勘違いしたままの璃音に告白しようとしたら~武長先生Ver
中身だけ見ると、オレより年上に見える元生徒。
高校を卒業し、エスカレーター式の成宮学園の大学ではなく、外の大学に行った璃音。これで遠慮せずに今まで溜めてきた想いを告げる事が出来る。
教師と生徒という立場に縛られ、ずっと我慢してきた。
久しぶりに会おうとメールで呼び出した。
待ち合わせ場所は遊園地の前。まるで初めてのデートのように緊張している自分に笑うしかない。
「こっちだ」
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いてくる璃音。長い髪をゆるく縛っている。服はシンプルな装いだが、璃音はそれだけで十分綺麗だ。ただ、デートを意識した服装ではない。
黒のパンツに白いシャツ。羽織ったスカーフはサクラ色。白いシャツの袖口は折れるようになっていて、幾つものボタンが飾りで留められている。すっかり大学生という外見。高校時代も垢抜けていたが、少し離れている間にそれ以上に綺麗になって……。
成宮学園の大学に行ってくれれば虫除けは出来たが、別の大学に行ってしまった璃音にそれは難しい。
「お久しぶりです」
笑顔は高校の頃とは変わらず、相変わらず癒される笑顔だ。というか、周りの男の視線がウザイな。散れ、と叫びたがったが、璃音が嫌がるだろう。
「あぁ。雰囲気が変わったな」
「先生も変わりましたね。高等部ではモテまくって大変だって聞きましたよ」
「子供に好かれてもな」
璃音じゃなければ意味がない。そう言えてしまえば簡単なのに、肝心の言葉が中々出てこない。
「先生と遊園地って似合わないって思っていたけど、案外似合いますね」
俺の気持ちを知らずにクスクスと笑い声を漏らす璃音。思わず抱きしめたくなったけど、こんなに人の多い場所では流石に出来ない。
「純君が最近準備室に行ってるって言ってましたよ」
予め買っておいたチケットを璃音へと渡す。
「(まだラブじゃないみたいなんだけどね。純夜の方も)」
「そーいや居るな。付きまとう女が多いから逃げ場所の提供って所か」
璃音の弟に貸しを作れば作る程、俺の方が有利になってくるしな。俺の名前を弟が話題で出せば、璃音は俺の事を忘れない。
「純君もてますしね。(先生の方もやっぱまだラブじゃないっぽいなぁ。毎日会えて幸せそうだけど、イベントでルートを絞り込めなかったからかなぁ…)」
「……後で土産でも買っていくか?」
「あ、はい。丁度甘いものが食べたいって言ってたから、買っていきたいです。ついでに可愛い缶希望とか。缶の方は母がですけど」
本当に弟の事を大切にしてるな。まぁ、助けたフリして恩を売ってるだけだがな。予想通りで自宅で、璃音の前で俺の名前が出てるから、それには目をつぶってやるか。
「先生! 着ぐるみです。写真撮りましょう!」
璃音の視線の先には可愛らしいぬいぐるみ……。
「璃音。ここで“先生”と呼ぶのはやめとけ」
もう先生じゃない。そう意味を込めたら璃音が頷いた。
「(ここであやしい関係なんて言われたら、先生も純夜もショックを受けるからかな。)それじゃあ武長さんで」
「…名前の方が親しげじゃないか?」
「(将来的には身内になる予定だからかな。年下でも義姉になるんだっけ。)わかりました。正人さんって呼びますね」
「あぁ。それでいい」
可愛くて、今すぐ抱きしめたいんだが……。
既に着ぐるみに視線を奪われ、行きましょうとばかりにデジカメ片手に俺を引っ張る璃音。
ひょっとして……今日一日このテンションが続くのか…?
璃音の事だから何処かで落ち着かせるとは思うが……。しかし、この表情も可愛いな。