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異世界転生したけどヒロインなんていないし、ハーレムとも無縁だぜッ!  作者: 館林利忠
九章 特別篇 ゴウカキャクセイン号にて
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24 ケンタは察する

 

(やべえな……)


 俺の目の前で笑顔のミゴが睨みを利かせる中、賊の包囲は進んで行く。


「ちょっと待ったぁあああっ!!」


 そして強盗の包囲が完成する頃、どう贔屓目に聞いてもおっさんとしか言いようがない野太い大声が木霊した。



 声がする方を向けば今までバンドが生演奏をしていたステージ上に怪しげなマスクマンが三人立っていた。ついさっきまでは賊のリーダー格が立っていたが、どうやら端に追いやられたようだ。



 三人組の左は小柄な女の子っぽいマスクウーマン。


 真ん中はビール腹のマスクマン。


 右はスラッとしてシュッとしたマスクマン。



 三人の顔はバケツみたいなフルフェイスに近いヘルメットで覆われていた。


 ヘルメットは左から順にY,X、Zとメット全体に金属のプレートがべっちょりと貼り付いた恥ずかしいデザインだ。なんか首を360度回転させるマジックでもやりはじめそうな勢いである。



 突然の乱入者にざわつきはじめる強盗達。


 だがそんなことはお構いなしにセンターに立つXのヘルメットを被ったおっさんが口を開く。



「皆が船旅を楽しむこのような場所での悪行はこの国が許しても我々が許さんッ!」



 そこは国じゃなくて天だろ、と心の中でツッコミを入れつつ、この国の行政機関にいちゃもんをつけるおっさんを見つめる。



 そんなおっさんは金属製のヘルメット以外も全身金属の鎧に身を包んでいた。


 特に印象的だったのが胸の部分で特大の手裏剣を斜めにして貼り付けたようにエックスの文字が装飾として施されていることだろうか。顔と胸でダブルエックスである。


「貴様らの蛮行は目に余る。ここで成敗してくれる!」



 と、妙にイケメンオーラが漂わせるスラッとした男がおっさんの後を継ぐ。


 スラッとした男は金属のヘルメット以外はシンプルな革鎧に身を包んでいたが妙に高級感が漂う。



 顔を隠しているのにスタイルと声音だけでイケメンオーラを出すとは離れ業もはなはだしい。あと、美味しい燻製作るのが超上手そうなオーラも出てる気がする。



「ジャスティスマスクZの言う通り悪は滅する! 素敵、抱いて!」


 最後に小柄な女の子っぽい子が続く。


 ちっちゃい子はその体躯に似合わないサイズのドでかいハンマーを様になるポーズで持っていた。



 どうやら女の子の話を聞く限り、スラッとした男はジャスティスマスクZというらしい。どうでもいい情報ゲットだ。


「我々謎の仮面の正義の使者! ジャスティスマスクX!!!!」


 そう言って両手両足を大きく開き人文字でXっぽいポーズを取るセンターのおっさん。



「ジャスティスマスクY!!!!」


 そう言って両手を目一杯広げ、両足を閉じて人文字でYっぽいポーズをとる女の子。



「ジャ、ジャッ…………」


 だがそこでジャスティスマスクYの口上を受けてそれに続こうとしたジャスティスマスクZがためらいがちにジャを連呼し中々進まない。


 顔がマスクで隠されているので表情は分からないが、明らかに迷いのある感じが伝わってくる。



(そうか!)


 俺はそこであることに気づいた。



 原因はきっとジャスティスマスクXとYのポーズにある。


 XとYは体全身を使ったポーズが作りやすい、簡単だ。



 だが、Zはそうもいかない。


 手や腕だけで作るならZもなんとかなるが、それだと小さすぎて三人でポーズを取ったときにバランスが悪い。


 かといって全身でのポーズとなると一気に難易度が跳ね上がる。



 ……そう、思いつかないのだ。


 全身でZを表すポーズ。


 案外難しい。


 そんな俺の予想が的中しているのかはわからないがジャスティスマスクZは中々ポーズに移ろうとせず、プルプルと力みながらその場に立ち尽くしていた。



(頑張れZ!)



 俺は心の中でエールを送る。


 劇場でサイリウムを握ってがんがえ〜じぇっと〜と叫びたくなるくらい熱のこもったエールである。



 するとジャスティスマスクZは意を決したのかカッと顔を上げ、横を向いた。


「ジャスティスマスクZ!」


 そう言って体を横に向けた後一瞬ジャンプし、空中で腕を前に突き出し、膝を曲げて頑張ってなんとかZを再現しようとするスラッとしたイケメンオーラ漂う男。


 その名はジャスティスマスクZ。


(がんばった!)


 一瞬、ほんの一瞬、大きさもぴったりにXYZと綺麗にそろう。


 ……良かった。



「「「我々がジャスティス団だっ!!!」」」


 特撮ならここで背後からスモークっぽい爆発が起こりそうなほどビシッとポーズを決める三人。


 なんか謎の仮面とか言ってるけど、俺、全部正体わかっちゃったよ……。


「な、なんなんだお前達はぁああああぁっっ!」



 決めポーズを最後まで見届けてから切れてくれる賊のボス格の男。


 あいつモヒカン刈りのくせに案外いい奴なんじゃないだろうか。



「ふん!」


 そんな賊のボスによる切実な問いかけには一切応えず、ジャスティスマスクYが特大ハンマーを振り抜いた。



 ハンマーはボス格の男に直撃し、人体から聞こえてはいけない音を盛大に鳴らしながら店外へとすっとんでいく。一発即死退場である。案外いい奴のモヒカンが居たということを俺は忘れない、この船に乗っている間くらいは。


「あ、兄貴が!」

「う、うろたえるな! ただの変質者三人だ! やっちまえ!」

「うおおおおおおおおおっ!」


 ボス格の男が倒されたというのに他の賊は士気が下がるどころか全員ジャスティス団目掛けて走り出した。



 人質をとったり、遠距離から攻撃しようとしなかったのは、きっと相手の数が三人の上に見るからに弱そうだったからだろう。それでも一撃で兄貴なる人物を吹っ飛ばしたのだから、もう少し警戒すべきだとは思うが……。


 賊は剣や斧を振りかざして三人へと飛びかかる。



 だが――


「ぐわああああっ!」

「こ、こいつら強いぞ!」

「畜生! こんな見た目の奴らなんかに!」


 ――片っ端から返り討ちにあっていた。



 みるみるうちに数を減らしていく強盗達。



 なんとも危なげない立ち回りで確実に賊を行動不能にしていくジャスティス団。


 賊の数も残りわずかとなったところで三人の強さに今ごろ気付いた賊は人質を取ろうと側に居た客を捕まえて剣をつきつけた。


「う、動くな! こいつを殺すぞ!」

「きゃぁあああ!」


 側に座っていた客の女性を人質に取り、ジャスティス団に脅しをかける賊達。



 だが、ジャスティス団の方を向いているということは、必然的にこちらに背を向けているということで。


「フッ」


 俺は人質を取って三人と向き合う賊達の後頭部へ順に【手裏剣術】を使って鉄杭を投げつけた。



 スコンスコンと小気味良い音を立てて絶命する賊。


 力なく倒れる賊に気付いた人質の女性は死体となった男を振り払って一目散に逃げ出した。


 これで一応店内にいる賊は全滅したことになる。



 全ての賊が倒れ、視界を遮っていた者が取り払われた瞬間、俺とジャスティスマスクZの目が合う。


 ――マスクをしているせいで表情は分からなかったが、これは気付かれたと見て間違いないだろう。


(やばいな……)


 このままこの場に居るのはまずいと判断した俺はすかさず席を立ち、店を飛び出した。


「待って! お待ち下さいぃいっ!」


 背後からミゴが呼び止める声が聞こえるも、俺は走るスピードを緩める気は一切無かった。



 ◆



「くっ……」


 ミゴは悔しさを限界まで濃縮させた一音を漏らした。



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間違いなく濃厚なハイファンタジー

   

   

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