君の帰る場所
運命とは何か――
人は何処から来て何処へ帰るのか――
――ねぇ、君は何処から来たの?
――ねぇ、君は何処へ向かうの?
あの日、夢と希望に満ち溢れた瞳で私に問うた少年は、今どうしているだろうか。
この土地から離れることの叶わない私には其れを知る術は無いが、風の便りに少しばかり聞いた覚えがある。
同族同士、愚かな戦に明け暮れるこの時勢。
世界の作意も、世間の悪意も何一つ知らずに育った少年は――
「……やあ、久しぶりだね」
低くなったのは声。高くなったのは背丈。
残す面影は変わりなく。
緋く染まった衣を纏い。
「本当は……こんな形で、君に逢いたくは……無かったけれど……」
絶え絶えの言の葉。
膝をつく。地に臥す。
大地の渇きを潤す紅き雫。
青年の瞳を潤す透の雫。
「俺は……世界が憎いよ」
人を殺し。
人を殺し。
神をも手にかけて。
彼は知ったのだろう。
人の愚かさを。
運命の残酷さを。
「なぁ……俺は……」
何処から来て。
何処へ向かう?
「君は――」
青白き頬に手を伸ばし、少年の瞳を見下ろす。
運命に流された、憐れな仔よ。
私は君を救えるだろうか。
此処から来て。
此処へ還る君を。
「そう……」
二度度開く事の無い瞳を閉じた君の姿は秀麗で。
「此処に逃げた筈だ!」
「探せ!」
枯葉を踏みしめる足音。
耳障りな声音。
「立ち去りなさい。愚かな仔等よ」
此処は彼の聖域。
眠りを妨げる事は。許せない。
「おい、まずいぞ。此処は――」
「お逝きなさい。貴殿方が有るべき場所へ」
此処は、彼の還る場所。
呼んで頂きありがとうございました。
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