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お久しぶりです、ごめんなさい。だってモンハンが面白いんだもの。
何はともあれ、まだまだ続きます。G級銀レウス素材ェ……
――side ルイン=カーライン
「はっ、はっ……」
「待てぇーー!!」
「待てと言われて待つかよバカヤロウッ!!」
懐から万が一のために作っておいた煙玉を取り出し、周囲の状況を把握した上で自分の進行方向へと炸裂させ、火薬の炸裂音が響く間に横手の茂みに潜り込む。普通なら茂みに入った瞬間に音が響くが、煙玉とその炸裂音のお蔭で上手くカモフラージュ出来ている筈。
後は、逃げているという状況を逆手に取ってその場でじっとしていれば……。
「うわっ、煙がっ!!」
「チッ、余計な時間稼ぎをしやがって……」
「他の生徒に見つけられたら厄介だ、とりあえず追いかけるぞっ!!」
状況的な焦りも合わさって、俺を追っていた奴らをこんな感じでやり過ごす事が出来る訳だ。
何度も使える手ではないがな。
「はぁ、はぁ……くそっ」
茂みの中というかなり居心地の悪い場所ではあるが、ひとまずの休息を手に入れた俺は、必要以上に音を立てないように頭の蜘蛛の巣を払い、自分の持っている道具と体の傷を確認。
道具の数の確認は勿論だが、何よりも戦闘による傷などで動作不良を起こされたら堪らない。
「煙玉は……あと3個。糸が10メートル分。投擲用の短剣が5本に携帯食料、応急処置用の道具が少しか」
ちなみにこの糸、タラントゥスという蜘蛛の魔物の糸を処理した物で軽い上に丈夫という優れものだ。まぁ、生物から出来ているため熱に弱いがそこは仕方ない。そもそも、糸を態々燃やされるような事態はそうそう起こらない筈……だよな?
「しかし、この道具一式と双剣、こんな在り合わせ感の強い装備で生徒共から逃げながら教官を相手にしなきゃならんとは……」
多くの生徒が楽しみにしていた実地演習。
俺は、クラスを問わず様々な生徒から狙い撃ちにされていた(泣)。
そもそも、なぜこんな事になっているのか?
その答えを得るには少しばかり時間を遡る必要がある。
――数時間前、実地演習当日の学園近郊の森の入り口にて――
「よっし、今日の実技で高得点取って来年はAクラス目指すぜ!」
「お前まだCクラスだろー」
「も、目標は高く持つべきさ!」
「課題ってどんなのでるのかな?」
「難しいのもあるけど、点数高いみたいだから楽しみ~」
「はぁ……だるいなー……」
多くの生徒が実地演習の話題で盛り上がる中、俺はネガティヴまっしぐらな心境だった。
理由? 身体能力一般人な俺からすれば、どんな課題でも命懸けだからだ。
たとえば普通の生徒が楽に倒せる魔物にスライムがいるが、コイツ等は体の殆どが液体のような物になっているので、基本的に物理攻撃というより衝撃自体に対して強い耐性を持っている。もしも魔法の類が使えない俺が、策を立てずに正面突破なんぞしたらよくて大怪我、最悪取り込まれて餌食になってしまう。
武器を持っていても、魔法の無い人間というのは結局そんなモンである。
ところで、この課外演習だが、基本的な流れは毎年同じようになっていて結構簡単だ。
まず集合場所である森の入り口に各クラスに分かれて集合し、そこで課題を与えられる。課題は基本的に各クラスの難易度に合わせた物になっていて、基本的にはクリアが可能な仕組みになっている。あとは終了時刻までに課題を終えていれば合格。時間も自由なので、楽な課題を言い渡された場合はかなり楽に終わる。
この課題はくじ引きによって決まるため不正の余地はないが、ごく稀に鬼畜な難易度の課題を振られる時がある。さっき基本的にと念押ししたのはこのためだ。人呼んで無茶ブリ。
過去の例によると、武器を捨てて素手で魔物と戦え、10秒に1回ギャグ披露しながら半日過ごせだの……正直、碌なモンがない。まぁ、それを引く確率が低いってのが唯一の救いかもしれない。
さて、そんな課題であるが俺は今回碌な目に遭わない気がしている。
理由は簡単だ。俺の課題は抽選で決まった訳ではないから。これに尽きる。
もっと具体的に言えば、
俺「おはようございます」
教師「おや、早いですね。やる気は十分という事ですか?」
俺「はい」
教師「よろしい。君には学園長から直々に課題を与えられていましてね……」
俺「えっ?」
教師「はい、どうぞ。これが君の課題になります」
俺「……」
という事があった訳だ。ちなみにこの教師はダート教諭。憎き実技教諭である。
実際、学園長云々についてはかなり怪しい。というか、嘘なんだろうなと思ってる。
もうすでにヤバい前フリは十分といった所で。コレ、ホントに開かなきゃならんのですかね……。
「……ただまぁ、確認しないことには始まらんよなぁ」
ウダウダ言ってもどうしようもねぇ。
心の準備は十分。もうナニガアッテモオドロキマセンヨ?
つー訳で、れっつオープンッ!!
≪課題≫
以下の条件を達成せよ。
・教師を打倒すること。ただし、教師の方から降参する場合も勝利とする。
・生徒から逃げきり、倒されることの無いようにすること。尚、降参するとペナルティが課せられる。
「……ハイ?」
全俺が泣いた……。
無茶ブリである。どう考えても無理ゲーである。つーか、教師と戦ってその上で生徒から逃げろって……。
「い、いや、まだだ。まだ大丈夫だ。最悪生徒から逃げきれば大丈夫。そもそも、生徒側に俺を狙う理由が薄いし、そんな事してる暇があれば自分の課題の達成を目指す筈」
そう、その通りだ。
例えば他の生徒が俺の課題の内容を知っていた場合、嬉々として襲ってくるかもしれん。だが、今の状態でこの課題の内容を知っているのは俺を除けば教師のみ。
教師自身が生徒とコンタクトを取ることは出来ないので、怪しまれずに教師が情報を流せるのはどんなに早くても最初の生徒が課題を終わらせてからの筈。
「全員注目ー!!」
と、そこでその場の全員に呼び出しがかかる。何事かとみてみれば、ウチの担任のシアノ教諭と学園長が並んでいた。
が、学園長? ……なんか嫌~な予感がするなぁ。
「これより、今年度最初の実地演習を始めます。まず、演習自体の基本的なルールの解説ですが……」
そうして、お馴染みの演習についての流れとルールが発表される。
今年も事前に調べていた昨年のルールと大きな変更点は無いようだったが……。
「……以上ですが、今回は学園長より特別ルールが設定されます」
……えっ? トクベツルールですと?
後になって振り返ると、俺はこの時全力で逃げるべきだったんだと思う。
学園長からの特別ルール。そして俺の手元にある学園長直々の課題……。冷静に考えれば分かった筈だ。
まぁ、後悔なんて先に立つもんじゃねぇけど。
「コホン、多くの者にとっては今年度の始業の式以来だろう、学園長のクラウス=ハドラーだ。私が時期冒険者の育成のために教鞭を執ってから長いと言える程かは分からないが、短くない年月が経った。今となっては大侵攻も既に過去の話となっており、皆の中にも緊張を欠く者もいるかもしれん。無論、悲劇のない平和な世は素晴らしい物。だが、諸君らは冒険者、未知なるものを追い求める者達を目指している筈だ。既存の形骸化した演習では、平和ボケも進んでしまう一方だろう。そこで、今回は面白い趣向を凝らしてみた」
そういって、パチンッと指を一つ鳴らす学園長。
その直後、俺の持っていた課題の用紙が赤く光り、変わった紋章が浮かび上がった。
いや、よく見れば俺の他にも数名赤い用紙を持っている生徒がいる。
「……見えるだろうか。これは私の特製の課題で、皆に分かるように赤く発光させている。今回の特別ルールは単純なもの。この課題用紙を持っている彼らを捕まえ、その手の用紙を破り捨てる、ただそれだけだ。尚、もしもこれを達成した者があれば、その者を即座に合格とする」
「「……」」
学園長の発表に、その場は静まり返っていた。無論、それは当事者たる俺とて例外ではない。
もっとも、俺の場合は思考停止していたと言った方が正しいだろうが。
特定の生徒(俺を含む)を捕まえたら無条件で課題合格?
え? 何ソレ?
周囲には何人かの生徒がチラチラとこちらの様子を伺っているのが見える。
え、えーっと……まず、生徒たちは基本的に課題をクリアしなければならない。だけど、目の前には課題(魔物)よりも明らかに弱くて、倒しやすそうな獲物(俺)が居る訳で。。。
「……では、これより実地演習を始める。赤い用紙を渡された者たちよ――頑張って逃げ切ってくれたまえ」
――ヤバい!!
「「うおぉぉぉぉ!!」」
「あそこに一人いるぞッ!!」「落ちこぼれのカーラインだッ!! 狙えーー!!」
「け、煙ひゃま!!」
学園長の開始の合図とともに、周囲の生徒が俺に向かって雪崩込んでくる。
その様子を見るまでもなく、すでに手元に用意していた煙玉を起爆。煙幕に紛れて森の中に大急ぎで逃げ込んだ。
え? 噛んでるって? 知らんがな。
―――side リーナ=フロイス
「……えっと」
「……皆まで言わなくてもいいよ、リーナ」
「なんと情けない……」
実地演習が開始した瞬間、瞬く間にその場はカオスな状態となってしまい、私と隣にいたフレア、ミレイはその場の光景絶句していた。別に赤紙持ちの生徒が逃げているから、という訳でもない。一応、半分は逃げ切れたみたいだけど……。
「なんというか、人間の醜さが露呈した瞬間という感じがしますわね」
「う、うん……」
「死ねぇ!!」
「この野郎、手柄を横取りしてんじゃねぇ!!」
「ヨコセヤコラ!!!」
逃げ切れなかった数名(既に倒されている)の持っていた赤紙を狙って壮絶な奪い合いが発生していのだ。
いや、もう……手にした次の瞬間には横合いから攻撃される有様で見ていて酷い。
「え、えっと……私たちの課題はなんだろ」
「アレには手を出さない方が無難ですわね」
とりあえず、コロシアムと化している区画から離れてそれぞれの課題を確認してみることに。
「えっと、ボクのは……『魔物を20体以上討伐、討伐した魔物のランクと数に応じて評価する』うわぁ、面倒なの引いちゃったなぁ」
「私は『指定された薬草を採取してくること』……討伐系の方が楽なのですけれど、仕方ありませんわね」
「えっと、私のは……」
2人が引いたのを見て、私も意を決して課題を見てみることに。
簡単なのを引きますようにっ……ッ!!!
「……(泣)」
「リ、リーナ?」
「どうしましたの?」
課題の内容は私の想像の斜め上を行く物だった……。




