ミル姉
「ルドルフ、そろそろ起きなさい」
「……あと五分」
寝起きの布団の中というのは至高の場所であり時間だ。少しでも長く過ごしたいのが人情ってもんだ。
「ほう、姉である私に歯向かうとはね」
「…………Zzz 」
「なら、悪夢を見せてあげるわ。…………『男達の花園で薔薇が散る』一巻第四章~散らされるルドルフの華~より引用。『ルドルフは嬌声をあげた。本来触れられるはずもない場所によりにもよって同性に弄ばれている。忌避感と幸福感。不快感と快感が入り交じり言葉にはできないが声はあふれでてくる。そのままルドルフは……」
「やめてくれ!」
俺は飛び起きた。同じ名前の人間が男同士でなにやらしてる話など聞きたくない。
「あら、やっと起きたの?」
「……おはよう、ミル姉」
「おはよう、ルドルフ。早く朝の支度しなさい。」
「……なあ、ミル姉」
「なぁに?」
「その起こし方やめない?」
「嫌よ。この方法が一番起きるのが早いしなにより私の趣味にあってるのだもの。朝から堂々と音読できて最高の気分だわ。」
この姉には敵わない。変態度も含めて。
朝からうちオーレ家以外では無いであろう、そしてオーレ家ではジャブ程度の攻撃で目が覚める。
「さっさとしなさい。農家の仕事の方は三男だからって少なくして貰ってるんでしょ。そのうち来る一人立ちまでに手に職着けないと大変よ」
「分かってるって。学校に行く用意するよ」
布団からでて食事を取りに行く。階段を降りながら昨日の授業の話を思い出した。
ほんの五十年前までは平屋しかなく、二階があるのは貴族だけ。夏場に部屋を涼しくしてくれる室内調温器は貴族でも限られたいくつかの家しか所持してなかったとか。
「信じられないよな」
こんな快適な世の中にしてくれた王家には足向けて寝れないな。王都浮いてるから向けようがないけど。
馬鹿なことを考えながらリビングへ向かった。
ミル姉の名前の元ネタは包丁持って襲ってくる露出度の高いあの方です。