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R E D - D I S K 0 3  作者: awa
CHAPTER 08 * SARCASM HEART
41/139

* Arrival Place Of Grumble

 新しいゲームは、キャラクターと競技だけでなく、新技も追加されていた。当然裏技もあるらしいものの、それはインターネットで調べるか、攻略ブックでも読まなければわからない。彼ら男四人は二対二でバレーをすることにした。ルキアノスとゼイン対ナイルとアドニスで。

 ゼイン側にサビナがいるわけなので、私は当然、どうでもいいなりにアドニスとナイルを応援するはずだった。けれどどちらがミスをしても笑っていた。さっきまでやっていた古いタイプと違って、操作に慣れていない彼らのキャラクターのぎこちない動きが、妙におもしろかった。

 後半戦でナイルに代われと言われ、私は従った。彼がシングルソファから動かずに携帯電話を操作しはじめるものだから、私は彼の足元で床に腰をおろしてゲームをするしかなかった。しかも操作方法は、ゲームをしながらアドニスとルキアノスが適当に教えるだけ。レシーブしなければいけないところでブロックに飛んだり、スパイクしなければいけないところでレシーブして顔面にボールが当たったりするものだから、彼らも笑い転げ、ぐだぐだの試合になっていた。

 そんな中でナイルにコントローラーを奪われ、なにかと思えば、彼は三度目の挑戦でまさかの裏技を披露した。ネットで調べたらしい。ナイルはゲーム操作に慣れるのがとても早い。強いかどうかはまた別の話だけれど。

 通常なら必殺技ゲージというのがあって、それが溜まれば必殺技が発動できるものの、それは相手に対応される可能性がある。だが裏技を使えば、相手は絶対に対応できないのだ。けっきょくナイルの裏技連発で、彼らは勝負に勝った。ルキとゼインは終始文句を言っていた。

 次、テニス。裏技のため、アドニスがナイルの携帯電話を見てボタンを覚えようとしたものの、ゼインに止められた。ナイルの携帯電話が私のところにまわってきたので、みんなに聞こえるよう、何度もそれを読み上げた。途中でたらめなことがバレて怒られた。なのにナイルは、偶然裏技を発動させた。勝った。

 「サビナ、代わろっか」ルキアノスが言った。「裏技連発させる卑怯な奴がいるけど」

 ナイルが反論する。「卑怯じゃないし。自分だって古いほうでやってじゃん。しかもベラが読みあげるのでやろうとしたじゃん」

 「それはゼインとアドニス。俺はしてない」と、コントローラーをガラステーブルに置いて立ち上がる。「ベラ、俺も煙草もらっていい?」

 私の煙草、すでにアドニスが何本か吸っている。私も何本か吸っている。補導されると面倒なことになるからと、祖母がカートン買いしてくれているもので、今日は二箱持ってきた。あまり吸わないようにしているものの、進級して量は減らしたものの、夏休みに入ってからはまた増えた。

 というか、ルキアノスの機嫌が悪い気がする。

 「いーよ」と答え、私はナイルに訊いた。「アドニスとゼインとサビナ、四人でやっていい?」

 「そーして」

 ナイルもビールを持って席を立った。彼も機嫌が悪い。おそらくその理由は、お互いがどうこうでもゲームの裏技でもない。サビナだ。というか、サビナを連れてきたゼインに対してだ。

 彼は「俺も煙草吸う。久々に」と言うと、アドニスから受け取った煙草と灰皿を持ったルキアノスに続いて、窓際にあるソファコーナーへと向かった。

 やっとオレのソファが空いた、なんて言いながら、アドニスはテレビ側の一人掛けソファへと移動した。ゼインもその向かいに座る。サビナにコントローラーの操作を教えて、私もよくわかっていない、かなり適当な状態でテニスを開始した。

 アドニスに裏技を繰り出せと言われたけれど、私はそういうのが本当に苦手だった。一連のボタンの押し順を覚えるのが無理なうえに、タイミングもよくわからない。負けた状態の後半で、試合を無視してどうにか裏技を出そうとしていたら、それはそれで怒られた。よけいに負け状態だ。けれど偶然、裏技を発動させた。思わずアドニスとハイタッチをしたのだけど、試合は負けた。なんだこれ。

 二試合めは、裏技など繰り出せなかった。そして負けた。サビナにも小学生の弟がいるらしく、しかも一緒にゲームで遊んでいた時期があったらしく、実はゲーム慣れしているらしい。少々驚いた。

 そのあと私がレストルームに行くと言って立ち上がると、サビナもあとについてきた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 先にレストルームを出ると、私はまたもキッチンの冷蔵庫からビールを出して飲んだ。今頃ゼインはみんなに文句を言われてるかな、などと思いながら。

 よく考えればサビナ、彼女がはじめてルキアノスとアドニスに会った時とは、態度が大違いな気がした。エデとカーリナがいたからか、状況が違うからか、はたまた嫌味の有無が理由なのかはわからない。少なくともあの時は、アドニスやルキとも普通に会話していたのに。

 サビナが話さないからか、ナイルはよけいに話さない。人見知りするからというのがいちばんだろう。あと、昔のことが気にかかるから。アドニスは、それなりに対応しようとしている。ゼインとサビナが来ることをいちばん最初に了承したのは彼だ。私の意見は関係なく、私と二人でどうにかする、と。

 ルキアノスはサビナが来ても気にしないはずだった。祭りでサビナが途中参加するかもということに関してはなにも言わなかったし、ほんの数十分のあいだでも、一緒にデザートを食べる時も、嫌がる素振りは微塵も見せなかった。だが今は少々不機嫌らしい。自分の家だからか。

 そんな彼らの不機嫌さ、今のところあまり目立ってはいないものの、ああいう雰囲気になって、なによりいちばん気まずいのはサビナだろう。というかそういう雰囲気にならなくても、気まずいとは思う。ようするにゼインがバカ。恋愛も友情も両立させようと思ってのことなんだろうが、彼は正真正銘のバカなのだ。

 レストルームから出てきたサビナがこちらに来た。

 「ごめんね、また邪魔して。なんか、ゲームがどうこうとかで」

 ゲームがどうこうというのは、女にはあまりわからない。気にしてないと答えると、サビナはカウンターの木製チェアに座った。

 私はシンクに腰かけ、カウンター越しに彼女に質問を返した。

 「っていうか、あんたは反対しなかったの? ゲームなんか知るかボケみたいな」

 「躊躇はしたよ。顔にも出たと思う。イヤかって訊かれて、行きたいか訊きなおした。あたしがイヤじゃないなら行きたいって言われて、みんながいいなら、って」

 ゼインがバカ。「ゲーム好きが人気ソフト手に入れると、ろくなことにならないよね」覚えがある。

 うなずいたあと、サビナが気まずそうに切りだした。

 「先輩のこと──訊いていい?」

 アゼルのことだと、直感でわかった。「なに」

 「なんかこう、気まずい時とかなかった? ふたりっきりになりたいのに、そうなれない時とか──」

 「頻繁にとは言わないけど、たまにあった。気まずくってのはないけど、マスティやブルなんか特に、邪魔するのが好きだったし。でもなろうと思えばなれた。たまり場になってたのはアゼルが住んでた家。みんなでいるのはリビングで、アゼルの部屋には鍵がついてたから。ある程度バカ騒ぎにつきあったら、あとは放置」

 「ああ──喧嘩とかになったことは? ない?」

 「そういうのじゃ喧嘩はないと思う。アゼルは特に、邪魔だとかうざいとか思ったらすぐ言ってたけど、あいつらはそんなの気にしないし。リーズとニコラは気遣って帰ろうとすることもあったけど、二人がいてもいなくても、マスティとブルは基本的に無神経。修学旅行のあとなんて飲み会だった。邪魔しなかったのは、最初の頃とクリスマスくらいかな」

 「そっか」と答えると、彼女は少し悩ましげな表情になってまた、口を開いた。「ルキとナイルは? いつもあんな感じ?」

 「なにが?」

 「なんか、ナイルはよくわかんないけど、ルキがちょっと──機嫌悪そうな感じが」

 さすがにわかるらしい。「いつもあんなだよ」ある意味では。「実はやさしいの、表面だけだから。根は短気で負けず嫌い。あからさまに怒らないだけで、言っていい相手にならわりと文句は言う。ナイルも無口で気が短くて口が悪いから、やっぱりあんな。気にするとこじゃない」

 彼女はいくらかほっとしたらしい。「ならいいんだけど──でもやっぱり今日、ゼインのところに泊まるってのは、やめたほうがよかった気がするな。着替えはゼインの部屋にちょっと置いてるから、泊まれるか訊かれて、平気だって言ったんだけど。そのあとゲームソフトが当たって、気づいたらこっちに来る話になってて」

 ゼインはバカ。はっきりと拒否しない彼女もバカだとは思うけれど、抗えない状況があることは、私にもわかる。

 「ま、適当にやるしかないでしょ」私は言った。「ナイルは人見知りするから、いないもんだと思ってていいよ。目立つようならルキの機嫌は私がとる。あとはゼインがどれくらい空気読めるかっていう話なだけ」

 彼女は苦笑した。

 「ベラが最初にナイルと会った時も、やっぱあんな感じだった?」

 「ぜんぜん喋らなかった。ひとり携帯電話いじってたし」

 「ほんとに? そんな感じに見えない」

 「今はね。ゼインたちが、私にサングラスをはずせって言ってきて。サングラスの有無で性格が変わるからとか言いながら、意味もなく拒否してたんだけど、ナイルが勝手にサングラスをとった。それまで普通にしてた私の態度が変わって、性悪な本性が表に出たうえに、私がふざけたこと言うもんだから、あいつら揃って爆笑。その時はそれで終わり。次はルキと一緒にいる時に会ったんだけど、それはもう今みたいな感じで普通に話してた。と、思う」

 彼女は笑った。

 「同級生なら普通に話せるんだけど、それ以外の男の子だと、なんかもう、どうやって話せばいいかよくわかんなくなってる。特にこういう状況だと、みんながどう思ってるかって、色々考えちゃうし。でも拒否ばっかりして、ゼインを困らせるのもイヤだし」

 相手とどう話せばいいか、どういう態度をとればいいかがわらからないというのは、状況は違うものの今年の春、荒れてた時期がそうだった気がする。

 “自分”の“いつもどおり”を貫こうとしてはいたけれど、少しでもブレれば落っこちて、すべてをぐちゃぐちゃにしてしまうような状態だった。

 「みんながどうかは知らないけど、そこまで気にしなくていいでしょ」私は答えた。「どう思ってようとけっきょく、今みたいにあんたたちが来ること、了承してんだし。仮に気まずく思ってるとしても、その矛先があんたに向くようなことはない。原因はぜんぶ、ゼインのわがままと空気の読めなささにある。拒否しても変わらないわよ」

 「まあ、そうだよね。それもそっか。じゃあ次からはもうちょっと、拒否してみる。なんかルキと仲いいってわけじゃないのに、家に来るとかは抵抗あるし──あたしがどこの部屋使えばいいかって、わかる?」

 「そこのゲストルーム」ビール瓶を持ったまま、私は左のほうを指で示した。「ゼインと一緒に。あとは二階の部屋とゲームルームで適当に分けるから」

 ゲストルームのほうを見やっていた視線をこちらに戻す。

 「ああ。じゃあもう、先に寝ようかな。そのほうがみんな、普通に遊べるだろうし」

 なぜそういう気の遣いかたを、昔からしてくれなかったのだろう。

 「ゼイン呼ぼうか」

 「いいよ。どうぞ朝まで楽しんでくださいってメール入れとくから」

 実は軽く怒っているらしい。「そ。じゃあ先に寝たって言っとく」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 ひとりランドリールームの扉を開けると、同時にゲームルームの扉も開いた。ゼインだ。

 「あれ、サビナは?」

 「帰った」と、私。

 「は!?」

 「あ、間違えた。先に寝るって」

 「なんだ。びびったわ」ほっとしたらしく、彼はゲームルームへの扉を閉めてそこにもたれ、ズボンのポケットに両手をつっこんだ。「ぜんぜん戻ってこないから、また喧嘩になってんのかと思って」

 「残念。してないよ」

 こちらは戸口にもたれてビールを飲む。ランドリールームは細長く、白い洗濯機と乾燥機が並んでいて、奥には背の高い棚がある。ほとんど真っ白な空間だ。

 「サビナ、なんか言ってた?」彼が訊いた。「こっち、ナイルとルキにかなり文句言われたんだけど」

 「あんたはわがままで空気読めないよねっていう話をしてた」

 「え、マジで?」

 彼は信じやすい性格だ。「サビナははっきりとはそういうの、言ってないけど。たぶんちょっとムカついてる。ナイルは話しづらいし、ルキとも仲がいいってわけじゃないから、家に来るとかは抵抗があるとか」おそらく、エデのことを考えればよけいだろう。「拒否してあんたを困らせるのがイヤだって言ってたけど、仮にこっち側で誰かが気まずいとか思ってるとすれば、その不満の矛先はゼインに向かうし、そうすればゼインが困ることに変わりはないから、誰が拒否しても変わらないって言っといた。だからこれからは」口元をゆるめて彼を見る。「わりと拒否されるかもね」

 ゼインはうなりながら天を仰いだ。

 「やっぱイヤなんか。なんか、もうちょいナイルと打ち解けてほしーんだけどな。ぜんぜんだし」

 「諦めなよ。サビナだってたぶん、そう誰とでも話せるわけじゃない。ナイルも人見知りするでしょ? だとしたら、きっかけがないと無理」

 ドアにすがるようにうなだれる。

 「そのきっかけを探してはいるんだけど、ゲームですらそうならんかったし」

 「成り行きにまかせるしかないでしょ。あ、それから、サビナから伝言」

 彼ははっとしてこちらを向いた。「なに」

 「“どうぞ朝まで楽しんでください”だって。メール入れるって言ってたけど」

 慌てて携帯電話を確認すると、彼は大きな溜め息をついた。

 「もうやだ。絶対怒ってるわこれ」

 「それほど怒ってはないわよ。ただもうちょっと空気読めよこのアホ、みたいに思ってるだけでしょ」

 「だな。もうやめる」相当落ち込んでいる。「とりあえずサビナのとこ行くわ。どこ?」

 「プール脇のゲストルーム」

 「わかった。ちょっと話して、サビナしだいじゃ、あいつが寝たら戻ってくるって、ナイルたちに言っといて」

 「はいはい」

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