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R E D - D I S K 0 3  作者: awa
CHAPTER 10 * REVENGE HEART
49/139

* Unexpected Truth

 学年主任と一緒に校長室を出ると、ちょうどババコワ教諭とゲルハラ教諭が戻ってきたところだった。ババコワはこちらに疑わしげな表情を向けたものの、主事に促されてゲルハラと一緒に校長室へと入った。話を聞くためだと思われる。

 私は三年D組の教室へと向かい、クラスメイトには寝坊したと説明した。

 探るとは言ったものの、どうすればいいのだろう。男共に訊けばいいのかもしれないが、それではおおごとになる可能性がある。エデ親子や教諭たちにとっては、すでにおおごとなのかもしれないけれど。

 いくらエデと仲がいいと言っても、あの能天気なカルメーラが関わっているとは思えない。ハリエットもそういうタイプではないような気がする。だからといってサビナ──エデと喧嘩していたとしても、今さらあれを避ける──ようするにシカトということなのだろうが、そんなことをするとも思えない。

 カーリナだってそうだ。あれだけエデとべったりなのに、今さらなんの理由があってそんなことをするのだという話になる。一緒になってこれでもかというほど悪事を働き、私に嫌味を撒き散らしてきたのに。

 ならぺトラは? エデがマルコとつきあいはじめた時はともかく、三年になってからはそれほど、エデと一緒にいるところを見ない──気がする。アニタと同じクラスだから、彼女とつるむことのほうが多い。

 アニタならエデを無視するなんてこと、私と同じで日常的にやっているけれど、それはエデも同じことだし、やっぱり関係はないはずで。

 チャーミアン──今も変わらず聖人ぶっている気はするが、去年、一歩間違えれば自分がハブられていた可能性のある奴が、そんなことをするのか? しないだろう。

 ならアウニ。うん、すごくやりそう。笑えるくらいやりそう。実は短気だし、ヒステリックだしわがままだし、今現在はどうか知らないが、ヤーゴとやりなおしたくてもできない状態で、エデのあの惚気話を聞かされたとしたら──首謀者にはならない、というかなれないだろうものの、喜んでやりそうだ。あはは。

 他の連中にも、やりそうなのは何人かいる。誰かがはじめたとして、それに便乗しそうな人間なら、いくらだっている。仲よくはないが、エルミやハヌルだって余裕でやる。そこを言いせばキリがない。

 だがエデが気にするということは、やはりあれに近い人間のはずだ。しかもそうなっているとして、普通はカーリナあたりが助けに入るはず──。

 引っかかった。

 そうだ。そうなっているとすれば、カーリナあたりがなにかするはずだ。喧嘩をふっかけるかなにかするはずだ。なにかしら目立つはずだ。でもそんな話は耳に入ってきていない。

 ということは、やっぱりカーリナあたりなのか?

 そんなことを考えてると、あっというまに一時限目が終わった。受験生なのになにをしているのだという話だ。

 休憩時間中、意識してクラスの女子を観察してみたものの、おそらくだがそんな悪の空気はなかった。というか、エデ本人がいないんだもの。わかるはずがないじゃない。

 探りを入れる相手を考える。簡単に行動を起こしてくれそうな人間。カルメーラしかいない。笑えるくらいこいつしかいない。

 というわけで二時限目の休憩時間、ほんとは今朝、校長室に呼び出されていたと、ダヴィデとトルベンに話した。カルメーラとサビナも一緒にいたので、彼女たちに聞かせるためだ。

 理由を訊かれたので、私がまた悪事を働いているのではないかと、猛烈に疑われていると答えた。

 カルメーラとサビナは顔を見合わせた。無実だし疑われたのがムカつくけど、とりあえず誰にも言うなと言い添え、話を長引かせずに私は話題を切り替えた。

 三時限目の休憩時間、カルメーラとサビナは教室を出てどこかへ行った。さて、うまくひっかかってくれるかな、と。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「そーいえば、セテとカルロが写真持ってこいっつってた」

 昼休憩時間に入るとダヴィデが私に言った。私たちのクラス、二学期に入ったのに席替えをしていない。そんな余裕がないのだ。

 先ほどの、三時限目の休憩時間。カルメーラとサビナはぎりぎりになって戻ってきて、そのまま授業に突入した。何事もないままランチ、そして昼休憩に入った。彼女たちはまたすぐどこかへ向かった。

 ちなみに今日も、水曜は授業が五時限目までしかなく、放課後の準備時間が少し長くとれるので、昼休憩中の作業はしないことにしている。

 私は彼に質問を返した。「金とっていいかな」

 「いいんじゃね? 十枚百フラムとか」

 安すぎる気がする。「教室にコンセントってあったっけ」

 「先公デスクのうしろにある」トルベンが答えた。「トラッシュボックスに隠れてるけど」

 私も思い出した。「じゃあ明日、プリンターと用紙持ってくる。でも教諭たちに見つかったら没収されそうだから、昼休憩中に空き教室で。アニタとぺトラが使い方わかってるから、あいつらに印刷させる」

 「明日は作業すんだろ? 俺らできないじゃん」ダヴィデが言った。

 「編集であんだけ見てるのに、まだ見たいの?」

 「ぜんぶ使うわけじゃないし。まあどっちでもいいけど、もらえるもんはもらっとく。なんならあのめんどくさい編集作業を理由に、俺とトルベンは金払わん」

 笑える。「じゃああんたたちのぶんも印刷してもらっとけばいいじゃん。もしくは休憩時間使うか──」

 「ベラ」ぺトラとアニタが戸口から私を呼んだ。「ちょっと」

 私はかたまった。なにこの展開。ものすごくイヤな予感がしてきた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 気のすすまないままアニタとぺトラに続いて空き教室に入り、私は自分の目を疑った。戸口の傍らに立つチャーミアンだけでなく、カーリナとサビナ、さらにハリエット、カルメーラ、アウニ、その他A組とB組の割合高く、女子だけで、ぜんぶで二十人前後の人数がそこにいた。チャーミアンは私の背後で閉めた引き戸に鍵をかけてからアウニの横に、ペトラとアニタはカーリナの横に並んだ。

 最悪な可能性が頭の中によぎったが、とりあえず「なに」と、訊く。

 少し身構えた様子のアニタは、真剣な表情で切りだした。

 「校長室に──呼び出されたって?」

 なぜお前がここにいる。「そうだけど」

 「なんの話?」

 なぜお前がここにいる。「あんたに関係ある?」

 久しぶりのイヤな感覚が、全身にじわじわと広がっていく。

 「なんの話だったたか教えてよ」ぺトラが促した。

 ありえない。「──エデが、同期の女たちにシカトされて」やばい。「学校休んでるって」いやだ。「つまりイジメ。その主犯が、私なんじゃないかって」帰りたい。

 彼女たちはそれぞれに顔を見合わせた。

 アニタは、うつむいた。

 「──ごめん。まさかベラに矛先が向くとは思わなかった」

 思わず唖然とした。いちばん可能性がないと思っていたアニタが、そこに混じっていた。

 彼女の手をとり、ペトラは視線をこちらへと戻す。

 「アニタだけが悪いんじゃない。そういうのがあったのはホントで、ここにいる全員が関わってる。あと他にも、便乗したのは何人かいる」

 本当に、笑えない。「──理由は、なに?」なぜだろう。泣きそうだ。

 アニタとサビナと並んで立つカーリナが口を開いた。

 「最初にはじめたのはエデだった。夏休み中、ミッド・オーガスト。LPICの夏祭りで、あんたに会ったでしょ。あたしたちはサビナからその祭りのことを聞いたけど、サビナは親戚の集まりで行けないって話だった。でもサビナは祭りに来た。彼氏と、あんたたちと一緒にって」

 最初からずっと、サビナは彼女の隣でうつむいたままだ。

 誰が話していようと、この教室内、妙に静まり返っている。空気が、これでもかというほど重い。妙に息苦しい。

 カーリナが続ける。「エデがそれにムカついたらしくて、その次の日から、サビナを無視しはじめた。メールも無視だし、夏休み中でも朝は一緒に学校行って、一緒に帰ってたのに──ミッド・オーガストが終わってからそれ、しなくなった。なにも言わずに、わざと時間をずらしたの。あたしもそれにつきあわされた。サビナはベラとつるんでるからべつに平気でしょって」

 ありがちな、だけど私には理解できない友情嫉妬。

 ペトラがあとを引きとった。「だからあたしは、あんたんとこにカーリナを連れていった。言ったじゃん、空気が最悪だって。エデがサビナを無視してたから。エデがサビナを避けたら、他のみんなもサビナを避けなきゃならないみたいな雰囲気になる。少なくとも、エデの前ではそうしなきゃならなくなる。あんたにはわかんないかもしれないけど、あたしたちはそうなるの」

 呆然とする頭で、どうにか思い出す。

 マルコがエデにメールしていないかもしれないという話で二人が家に来て、私がマルコに電話した日だ。

 誰かがシカトをはじめれば──それがリーダー格の人間がはじめたことであれば──周りはそれに便乗せざるを得ない。逆らうと自分も標的になるからだ。

 リーダーという存在を作って、それに合わせて行動する。グループ意識の高い女がそういう生き物だということは、私も知っている。それが私のキライな、“女の生態”だ。

 カーリナはさらに説明を続けた。「あのヒトから連絡がきても、まだ何日かは機嫌がなおらなかった。でもエデはあのヒトとつきあいはじめたとたん──その次の日の月曜から、サビナを無視することをやめた」

 あの日のことだ。後にゼインにも話した、違和感があった月曜日。喧嘩どころではなかったということだ。

 うつむくサビナはいつのまにか泣いていたらしく、声をあげてさらに泣いた。カーリナが彼女の左手を、チャーミアンもその反対側で彼女の手をとって肩に手をそえる。カルメーラとアウニは背後から、気遣うように彼女の背中に手を添えて慰めた。

 「もうみんな、限界だった」うつむくぺトラが静かに言った。「あんたの自己中とは違う。あんたは誰かを傷つけるような自己中じゃないけど、エデは違った。自分の気分で友達に対する態度変えて、周り巻き込んで、サビナを傷つけて、勝手に機嫌なおって、何事もなかったかのようにまたトモダチしようとする。そんなのおかしい」

 話は理解しているものの、言葉が出ない。開いた口が塞がらない。

 おかしいって、なにが? 確かにおかしいけど、お前らがしたことはなに? 正解なの?

 アニタが続く。「あたしはペトラから話を聞いた。やっぱりムカついた。べつにサビナに心底同情したわけじゃない。でもエデの自己中度にムカついた。他のみんなとも話して、やっぱり黙ってていいところじゃないって話になった。今ペトラが言ったように、みんな我慢の限界だった」

 ──我慢の、限界。

 「だから」チャーミアンとサビナのあいだ、アウニが口をはさんだ。「A組のあたしたちは文化祭の準備、エデに合わせるのをやめるとこからはじめた。エデの意見も無視。できるだけ話さないようにした。体育館や会議室に行くのもそう。エデと一緒に行かないようにした」

 遠慮気味のチャーミアンがあとを引きとる。「他のみんなも、そんな感じ。エデのことを避けて、会話を減らした。エデとよく一緒にいる私たちがそんなだったから、はっきりそういうのを言わなくても、そういう雰囲気はすぐ周りに伝わった。たった二日のことだった。三日目にはエデ、学校に来なかった」

 たった、二日。しかも“学校”という場所に絞れば、夏休み中だったこともあり、ほんの数時間のことだ。

 「──サビナは一週間以上、そんな空気に耐えてたのに」憎しみや怒りが混じっているのか、カーリナの声がいつも以上に低くなる。「たった二日って」嘲笑うよう、だけど吐き捨てるように言った。

 エデは性格的にも、自分からリーダーになりたがるタイプだ。ただ、アニタやハリエットの類とは少し違う。楽しいことが大好きというのではない。チャーミアンのように、ただ目立ってみんなを先導したいというのでもない。

 エデは、悪ぶることでリーダーになる。嫌味を散らすし喧嘩は売るし、大げさに言えば、恐怖を植えつけ、他人を平気で傷つけるタイプだ。小学校の時だが、年の離れた兄貴や姉貴がいるというのを、しかもそれが不良だったということを言いふらし、同級生たちを怖がらせていたという話も聞いたことがある。

 わけのわからない嫉妬や妬みや見当違いの逆恨みで、友達なはずのサビナを傷つけた。周りすらも巻き込んで。

 そういう悪の要素が入ったリーダータイプの人間には、他は逆らえない。反感を買えば、自分が標的にされる。エデはその影響力をわかっていて、サビナをシカトし続けた。思いどおりになったのだろう。だが自分の気分でそれをやめた。

 その自己中さに嫌気がさして、彼女たちは束で反撃したということだ。

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