将来の相談ー1
朝食を食べ終え朝の支度を済ましたが、なにぶん家は早起きなので登校まで少し余裕があった。
なので、母さんにばれないように父さんに耳打ちして散歩に出ることにした。
わざわざ家から離れてから合流するぐらいには二人とも母さんを恐れている。つまり、バレたら怒られる。
「なあ、クリスがいつになったらわしのこと許してくれるかわかるか?」
「母さん次第だからわからないけど明日には許すかもよ」
他愛ない(?)話をしながら裏山の脇を歩く。道路はどんなに小さな村にも一本は舗装された道が通っているが、逆に村の外れにはまだまだ たくさん土がむき出しの道が残っている。
草木についた露に裾を濡らしながら聞きたかったことを口にした。
「父さんは俺ぐらいの時の夢ってなんだった?」
「ん?……あぁ、そういうことか」
一瞬不思議そうな顔をしたがすぐに納得したようだった。
「将来のことで迷っていると、そういうことかルドルフ?」
「そんな感じ」
「わしの小さな頃か。ルドルフと同じ八才の時にはまだなんにも考えてなかったかもしれん」
「参考にならない」
ふぅ、とため息をつくと父さんは不満そうな顔をした。
「散歩に誘っておいてその言い分は無いだろう」
「でもそうでしょ」
「ううむ……わしの小さい頃小さい頃……。」
なにやら考え込んだ後で、思い出したかのように口を開いた。
「女の子にモテたかったんだった」
「は?」
将来の話をしてるのにモテたかったって全然将来関係ないじゃん。
「いや、そう不満そうな表情をするな。話には続きがある」
そう言って父さんは続けた。
「村の東の端にガラン爺さんがいるだろ?昔はよく村の子供の面倒をみていたんだ」
ガラン爺さんは六十才を越えた老人であるがその快活さと力強さは衰えることを知らず、未だに力仕事を平気な顔でしている方だ。
村のみんなが慕っているのは知っているが昔の話を聞いたのは初めてだった。
「ガラン爺さんに、俺が女の子にモテたいって話をしたんだよ。そうしたらガラン爺さんが、『それなら騎士になれって』って言ったんだよ」
「どういうこと?」
「ガラン爺さんは昔、騎士として王都で士官していたらしい」
「そうだったんだ」
そういわれると、騎士になるぐらいだからあの力強さにも説明がつくかな。
「で、あの爺さん。王都で落とした女の話をしてきた。」
「スゲーなそれ」
「本当にな。毎日のように聞きに言ったが話がつきることはなかった。」
「……父さんもスゴいな」
八才で毎日のように女を落とした話を聞きに行くって変わってるだろ。
「ルドルフは興味ないのか?」
「いや、そういうわけではないけど……」
ある。大いにある。父さんの立場だったら俺も毎日のように聞きに行ってる。父さんにそこまで言うのは恥ずかしいから言わないけど。