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R E D - D I S K 0 3  作者: awa
CHAPTER 09 * COMPLICATED HEART
45/139

○ Summer Draw To A Close

 なにが起きているのかわからないまま、二度目の花火。

 七人か、詰めれば八人の客を乗せられる大型タクシーを呼び寄せた私は、オールド・キャッスル組を順に迎えに行った。

 甚平姿のサビナは、浴衣姿のカーリナの家の前で待っていた。サビナよりも先にカーリナを迎えに行くはめにならなくてよかったと思った。

 なぜいるのか理由がわからない、そんなおかしな空気の車内でいちばん喋っていたのは、意外にもジョンアだった。サビナと話しつつ、ナンネとリカに話を振りながら、カーリナとも話していた。地味だが不良側というジョンアの立ち位置が、変に役に立ったらしかった。

 待ち合わせ場所であるキャッスル・パーク横のコンビニに着くと、私は先に到着していたアニタをめいっぱい睨みつけてやった。無視された。キレかけたところを、セテとイヴァンになだめられた。ソフトクリームを食べつつ、念のためにと持ってきた、炭酸アップルジュースのペットボトルに入ったビールを飲み、どうにか苛立ちを抑えた。

 そんな私をよそに、ペトラたちはデジカメでの撮影を楽しんでいた。カルメーラがすっかり使い方をマスターしているものだから、写真だけではなく、動画の撮影までも行っていた。

 今日は私とナンネ、ジョンア、ペトラ、サビナが甚平だ。そしてアニタとリカ、カルメーラとカーリナとハリエットが浴衣。女はぜんぶで十人。

 男子陣は全員甚平で、ゲルトとセテ、ダヴィデとイヴァンとカルロ、そしてトルベンとヤーゴがいるので、花火のために十七人が集まったことになる。なぜだ。

 私とナンネは、このわけのわからない状況を、無理やり楽しむことにした。カーリナの存在を忘れるか、もしくはカーリナが性悪女だということを忘れるため、そして微妙な空気を吹き飛ばすように。

 ナンネがそんなふうになれば、ジョンアも当然テンションを合わてくれるし、私がそんなふうになれば、リカもリカなりに、私と同じで状況をよくわかっていないゲルトたちも、とりあえずそういうテンションでいこうとする。

 結果、噴火花火はすぐに終わった。私は写真に写ることを気にも留めなかった。

 手持ち花火も同じく、やたらと騒がしく消化していった。私が偽アップルジュース──つまりはビールを奪われながらもゲルトたちと話をしていると、そこにアニタたちが割って入り、他の連中をまじえて話が大きくなった。

 そんな空気になれば、その空気を壊さないようにと、みんなが喋りはじめる。だからうるさくなる。あげくの果てに、花火を持ったまま自転車で二人乗りして、端から端までの距離を、どのチームがいちばん花火を長く終わらせないまま、且つ早く行けるかを競うという、謎の勝負がはじまった。言いだしたのは私。ビールにではなく、雰囲気に酔っていた。

 イヴァンはダヴィデを泊まらせる代わりに彼のうしろに乗ってきていたので、自転車はない。だからゲルトと私が、セテはアニタと、ダヴィデがカーリナと、カルロはリカと、ヤーゴはハリエットと、そしてトルベンとペトラがチームを組んだ。

 女は全員荷台に、しかもうしろ向きに乗って花火を二本持つ。もちろん、どちらか一本でも先に消えれば負け。結果、セテとアニタのチームが二本の火花を散らせたまま、いちばんにゴールした。リカはすぐに怖がってそれを降りたりで、うしろ向きは怖すぎると苦情が出た。私は楽しかったのに。

 なので今度は男女逆転。男子が運転するよりも、格段に遅いスピードでの勝負になった気がするのだが、これはハリエットとヤーゴのペアが一番に。

 イヴァンにもみんなと同じ思いを味合わせてあげようと、私はゲルトの自転車を借り、彼を荷台に乗せてパークを走ることにした。フラフラしすぎて怖いとかですぐ逃げられ、代わりに彼の運転でコンビニに行って、最近売り出したらしい、けれど食べるにはまだ暑くて早いだろう肉まんとピザまんと豚まんを人数分、適当に買って、みんなのところに戻った。

 暑いわと文句を言いながら、けっきょくみんなそれを食べた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「そういやさ」私は右隣でベンチに腰をおろしているイヴァンに向かって切りだした。「最近、なんか事件とかあった?」

 全員すでに中華まんを食べ終わり、アニタたちは少しだけ距離をおいたところで再び花火をしている。

 イヴァンが訊き返す。「なんかってなに? 事件なんて、新聞に腐るほど書いてるだろ」

 「そういうんじゃねえよ」私はつっこんだ。「なんか、学校で? 衝撃的な事件とか、性悪女的に笑える話とか」

 パチパチと火花を散らす線香花火を持ち、私たちの前にしゃがんでいるカルロが口をはさむ。

 「夏休みなのにほぼ毎日登校してることが事件! とか、そういうんでもなくて?」

 「違います」とはいえ、違うのかどうかもよくわからない。「なんか友達が、最近やたらと訊いてくんの。最近事件ないか、おもしろい話ないかって」

 カルロの線香花火の火が落ちて消えた。

 再びイヴァンが質問を返す。「意味もなく?」

 「意味があるかすらわかんない。適当に返すんだけど、ならいいや、みたいな。はぐらかされるというか、そんな流れになる。あ、昨日はね、すごく仲悪い女にカレシができたって話で学年中が騒いでたって話したんだけど」けっきょくそれすら、どうでもよさそうな返事だった。

 「あー、エデな」

 「それ言ったら──」カルロは言いかけたものの、続きを話すことをやめた。「やっぱいいや」

 「なに」

 「いや、なんでもね。気のせいかもだし」

 「なんかあんの?」私はイヴァンに訊いた。

 「さあ。オレが知るはずない」

 私が知るはずもない。「っていうかこの状況も、わりと事件だよね。なんだよ十七人て。なんの集団だよ」

 二人は笑った。

 「そーいや最近、アニタが文化祭の打ち上げ、どうするか悩んでる」カルロが言った。「去年クリスマスパーティーの話してた時みたいに、やっぱカラオケだと金かかるし? それでも行ったら、オレやお前」私のことらしい。「が、無駄に奢るハメになる気がするしとか。さすがにオレ、お前ほど金持ってないけど」

 イヴァンが応じる。「紅白勝負しなきゃ、ひとり千フラムくらいだもんな。それに食いたいもん追加してたら、安くてもプラス五百フラムくらいか。しかも去年ので言えば約四十人。めんどくさいと言えばめんどくさい」

 「っていうかさ、各クラスでやればいいんじゃないの? 今年はどのクラスも気合入ってるんだし、そのほうが」私は言った。

 「まあそうだけど。そんなんなら、わざわざ参加したいと思わんわ。強制じゃないし、オレのクラスなんてメンバー微妙だし。ゲルトだって、C組だけの打ち上げってのならたぶん行かない」

 それもそうだと納得した。「もうひとついえば、そもそも打ち上げって、その日にやるもんだよね。達成感が残ってるうちに? 次の日って、もうただの遊びじゃねーかみたいな」

 彼らは笑って同意した。

 「けど」とカルロが言う。「去年みたいに、ケイのクラスのホラーハウスが人気出たりしたら、また帰りが遅くなるよな。そんな時間残ってない。まあ、飯食いに行くくらいはできるかもだけど」

 イヴァンも続いた。「それこそあんま大人数で行くのも、どうかと思うし? 多すぎると突然なんか無理だろうし」

 「だよね。アニタたちがやりたいっていう打ち上げが、どういうもんなのかわかんない。単に何人かで乾杯して、おつかれさまーって言いたいのか。それとも去年みたいに、日付が変わって達成感が薄れた状態でも、打ち上げってのを理由に大人数で騒ぎたいのか」

 イヴァンは苦笑を浮かべた。「とりあえず目立ちたいだけじゃね? あいつだけじゃないけど。とりあえず大人数の前に立って仕切りたいだけとか」

 「かもね。ま、もう少し様子見て、あいつの出方待とうか」手持ち花火をしながら騒ぐアニタたちを見やりながら言った。「できれば私、もうめんどくさいことには関わりたくないし」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 木曜の夜。

 「じゃあ今年も始業式の日?」

 携帯電話片手に、私はルキアノスに訊き返した。ロアー・キットとミスター・ピンキー・レオパードを持って行こうと思うのだけど、夏休み最後の土曜か日曜、もしくは始業式の日、いつが暇かとメールで訊いたのだ。電話がかかってきて、土曜は友達と遊ぶ約束があると言われた。

 「日曜は?」とルキアノス。「っていうか、昼からだとしたらどっちも変わんないか」

 「変わらない気がする。アドニスたちは?」

 「さあ。特になにも聞いてないような──あ。そういえば、土曜の夜はうちに泊まりに来るとかってメールが入ってた気がする。勉強してる時のメールだったし、無視したけど」

 「アドニスとナイル、二人とも?」

 「そう。ゼインはたぶんデートかな、知らないけど。でもあいつら、昼間遊んでなくても、二日に一回は夜、プールに入りに来る。八時くらいにふらーっとうちに来て、プールにドボン。涼んでアイス食べてビール飲んで、濡れた服でふらーっと帰ってく」

 思わずプール屋かとつっこむと、彼はものすごく笑った。

 「まあ、そんな感じ。ベラが来た時ほどはしゃいだりはしないけど、とりあえず暑いのをどうにかしたいみたい」

 「わざわざ来るってのがすごいよね。アドニスはともかく、ナイルとゼインなんか、家がすごく近いってわけじゃないのに。じっとしてらんないのかって訊きたくなる」

 「それは俺も訊きたい。そういえば、このあいだまた同期の子と花火するとか言ってなかったっけ。楽しかった?」

 「まあ、それなりに? でも違和感が──なぜかカーリナが来た」

 「え、マジで」

 「マジよ」ベッドの上、私は溜め息混じりに答えた。「まあ、私はほとんど話なんかしなかったし、それほど気にしなかったんだけど。むしろ違和感ありすぎて、逆にテンション上げてやったんだけど。なぜかアニタがそれに反対しなかったみたいで、わりとわけわかんない状態」

 「ふーん? ベラとカーリナが仲悪いっての、アニタは知ってるんだよな?」

 「知ってる。でもどうでもいいのかな、よくわかんない。最近まともに話してないの。夏休みもほとんど遊んでない。明日の午後はペトラたちと一緒に、デジカメの写真をプリントしにうちに来るって言ってるけど」

 「ああ。デジカメはそういうのがあるからイヤだよな。充電と容量の確保さえしてれば撮り放題だし、プリントできるってなると、やっぱあげなきゃいけなくなる。男はそうでもないけど、女の子はそういうの、欲しがるし」

 「そう。文化祭のためだけに買ったのに、使用目的も一応文化祭なのに、なんでプライベート写真としてあげなきゃいけないんだ、みたいなね。本気でめんどくさい。だから文化祭が終わったら、あんま使わなくなるかも」

 「え、早いな。せっかくいいモノ買ったんだから、使わなきゃもったいないよ。今年のは、中学最後の記録になるんだし。高校でそう見せなきゃいい。で、プリントするのはひとり何枚までって決めとく。女の子はただ映りたいだけみたいなとこ、あるだろ。枚数を制限すれば、文句言いながらもちゃんと絞ると思うよ」

 いろんな部分で納得した。「そうね、そうする」

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