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R E D - D I S K 0 3  作者: awa
CHAPTER 11 * APOLOGY HEART
53/139

○ Where The Lines Overlap

  約束をちょうだいよ

  それが証明になるから

  ベルを鳴らそうよ

  世界中に

  見逃さないで

  寂しくなるけど

  だいじょうぶ

  だってまた会えるから

  ラインが重なる時

  ラインが重なったところで


  私たちはほんの一握りの夢

  いつか終わりがくることを知ってる

  だからせめてその時までうたい続けよう

  その時まではうたい続けよう


  たくさんの笑顔と涙

  数えていた

  幸せを掴むまであと何歩必要か

  無力な自分を責めたりもして

  でもそんな日々を振り返った時

  きっと多くのことが見えるはず

  今以上に多くのことが見えるはず


  私たちはほんの一握りの夢

  いつか終わりがくることを知ってる

  だからせめてその時までうたい続けよう

  その時まではうたい続けよう


  あなたがどこかでこの歌をうたうのを 私も聴いてる

  その時はちゃんとうたい返すよ

  あなたがひとりでこの歌をうたうのを 私も聴いてる

  その時はちゃんとうたい返すから


  私たちはほんの一握りの夢

  いつか終わりがくることを知ってる

  だからせめてその時までうたい続けよう

  その時まではうたい続けよう



 “Where The Lines Overlap”──文化祭のPVで、学年のアルバムとして最後に使う曲だ。卒業をテーマにして作られたかは知らないが、卒業ソングとしてそれなりに人気のある歌。離れても、いつだってどこにいたって、“想い”に応えるという歌。とてもシンプルな曲。

 ストーリ性は特にないので、この曲にどんな写真や動画を使うかというのは、特に決めていない。ただおもしろおかしく撮った写真を使うことにしているだけだ。喧嘩だのなんだのはこの曲には合わないし、アルバムとして残すのなら、なおさら入れるべきではないと思っていた。でも“変化”を持たせれば、それだって入れられる。

 幸い“編集”という意味では、この曲にはまだ手をつけていない。あと二日、学校にいるあいだに使用する写真を新しく撮ることは、不可能ではないだろう。

 CDコンポで流していた音楽を停めて、新しく撮る写真のことを考えながらベッドの上でうとうとしていると、階下でドアがノックされる音が聞こえ、続いて階段を登ってくる音がした。

 「帰ったわよ」と祖母が言った。こちらに来る。「あの子、かなり泣いてたわ」

 私はあくびをしながら起き上がり、ベッドの端に腰かけた。

 「涙なんかアテにならないでしょ? 五十人近くの人間にあそこまでさせて、やっと気づくような奴なんだから」

 エデとは本当に仲がよくないこと、今までの嫌味の数々もやんわりと、祖母に話してある。

 「まあまあ。厳しいのね」祖母は苦笑いながら私の右隣に腰をおろした。「ひとつ訊いてもいい?」

 「なに?」

 「あやまられるのが苦手っていうのはわかるの。でも、どうしてそれを聞くことすらしないの? もしあなたが応じてたとして、彼女が素直にあやまるかはわからない。もしかしたら本心じゃないかもしれない。でもそれにしたって、あやまってもらったほうが、ちょっとはすっきりするんじゃないの? 相当疲れてたじゃない」

 私は首を横に振った。

 「気にしても怒ってもないけど、あやまれば済むってものでもない。それにあやまらせたら、関係が微妙に変わるでしょ? 少なくとも相手は、許してもらえたと思いこむ。気が緩んで、今までとはちょっと違う、面倒な人間関係がはじまるかもしれない。それがイヤなの。私はこれからも、どうやったってエデと友達になんかなれない。数回遊んだサビナのことですらそう思ってる。自分の中にある、相手に対する印象だって変える気がないの。サビナはともかく、エデと朝“おはよう”なんて挨拶をかわす仲になんか、なりたくないし」

 彼女はまた苦笑った。

 「あなたは本当に頑固ね。話を聞く限り、彼女とそんな仲になるところなんて想像できないけど。ありえないって言いながら、そのありえない可能性まで考えてる」

 ふと、この頑固さはどこから来たのだろうと思った。だが考えると、考えたくない人間が浮かんでくるので、そんな疑問はすぐに頭の中から追い払った。

 「あやまることに意味なんかないと思ってるの」私は言った。アゼルも昔、そう言っていた。「やっぱり本心じゃないかもしれないし、仮に本心だったとしても、謝罪を聞いたとしても、受け入れられるか、許せるかって言われたら、無理なものは無理だもん。それに今回の件じゃ、私にあやまるっていうのは、昔のことをイジメだって言い張って、それを理由に今回のことも首謀者は私だって学校に訴えたことでしょ? 私はそれを気にしてない。校長たちに話を持ちだされて、思わず笑ったくらいなんだもん。もし今までの嫌味のことが含まれてるとしても、一言、二言あやまったところで、私が受けてきたストレスが消されるわけでもないし。なら意味ないじゃない」

 祖母は肩をすくませた。

 「まあ、それもそうね。でも」左手でこちらのの肩を抱き寄せると、私のマダーレッドの髪に、ほとんど白くなった髪を寄せた。「全員に、とは言わないわ。でもできるだけ、相手の謝罪は聞いてあげてちょうだい。受け入れろってことでも、赦せってことでもないの。

 ただね、たった一言“ごめんなさい”って言って、“もういいよ”って返されるだけでも、相手が前に進めること、あるのよ。もしかしたらあなたの言うとおり、相手が勘違いして、今までと違った関係になる可能性はあるけど──あなたはそうはなりたくないって、はっきりと態度に出したり口で言ったりもできるでしょう? もしそうなりたくないと思ったら、だけど。

 謝罪はね、あやまるほうにとっては、すごく勇気の要ることなの。あなたに意味がなくても、相手にとっては大きな意味を持つことがある。ぜんぶを突き放したりは、しないでちょうだい」

 今度は、二年前のことが蘇った。少なくとも約一年は、すっかり忘れていた気がする出来事のこと。

 まだ祖母との関係がぎこちなかった頃、キッチンで料理を手伝っていて、祖母の指から流れる血を見た私は、包丁で自分の指を切った。赤い血が、祖母と同じ赤い血が流れて、私は思わず泣きだした。私の手から包丁を取り上げた祖母も、同じように泣きだした。“ごめんね”と、何度もあやまりながら。

 その謝罪の意味を、私はけっきょく知らないままだ。今さら訊くに訊けない。

 だって、祖母が悪いはずがない。散々私に“人形”を演じさせたあげく、離婚してあっさりとこの家に放り込んだ冷血娘──私の母親の代わりにあやまったのかもしれないけれど、そんなことをされてもやはり、意味がない。少なくとも、私にとっては。

 ふとした思いつきで意味のないことをする時はあるけれど、意味がないとはっきりとわかっていながらそんなことをしたり、意味のないことをされるのはキライだ。

 「──努力する」

 それだけ答えると、祖母は私の頬にキスをした。

 「ありがとう。もうシャワー浴びたほうがいいんじゃない? うとうとしてたでしょう」

 眠い。「うん、そうする」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 部屋に戻ってベッドに横になろうとすると、ナイトテーブルの上で携帯電話の通知ランプが光っているのに気づいた。

 不在着信一件、ゼイン。

 またかと思いつつ、ベッドに寝転んで電話をかけなおした。

 そういえば、零時を過ぎるまでは眠らないほうがいいのだったか。すっかり忘れていたが、ナイルに誕生日のメールを送るという話があったのだ。明日の朝でもいい気がするけれど、どうなのだろう。

 今日はやたらと一日が長く感じられる。当然だ。いつもと変わらない一日だと思っていたのに、考えてみれば、朝っぱらから校長室に拉致された。わけのわからない話を持ちだされ、くだらない一件のことを知った。

 すべてを理解した昼休憩で、とんでもなく疲れた。せっかく早退したのに、ゲルトたちは家に来るわ、アニタとペトラが家に来るわ、エデ親子が来るわで、けっきょく疲れることばかりだった。放っておいてくれればいいのに。

 「もしもーし」

 突然声が聞こえ、私ははっとした。「もしもし?」

 「ああ、やっと聞こえた。電話とったのに無言だから、何事かと思ったわ」

 もしかしなくても、眠っていた気がする。「ごめん。なんかうとうとしてたっぽい」

 「電話かけといて寝てたっての? なにそのありえん状況」

 「疲れてるの」おそらくビールの飲みすぎもあるだろう。「で、なに?」

 「ああ──なんか、学校であったこと、聞いた。サビナから、ぜんぶ」

 「ぜんぶって?」

 「だから、エデのことだよ。シカトされてたとか、し返したとか。反省してるって言ったのにまたやった、ごめんなさいとか」

 ぜんぶ。「で?」

 「メインで関わった人間? まとめてお前に怒鳴られて、校長たちにも事情話して、エデとも仲直りしたってのも聞いた。別れたりはしてない。サビナは、さすがにもう愛想つかされてもしょうがない、みたいなこと言ってたけど──」

 「けど?」

 「別れてはない」ゼインは繰り返した。「けど──」

 「なに」

 「変なんだよ。それほど驚かなかったんだよ」彼は必死な様子で続けた。「そりゃもちろん、シカトされてたってところでは、うわーとか、女って怖えーとか、元気なかったのもあたりまえだとか、色々考えたよ。けどその、集団でシカトしたってところ? 聞いても、まえほどヒかなかった。なんで? オレ、やっぱサビナはそういう人間だって思いこんじゃってるわけ? サビナは実は改心してなくて、もう肯定?」

 なぜそれを私に訊くのか。

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