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5 ザコーダアーマーX!


 店の扉を開けて中に入ると酒臭い空気と喧騒が出迎えてくれる。



 店員さんが案内しようとしてくれたが待ち合わせであると告げ、目的のテーブルを探す。夕闇亭に寄ったりしていたので、多分こちらが遅いと踏んだのだが、あいつらはいるだろうか。



「待ち合わせはここだったよな」


「ああ、多分俺達のほうが遅くなってると思うんだが……」



 俺とレガシーはキョロキョロしながらテーブルを一台ずつ確認しながら奥へと進んで行く。



 店内は外とは大違いでとても騒がしい。どの客も酒を片手に妙に盛り上がっていた。


 こういう辺鄙なところだと娯楽もなくて酒を飲むのだけが楽しみといったところなのだろうか。どこのテーブルも大盛り上がりで、酒を浴びるように飲んでいる様が目に付く。


 そのせいか店内はなんとも酒臭く、濃厚な酒気が霧となっているかのような錯覚すら覚える。周囲を見渡せば見渡すほど、外が静かだった分、余計に店内が騒々しく感じてしまう。


 俺達はなんとも言えない居心地の悪さを感じながらもチンピランとザコーダを捜す。


「おーい! こっちこっち!」


「席を取っておいたぞ」


 俺達が居心地悪そうにキョロキョロとしているとザコーダとチンピランがこちらに気付いて手を振ってくれる。


 だがその動きが何とも上機嫌な感じがして酔っているのではと疑わしくなる。


 俺達が来る前から酒盛りでもしていたのだろうか。


 俺はレガシーと顔を見合わせると早速そちらへと向かった。



「なんかあいつらもう出来上がってないか?」


「まあいいんじゃね?」


 俺は気になってレガシーに疑問を投げかけるも、どっちでもいいんじゃないかと答えられてしまう。薄情なもんだ。



 まあ、俺達も今からああなるわけだし、早いか遅いかってだけの問題ではある。


 そんな上機嫌な二人を正面にしながら席に着く。


「なんか柄の悪い奴らばっかりだな」



 辺りを見回しながらそんな感想が漏れる。


 俺達の席以外はどうにも厳つい奴らばかりだ。


 外見だけでなく、その振る舞いや口調も荒っぽい感じがして何とも雰囲気が悪い。


 時々喧騒を割って聞こえてくる大声もなんとも挑発的な内容のものが多い。


「チンピラン君、言われてるよ?」


「いや、俺のことじゃないだろ」


「ああ、店の客全員のことだよ」


 俺の言葉を聞いたザコーダが早速勘違いしてチンピランをいじる。



 だがチンピランはそれをあっさりかわしながら強面の客が大量にいる店内を見渡す。俺もそれに同意しながら頷く。


「フンッ、まあ高貴な僕に比べれば皆下賎な賊に見えるね」


 ザコーダが鼻を鳴らしながら酒場の客を見下したような目で見る。


 その見下した面構えが妙に様になってムカつく。


 ちょっと根っこがやせ細ってそうな黒い野菜を畑からぶっこ抜いて黙らせたい衝動にかられる。……静まれっ、俺の右手。


「ああ、お前は確かに高貴そうだな」


 確かに嫌味な表情が様になるほどザコーダは金持ちの臭いがプンプンする。



 金は持ってそうだが果たして高貴かどうかは疑わしいところではある。


 どちらかというと、その趣味の悪い装備から成金臭のほうが強く感じられる。


 鎧をトゲトゲにしたとき、誰か止める人はいなかったのだろうか。


「街の住人が客として来てないんじゃないか?」


 レガシーがゆっくりと酒を楽しみながらそんなことを言う。


「だな、俺らみたいな旅行者ばかりって感じだな」


 確かに辺りを見渡すと、ここらに住んでいる者の服装というよりは旅をしてここまで来たと言った方がしっくりくるような耐久性の高そうな服装の連中ばかりだ。


 それがどうにも気になったので【聞き耳】で辺りの会話を拾ってみることにする。



 ――へへっ、後は国境を越えるだけだ。こいつで一山当てるぜ。

 ――おい、こんなところで出すな。こぼれたらどうするんだ!

 ――気をつけろ。それだけでいくらすると思ってるんだ?

 ――わりぃわりぃ、つい調子に乗っちまった。

 ――まあ、その気持ちは分かるがな。

 ――だな、こんだけ捌けりゃ俺達大金持ちだぜ。

 ――そのためにも明日は山越えだ。

 ――おう。

 ――楽勝だぜ。俺達のバラ色の人生に乾杯だ!

 ――ヒャッハーー!


(うわぁ…………)


 会話を拾った奴らはどうも怪しげな商品を国外に持ち出して売りさばこうとしている様子。


 多分、商品というのは末端価格がどん引きするぐらい高額なうどん粉とかじゃないだろうか。しかし、そのうどん粉、以前仕入れた情報だと国内での流通量が減少して値が高騰しているそうだから、外に持ち出しても期待通りの結果にはならない気がする。といっても、物が物だけに、買い叩かれることはなさそうだが……。


 要はこういう奴らが大量にいるから柄が悪いと感じたのだろう。


 つまりここで酒盛りしているのは街の住人ではなく、俺達と同じくこっそりと国外へ移動する者達ばかりだったようだ。


 結構な人数がいるがそれが全員国外逃亡を図る者ばかりというのはなんとも壮観な眺めだ。これだけの人数がいれば俺達が国境を越えるときもこいつらに紛れてあまり目立たずに済むかもしれない。


「急に黙ってどうしたんだい?」


【聞き耳】を使っていたせいでしばらく黙り込んでいた俺を見て、いぶかしんだザコーダが声をかけてくる。


「悪い、じゃあ乾杯でもするか?」


 俺はザコーダの疑うような視線をかわしつつ乾杯で誤魔化そうとする。


「いいね!」

 何の疑い持たずに乗っかってくれるザコーダ。

 基本素直な性格で助かる。

 これで見下すような態度がなければ、気さくでいい奴と思えないこともないのに残念だ。


「「「「乾杯!」」」」


 木のコップが景気良くぶつかり、中の液体が軽く飛び散る。


 俺達はそんなことなど気にせず、コップの中身を勢い良く飲み干した。


 …………


「見てくれたまえこの剣!」


 ほろ酔いなのか、とてもご機嫌な表情でザコーダが抜剣する。


「おい! こんなところで抜くなよ!」


 ゆらりと立ち上がり、おぼつかない足取りで抜いた剣を構えるザコーダを止めようと声をかける。だが俺の言葉が届いていないのかゆらゆらとした決めポーズのままザコーダは話し続けた。


「ふふ、素晴らしい刀身だろう? これは魔力コーティングしてある逸品で、手入れの必要がほとんどないんだよ? 凄いだろう? これならドラゴンだって真っ二つさ!」


「ああ、確かに凄いな」


 ザコーダが何か語りだしたが話が長そうなので酒を飲みながら適当な相づちを打っておく。


 元の世界でカスタマイズした自家用車の事を語り出す同僚でこういうのは経験済みだ。


 大体凄いって驚いておけば満足してくれるはず。


「ふふん、名前はザコーダキャリバーって言うんだ。僕の名前をとってあるところがとても素晴らしいと思わないかい?」


「ああ、確かに凄いな」


 今、何かすごい名前を聞いたような気がしたが、それをザコーダに確認すると話が更に長くなりそうなのでさらっと流しながら酒を飲む。


 どうやら車自慢と言うより中二設定自慢のようだ。


 こいつは益々もってヤバイぜ……。



「そして! 見てくれたまえこの鎧を! これはオーダー品なんだ。他の誰も着ることができない僕専用の鎧なんだよ!」


「確かにそれは他のやつじゃ着れないな」


 ザコーダは剣の話に満足したのか、次は鎧の話へと突入する。



 特注でなければ不可能な腹部がポッコリ膨らんだ部分やトゲトゲした外見からして、誰も装備したがらないだろう。その艶やかに光るトゲトゲアーマーを指差しながら自慢げに不安定なポーズを取るザコーダ。


 レガシーとチンピランは二人で話しているし、ここは俺が頑張って話を聞かないといけないところだ。


 頑張れ俺!


「しかも、これも魔力コーティングしてあるんだ。だから細かい傷くらいなら修復しちゃうんだよ! 凄いだろう! これならドラゴンの炎もへっちゃらさ!」


「確かに凄いな」


 ザコーダの言っていることが本当なら剣も鎧も一級品なのだろう。


 だが、その装備の性能を知る機会に恵まれていないので、本当かどうかは眉唾だ。



 中二設定なら高性能とは名ばかりのダンボール製ということもありえる。


 金は持っているようだし、見た目からはどちらなのか全く判断ができない。


 目隠しして百万のワインと千円のワインを飲み比べている気分だ。


 このままいったら映す価値なしで消えそう。



「ふふん、名前はザコーダアーマーエックスって言うんだ。素晴らしいと思わないかい?」


「それは凄いな」


 鎧にまで名前があった。



 エックスっていうのはやはり肩から胸部にかけてトゲトゲギザギザしたやつがバッテンを描くようについているからだろうか。


 酒が進んできたせいか、段々どうでもよくなってきたので相づちが雑になってくる。


「君、さっきから僕の話をちゃんと聞いてるのかい!?」


「ああ、確かに凄いな」


 ちゃんと凄いことは分かった。


 ザコーダが声を荒らげていたが何が不満なのだろうか。



 ご立腹のザコーダから視線をそらしながら酒を飲んでいるとチンピランが視界に入る。


 さっきからあまり酒が進んでいないようだが、飲めないタイプなのだろうか。



「って、チンピランは飲んでるか? お前が払うんだから、しっかり飲み食いしといた方が得だぞ?」


 ザコーダをやり過ごすため、深刻な表情のチンピランに声をかける。


 ここに居るのは俺も含めて全員遠慮なし集団なので本当にちゃんと飲み食いしておいた方がいいと思うんだが……。


 酒が飲めない奴と飲みに行っても割り勘にする男……、それがこの俺。


「ああ、大丈夫だ。酒は明日まで引っ張りたくないから控えてるんだ」


「そうか。まあいいけどさ」


 どうやらチンピランは明日に備えて酒の量を控えているようだった。



 だが俺は昼まで寝るつもりなので遠慮なしにバンバン飲んでる。


 車で来た奴の前で浴びるように飲んだら首を絞められたことがあったが、チンピランはその辺大丈夫だろうか。



 そんなことを考えながらもバンバン呑む。


 明日を気にしなくていいときに手加減して呑む理由がない。



(悪いな、チンピラン)


 心の中でチンピランに詫びつつもガバガバ飲む。


 そんな中、俯きがちだったチンピランが深刻そうな表情で口を開く。



「俺は明日タカイ山脈に行かなきゃ行けないんだ。山に着きさえすれば何とか……」


「へぇ、依頼とかか?」


 会ったときからブツブツ言っていたが目的地はタカイ山脈らしい。


 ギルドでそれ系の依頼でも受けたのだろうか。



「いや、違う。だが急ぎなんだ」


「そうか、それなら今日は早めに休んで体力温存しておいた方がいいかもな」


「ああ、そうだな。待っていてくれ……、すぐ行く」



「待ち合わせなのか?」


「そんなところさ」


 ちゃんと目的を話してくれないのでどうにも気になるが、話したくないなら仕方ないだろう。


 というか、タカイ山脈ってことは俺達と同じで国外逃亡を図っているのだろうか。



 見た目も俺達よりよっぽど悪人面してるし、案外そうなのかもしれない。


 まあ、“奇遇だな! 俺達も国外へ逃げるためにタカイ山脈へ行く途中なんだ”とは言えないので、ここはあまり深く聞かない方がいいかもしれない。



 視線を感じてそちらを見ればレガシーが“しゃべるなよ”って面で俺をじっと見ていた。


「分かってるって」


「ならいいさ」


 俺の言葉を聞いて納得したのか酒を煽るレガシー。


 …………


「はい、お待たせ! ご注文の品だよ!」



 俺達に小さな沈黙が生まれた瞬間を狙ったかのように店員のおばちゃんが人数分の食事を器用に持って俺達のテーブルへとやってくる。


 混雑しているせいか手馴れた動作で素早く料理を並べ終えると足早に奥へと帰っていった。



「お、来た来た」


 並べられた料理に視線を落とす俺。



「腹減ってたんだよ〜」


「フフッ、たまにはこういう大衆料理もいいね!」


「あそこで迷わなければ今頃着いていたのに……ッ」


 チンピラン以外は目の前の料理に釘付けといった感じだ。



 今回注文したのは皆同じ物でハンバーグ、サラダ、ライスもしくはパン、ポテトフライにデザートのブドウだ。呑みに着た一面もあるので全員で取り分ける料理にしてもよかったのだが、何分ずっと野宿続きだったので皆ちゃんとした物を食べたかったというのもあって一人ずつの注文となった。


「よし、食うぜ……」


 俺はハンバーグに箸を刺そうと近づける。


 フォークとナイフがあったが無心でがっつり食いたかったので、わざわざ箸を出した。


 お上品に切り分けてる場合じゃない。


 ……かっこみたいんだ!


 ハンバーグが載せられた器は石焼のプレートか鉄板なのか熱をもっているせいで、未だにジュウジュウと食欲をそそる音を立て続けている。


 ジュウジュウという音が出るということは水分が飛んでいるわけで、肉の焼ける香ばしい香りが湯気となって俺の鼻腔に侵入してくる。


 俺は肉の焼ける旨そうな匂いをかいで一時停止してしまっていた体を再度起動し、箸をハンバーグへと差し込む。するとしっかりとした弾力があるせいか一瞬弾かれてしまう。


 これはもしかして固いのかと疑いつつも少し力を強めて差し入れると、表面の弾力とは裏腹に中へ進むと一気に下部まで到達しそうなほど柔らかかった。


 そんな一瞬の出来事に気を取られていると、ぷしゅっ! と小さな音とともに肉汁が噴き出した。



 だが俺はそんなことなど気にせず、箸でハンバーグを割り分け、一口サイズにする。すると断面からじゅわっと肉汁が更に溢れ出る。


 ゴクリと唾を飲み込みながら割り分けたハンバーグを箸でつまむと軽くソースを絡めた。後は口に運ぶだけだと持ち上げると、またもや肉汁がしたたり落ちる。


 俺ははやる気持ちを抑えつつ、落とさないようゆっくりと口元へと運ぶ。


 冷めないようにした器に載っていたので火傷しないようにと少し息を吹きかけた後、口の中へ放り込んだ。


 咀嚼するとプリプリとした弾力が歯を伝って顎に伝わる。そしてかみ締める度に肉汁がじわりと溢れ出る。



 これは………………。


 旨い!


 どうやら繋ぎなどはほとんど使っておらず、肉の味を楽しむように作られたハンバーグのようだ。


 だが絶妙にこねてうまく空気が抜いてあるせいか、肉のみでボソボソしているといった感じはなく、柔らかさや弾力もしっかりとある。



 肉の弾力と旨味がしっかりと感じられ、脂が濃厚な味をぐっと引き立てる。


 これだけだとこってりしていて後味がしつこいと感じる人もいるかもしれないが、そこに柑橘系の酸味が効いたソースが肉の濃厚さを洗い流し、味を引き締めてくれる。


 口の中がさっぱりしたのでつい次の一口に手が伸びる……。


 そんな味だ。



 そしてこの店ではパンかライスを選べた。


 俺はもちろんライスを選択し、肉を口に放り込んだ後はすかさず米をかきこんでいる。肉と米の合間にサラダを挟み、まるでルーチンワークのように無言で黙々と食い続ける。


 ここで会話に花を咲かせるなど野暮な話だ。


 俺はハンバーグとの対話に忙しい。余分なことは全て取り去り、肉を全身で味わう。


 ……これぞまさしく宇宙!


「おい……。また食い物に宇宙を感じるとか考えてるんじゃないだろうな?」


 レガシーが酒をちびちびやりながら俺を半眼で見据えてくる。


 まさか……俺の心を読んだ……、だと……!?


「顔だよ、顔。そのダウン系やったみたいな顔で飯食うのやめろよな? チンピランとザコーダが引いてるだろ」


 俺が驚愕の表情をしていると、レガシーが酷いことを言ってくる。


 この人酷いんです!


「すまん。つい旨くて……」


 普通に旨そうに飯食っていたら謝罪するはめになる不思議。



 しばらくしてハンバーグ達との会話も終わり、今は追加で注文したフライドポテトとブドウが載った大皿二枚が残るのみとなった。



 この組み合わせも案外いい。


 油っぽいが塩気と食感が病み付きになるフライドポテト。口の中をさっぱりさせたければ隣にある少し酸味があるブドウをツルンと食べる。


 酒を飲みながらぼちぼち食うには丁度いい。



「中々美味しかったね! 場末の酒場料理としては!」


「おい! 大声で何言ってるだよ! いくらなんでも失礼だろうが!」


 酒も進み、上機嫌のザコーダは自分流に最上位の褒め言葉を表現したつもりなのだろうが、俺はそれを聞いて青ざめる。


 ザコーダは一々声が大きいのでヒヤッとしたが、店の人は忙しいようで気づいてはいなかった。


 こんな荒くれ者だらけの酒場で大声を出すのはほんと止めて欲しい。


 こういうところで絡まれるのってある意味定番だし、ザコーダにはもう少し大人しくしていてほしいものだ。


「こうやって酒場で飲むのも久しぶりだったな……」


 そんな上機嫌のザコーダなど気にせずにしみじみと呟くレガシー。


 こいつは投獄される前も逃げ回っていたんだろうし、こういう落ち着いた雰囲気での食事は久しぶりなのだろう。若干騒々しいが……。


「そろそろ出たいんだがいいか? 明日に備えて休みたいんだ」


 俺達がそれぞれいい気分に浸っていると、チンピランがお開きにしたいと切り出してきた。


 明日は何やら忙しくするようだし、あまりダラダラ長居してしまうのも悪いだろう。



「おう、出るか。ごちそうさん!」


「なんなら僕が払おうか?」


「旨い酒だった……」


 俺の言葉を受けて全員席を立つ。それにしてもザコーダは妙に金払いがいい。


 普段からよく奢ったりしているのだろうか。



 俺も元の世界でそんな上司や先輩に恵まれたかった……。


 勉強させてやってるんだからお前が払えと言われたときは耳を疑ったものだ。


 そしてレガシーもこの店の料理を堪能したようで、満足そうにしていた。



「いや、助けてもらったお礼だから俺が払うよ。先に店を出ていてくれ」


 チンピランはザコーダの提案を断ると支払いへと向かっていった。


 俺達はその背を見送ると一旦店の外へと出る。



「待たせたな……。そうだ、こいつが頼まれた討伐報酬だ。一割抜いてあるからそのまま受け取ってくれ。金額の詳細を確認するか?」


「おう、ありがとうよ。確認は……。ん、大体ありそうだし、いいわ」


 俺達が店の前で待っていると支払いを済ませたチンピランが合流してくる。


 そして思い出したかのように俺が頼んでおいた討伐報酬が入った小さな袋を懐から出して渡してくれた。


 俺はそれを受け取ると袋を開けて目算で勘定して懐にしまう。


 まあ、軽く見た感じ、あっているだろう。



「雑だな……。そんなやり方だと騙されるぞ?」


「いや、俺だって人は選ぶよ。お前は信用できるって思っただけさ」


「そうかよ……」


 わざわざ助けられたことに恩を感じて飯を奢ってくれた上に頼みごとを聞いてくれる奴だ、十分信用できると思う。ここまで話していても特に問題を感じるような行動や発言もなかったし、大丈夫だろうと判断した。


 俺のそんな言葉を受けて頬をかきながら顔をそらすチンピラン。


 これが美少女なら破壊力のある仕草なのかもしれないが、スキンヘッドで眉なしだと別方向に破壊力が抜群だ。



「じゃあ、僕がお金を払う宿へ行こうか!」


 全員揃うと今度はザコーダが先頭に立ち、大手を振って宿へと向かい出す。



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