リック兄とアド兄
朝食のいい匂いがする。ソーセージを焼いた油の匂いだ。意識すると腹の虫が鳴り出した。
リビングの席につくとスクランブルエッグとソーセージ、そしてパンが出ていた。
「母さん、もう食べていい?」
「まだだめに決まってるでしょ。リックとアドが帰ってくるのを待ちなさい。もうすぐに来るから」
リックとアドは長兄リチャードと次兄アドウィンのことだ。二人とも朝は畑の仕事に出ている。といってもリック兄は研究大好物の変人で農家は朝の手伝いだけだしあと数ヵ月もしたら王都の大学に行くらしい。農家は真面目で実直なアド兄が継ぐらしい。
「帰ってきたぞ、ルドルフ。お待ちかねリチャード兄さんがな!」
「ただいま、ルドルフ」
「お帰り、リック兄、アド兄。ご飯食べよう」
俺は早く朝御飯が食べたいんだ。
「ルドルフ。俺は悲しいぞ。春には家を出るから寂しくならないように思い出を作ろうとボケても扱いがアドと同じとは。しっかりとボケを拾ってくれ。疲れているのか?それなら数日前に作った特製ポーションがある。それをグビッと飲めばたちまち元気になれるぞ」
「リック兄のボケはそもそも拾いずらいし疲れてない。それにそのポーションって不味すぎて効果があっても自分ですら飲めなかったやつでしょ?」
「いや、不味くて飲めなかったのは美味しくする努力をした方だ。今残っているのはその努力すらしてない方だけだ」
「余計の嫌だよ!」
「はっはっは!やはりルドルフのツッコミはいいな!」
「朝から疲れるからやめてよ…………」
「疲れたって?待ってろ。今ポーション持ってくる」
「やめて!はやくご飯食べないと!」
あわててリック兄を捕まえて席につける。研究の成果はなかなかのものらしいが、人が飲食をするものを作る才能は皆無なのだ。はやくいい嫁さん見つけないと自分の作ったもので死にそうだ。
「ルドルフの言う通りだよ、リック兄。僕達だって畑仕事でお腹すいてるし温かいうちに食べないと美味しくなくなるよ」
やはりアド兄は家の良心だ。こんな家で落ち着いていられるアド兄はもしかしたら悟りを開いているのかもしれない。それともやはり、彼女持ちというのはそれだけ精神年齢が高いということなのだろうか。
因みにアド兄の彼女は学校が同じだったマーシャさん。小学校の時から同じのいわゆる幼馴染み。やっぱりすげえよ、アド兄。まだ十五才なのに幼馴染みの彼女持ちで婚約者ってなんなんだよ。