張り付く】 (張り付ける)


(狩人スキルLV4)


「来たよッ!」


 念願のスキルレベルアップを果たし、ガッツポーズする俺。


 とうとう暗殺者スキルがLV5になった。



 それと同時に暗殺者スキルの文字の隣にMAX表示が出ている。


 文字通り、これ以上はスキルレベルが上がらないってことなんだろう。


 表示を見た俺はスキルレベルは5が最大なんだな、と一人納得する。



 そして肝心の入手したスキルを見てみる。


「張り付けるってなんだよ……」


 スキル名が【張り付く】、説明文が張り付ける。


 説明不足にも程がある。



 よくわからないのでとりあえず近くにあった木に向かって【張り付く】を発動して触れてみる。


「おう?」


 すると、手が張り付いて木から離れなくなった。



「何の役に立つんだこれ?」


 一旦解除して、今度は足を木に接触させてみると、同じく張り付いた。


 瞬間接着剤でイタズラされた気分である。


「もしかして、これで木とか登れるのかな?」


 そう思い、今度は両手両足を同時に木に飛びついて接触させてみる。



「……動けねぇ」


 文字通り張り付くだけで、その状態で体を動かすことが出来なかった。


 張り付いた状態でスイスイ壁のぼりとかを期待したが無理そうだ。



「どうしろと……」


 スキルで張り付いた俺の姿はまるで腕に抱きつくぬいぐるみ状態だ。


 木の上で寝るときには便利そうだが、今一つ使い道が分からないスキルだ。


 これが暗殺者スキル最後の一つというのは納得できない……。


 もっとこう、見るからに凄い能力を期待していただけに肩透かしを食らった気分だ。



 ただ、目標だった街に着くまでにスキルレベルを上げることはできたので後は進むだけだ。


 まだ街に着くまで数日はかかるのでその間に有効な使い方でも考えていきたい。


 …………


 ここ数日、周りの景色が大分変わってきている。



 少し前までは自然豊かな感じで、街に近づく数日前は周りに畑がちらほら見える状態が続き、今はまるで荒地のようになってきている。


 本当にこっちの方角であっているのだろうかと心配になりだしたころ、遠くに街の外壁が見えてきた。


「おお! あれかぁ」


 確かにすれ違う人は増えてきていたので大丈夫とは思っていたのだが、枯れた大地が広がる光景を目にしているとどうしても心配になってきていたのだ。


 ゴールが見えてちょっと嬉しくなった俺は小走りに街の入り口に向かってしまう。



 街の入り口にたどり着くと結構な行列が出来ていた。


 俺は早速行列の最後尾に並ぶ。


 行列に並びながら周りを見ると冒険者と思われる格好をした人達が多数見られた。


 単独で来ている人は見当たらず、みんな三人から四人の集団で訪れている人が多いようだ。


 そうやって周囲の人間を観察していると列が進み、自分の番が回ってきた。



 入り口にいる門番の人に身分のわかる物があるかと聞かれたのでギルドカードを提示する。


「うむ、問題ない。通っていいぞ。後、街を移動した際は必ずギルドで更新手続きを行うように」


「はい、ありがとうございます」


 俺は必要事項を手短に話してくれる門番にお礼を言い、必要な料金を払って門をくぐった。


「着いたわぁ。まずは宿か……いや、ギルドで更新しろって言ってたな」



 俺は近くにいた人に冒険者ギルドの場所を聞き、早速ギルドを目指す。


 街の中はスーラムの街に比べるとどこも広い、道の幅一つとっても違う。


 建物も三階建てや四階建てのものが普通に建ち並んでいる。


 そして何より違うのが人の多さだ。



 これだけ広い街にも関わらず、通りに狭さを感じるほど人が行き交っている。


 俺はそんな街中を上京したての田舎者感丸出しでキョロキョロしながら冒険者ギルドへ向かった。


「で、でけぇ」


 冒険者ギルドへは迷うことなく着いた。


 道を教えてくれた人のお陰でもあるが。何より建物がでかすぎた。


 建物自体が目印と化しているのだ。


 一言で表現するなら学校だ。



 看板の矢印に従い、一際大きな扉の前に着く。ここが入り口なのだろう。


 扉を開けて中に入ると、そこは体育館のように開けた場所があった。



 大きさで言えば体育館二個分くらいだろうか。


 入り口から奥に向かってずらっと受付カウンターが存在し、壁沿いには大量の掲示板が設置されていて、その間の空間は冒険者がひしめき合っている。


「ひ、ひれぇ」


 さっきから驚きっぱなしだがこのでかさと広さなら仕方ないと思う。


 カウンターが多数あるため、並ばなくてもすぐに更新してもらえそうだ。



 しかし、しかしだ。


 受付選びは慎重に行わなくてはならない。



 手続きしたところの受付がそれ以降も固定されてしまうためだ。


 スーラムの街ではそれで失敗した。


 同じ失敗をしたくない俺は受付の人を順番に嘗め回すように見ていく。



 俺が希望する受付の人、それは普通の人だ。



(案外ハードル低いな)


 いやいや、ここは条件を明確にしていこう。


 まずは、会話が成立すること。そして、まともな受け答えが可能なこと。


 あとは必要な知識を仕事の範囲内で教えてくれる人だ。



(やっぱりハードルが低い気がする)


 しばらく様子を見てみるも、どの受付でも大丈夫そうだったので早速その一つに向かう。



 すぐ手続きが済むように、人が並んでいないところに行きそうになるが、一人二人並んでいるところの方が大丈夫な気がしたので、一人並んでいるところの後ろに並ぶことにする。



「次の方どうぞ」


 前の冒険者の用件が済み、俺に順番が回ってくる。


 呼ばれた俺は早速受付へと向かった。


 近づいて分かったが受付の人は眼鏡をかけた綺麗なお姉さんだった。


 外見だけで判断すれば仕事のできる人といった印象だ。



「街を移動してきたので更新手続きをお願いしたいのですが」


「はい、更新手続きですね。ギルドカードを提示していただいてもよろしいでしょうか」


 丁寧な口調で目を見て話してくれるお姉さん。それだけで涙が出そうになる。歳をとると涙もろくなるというのは本当のようだ。


 決して以前ギルドで酷い対応を受けたからではない。


「あ、お願いします」


「はい、しばらくお待ちくださいね」


「はい。…………………………ん?」


 しばらくと言う割にはかなりの時間が経つ。何かトラブルだろうか。


 そんな絶妙に長い時間が経過し、お姉さんがこちらへ視線を向けてくる。



「…………あの」


「なんでしょうか?」



「失礼ですが、どちらの街からお越しでしょうか?」


「え? スーラムですけど」



「あぁ〜……、もしかしてそちらで冒険者登録されましたか?」


「はい」



 なんだろう、会話の流れが不穏だ。質問の意図がわからないので段々不安になってくる。



 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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