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R E D - D I S K 0 3  作者: awa
CHAPTER 12 * SENSATION HEART
55/139

* secret and promise

 「誕生日ケーキに灯すキャンドルは、一本多くするのよ」

 「どうして?」

 「パパとママの他にも、お祝いしてくれてる人がいるかもしれないから。その人のぶんよ」

 「なにそれ?」

 「決まりごとはもうひとつあるよ、イザベラ」

 「なに? パパ」

 「ケーキのキャンドルは、一気にぜんぶ吹き消しちゃダメなんだ」

 「どうして? アニタは、いちどでぜんぶけさなきゃって言ってた」

 「一度にぜんぶ吹き消すと、願い事も一緒に吹き飛んじゃうんだよ。それに、願い事がひとつしかできない。大切なのは、キャンドルひとつひとつに、願い事をひとつずつ込めて火をつけること。叶いますようにって祈りながら、その火をひとつひとつ吹き消すこと。自分の息で未来に送るんだ。キャンドルの火がちゃんとひとつずつ消えれば、未来が願い事を受けつけたって証拠になるんだよ」

 「あら。素敵な話ね、ジョニー。あなたってそんなにロマンチストだったの?」

 「受け売りだよ。昔あいつが言ってた」

 「そんなの初耳だわ」

 「あいつも覚えてなかったさ。酔った勢いで言ってたんだから。そもそもあいつは、誕生日のケーキにキャンドルを挿すなんてことすらしないし」

 「ケーキを食べる時はいつも手掴みだったものね。ダイナーでケーキにキャンドルを挿して誕生日を祝ってるカップルを見かけた時、それで煙草の火をつけてたし」

 「ああ、あったな。しかも詫びにって、ケーキにその煙草を挿した」

 「あれには笑ったわ。あの時のあの客の顔。けっきょくチョコレートとイチゴを奪ってたし」

 「あのカップルは悲惨だったけど、ある意味あれだけで済んでよかった気もする」

 「よくわかんない!」

 「ああ。ごめんよ、イザベラ。この話は内緒だ。キャンドルの話も、誰にもしちゃいけない。うちだけの決まり事だから」

 「アニタにも教えちゃだめ?」

 「そうだな、教えないほうがいい。教えたら、君の願い事が叶いにくくなるかもしれないよ。神様ってのは、とんでもなく意地悪だからな」

 「あなたの言い方もじゅうぶん意地悪よ、ジョニー?」

 「そうかも。でもイザベラ、これは内緒だ。パパと約束、できる?」

 「できるわ。だってママが、約束は絶対守りなさいって言うから」

 「そうだよ。約束は破るもんじゃない。できないとわかってるなら、できる自信がないなら、そんな約束はしないほうがいい」

 「約束する。私は秘密を守る」

 「いい子だ──おいで。六歳の誕生日おめでとう、イザベラ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「ねえママ」

 「なあに?」

 「“あいつ”ってだれ?」

 「“あいつ”?」

 「パパとママがときどきはなすじゃない。“あいつ”」

 「ああ──パパとママの友達の話よ」

 「なまえはないの?」

 「ないわ」

 「どうして? なまえはだれにだってあるでしょ? 犬にだってなまえがあるじゃない」

 「──“S”、よ」

 「エス?」

 「ねえ、イザベラ。“S”の話も、“あいつ”の話も、誰にもしちゃダメよ」

 「これも“ひみつ”?」

 「そう、“秘密”」

 「なんだか“ひみつ”ばっかり」

 「そうね。でも“秘密”なの。誰に言ってもわからないことだから」

 「ふーん──」

 「またママと“約束”、してくれる? “S”のことも“あいつ”のことも、誰にも内緒にするって。このことはぜんぶ忘れるって、“約束”してくれる?」

 「──する! “やくそく”する!」

 「ありがとう。大好きよ、イザベラ」

 「わたしもだいすき、ママ。パパもだいすき!」

 「それはパパに直接言ってあげてね」

 「じゃあきょうはパパがかえってくるまで、おきててもいい?」

 「まあ。そうね、ちょっと早く帰ってきてって、電話してみようか」

 「する!」

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