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【終】ユーキの日常(『断捨離』スピンオフ)  作者: As-me・com


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17話 ユーキの日常(終)

「うーむ。これはまた奇っ怪な……だが、おもしろい」


 それは、変態から逃げる為に旅を続けている最中の事だった。しばらくはキャンピングカーを走らせていたが、さすがに疲れを感じていた頃。


 ほんの気まぐれで立ち寄ったその場所で摩訶不思議な出来事が起こったのだが……。




 うーん……なんで、空中にジッパーが現れるんだろうね?




「……はっ!これはまさかス◯ンド能力?!ボクは“あの冒険”の第5部が大好きだったんだ!つまりこれはスティ『それ以上言うなってんですよぉぉぉ!色々引っかかるでしょうがぁァァァ!』……なんで元自称神樣がそんなことを気にするのさ」


「ユーキ様、スタ◯ド能力ってなんですか?」


 ジッパーの金具部分をつんつんと突付きながらフリージアが首を傾げる。フリージアからしたらジッパーなんて始めて見る物だろうに、平気な顔をしてつついているとはかなりの勇者だね。どうしてこんな怖いもの知らずになったのか謎でしかないよ。


「そうだなぁ、いざ説明するとなると難しいかも……。なんかこう、精神的な力の具体化……だったっけ?実は初期のアニメは見てないし、原作も読んでないから詳しい設定は知らないんだ。なんかこう、勢い的なストーリーとかなんでも劇的に叫ぶセリフなんかが好きだったんだよね」


『それにしても、なんで第5部だけ見てるんですか?』


「いや、第4部をたまたま見たら面白かったからそのまま第5部も見てたらハマったのさ。でも、どうせならピス◯ルズが欲しかったなぁ!銃を撃つのかっこいいし!まぁ、ボクの冒険はそこで終わりを告げたんで、その後の話は知らないよ」


『……それって、別のもの(アニメ)にハマったんですね?ユーキさんは熱しやすく冷めやす過ぎるんですよ』


「失礼な。賢者の石を探すでこぼこ兄弟の話が気になってアニメと原作と映画を制覇するのに忙しかっただけだよ……師匠キャラが良かったんだよねぇ。ほら、師匠って響きがさ」


 するとフリージアが「そういえば、あたしもディレットさんからこっそり師匠って呼ばれていたみたいなんですよぉ!」と自慢気に胸をはった。そうなんだよね。というか、あの子ってば内緒にしていたみたいなんだけどしっかり口に出てたし。フリージアの後を『えへへ、師匠~』と呟きながらひよこのようについていく姿は可愛かった。


「ボクも師匠って呼ばれてみたかったなぁ」


「ユーキ様はおかーさんでしたからね」


 それはそうなんだけど、師匠呼びもなんか特別感があって羨ましかったんだよ。


「……よし!じゃあこのジッパーを開けてみようか」


『え、ちょ、まっ』


 慌てて止めようとしてくるヴィーを押しのけ未だ空中に存在するジッパーを勢い良く開いた。そして、ジャッと乱雑な音を立てて左右に開くジッパーの間から見えた光景に目を丸くする。


「わぁお、これはまた……」


『なんてこったです……』


「わぁぁぁ!すごい!」


 なんとそのジッパーの先には別世界が広がっていたのだった。





 え?もちろんジッパーの中に入ったけど?なにせ別世界だからあの変態からも確実に逃げられるしね。










***









「あれまぁ、全滅してるね」



 びっくりしたよ。ジッパーの中に入ってしばらく歩いていると、なんと全滅したっぽい村を見つけたのさ。


 あ、誰か倒れてる。まだ子供みたいだけどなにやらボロボロの少年だ。……うん、つついてみたら動いたからどうやら生きてるね。しかし、その惨状はなんというか……。


「うーん、こいつがやったのかな?それにしてはなんか被害が変だけど」


 ボクが首を傾げるとフリージアが目をキラキラさせてボクの袖を引っ張った。


「この人を中心に変な模様が出来てますよ!なんだかキレイな模様ですね!」


『これは“錬成陣”ってやつですよぉ!まさかこんなところで錬金術師に会うなんてビックリです!』


 ヴィーまで驚いているようで、どうやら珍しい案件らしかった。さすがは別世界だよ。


「ふーん?錬金術師ねぇ……。つまりボクの同業者か」


 ボクが分厚い眼鏡を指先でくぃっと持ち上げると、なんとその少年が「……もしかして、ユーキ先輩?」と呟いたのでボクもさらにびっくりだ。こんな子供の知り合いなんかいたっけ?


「なんでボクの名前を……まさかこんなところにもストーカーが?」


「ち、違いま「ユーキ様を狙う不届き者だったんですかぁ?!」ぎゃ────っ」「ふむ、知らない顔だ」


 なぜか興奮したフリージアがその少年をボッコボコにしていたが、なんとなく大丈夫な気がするから放置するよ!


 そして案の定全回復した少年(もはや仕様だと思う)から詳しい事情を聞くが、さすが別世界というかなんというか……ボクは肩を竦める羽目になった。なんとこの子、日本からの転生者でボクに関しての記憶があると言うじゃないか。


「今度は転生パターンか。おい、ヴィー。例の記憶云々はどうなってるんだい?この子もボクの事を覚えてるじゃないか」


『もはやユーキさんが規格外な存在なので、ワタシにもわかりましぇーふごっ?!』


 ヴィーのふざけた態度に思わずぷちっ!と手で潰してしまった。『ひどいですぅ~』と手の下から出てきたから生きてたけどね。ちっ。









 細かい事は省くが、こうしてボクはこの少年を弟子にすることにした。どうやら錬金術師の才能があるみたいだし、ボクの後輩らしいからさ。それにほら、師匠って呼ばれてみたかったし。


「なんで、俺を弟子にしてくれたんですか?」


「え、師匠って呼ばれてみたかったからさ」


 正直に堪えたら少しガッカリしていたみたいだけど、やるからには徹底的に鍛えるよ?



 それから数ヶ月、ボクは弟子をコテンパンにした。錬金術のイロハを叩き込み、おもしろ技術や動く城の作り方……は、ヴィーに反対されたけど。とにかく、久々に思いっきり色々遊んで楽しかったよ。


 日本を知っている転生者とずっと一緒に修行して(遊んで)いたせいか、無性に日本食が食べたくなってしまったのだけが困ったよ。


「うーん、なんかこの世界って面白そうな雰囲気がするんだよね。もしかしてループ物とかゲームの世界だったりして?“味噌汁を知る少女”が物語のヒントになっていたりすんだよ」


『いやですねぇ、ユーキさんたら。流行り小説の読みすぎですよぉ!』


「それもそうかぁ~」


 あはははははー。なんて、ヴィーと笑い話をしていたせいかもしれない。そんなわけでそろそろ移動しよう!


 しかし妙に懐かれたのかボクが旅立つのを渋られたので「この世界を旅して、日本食を広めるんだぞ」とまるで使命を託したかのような雰囲気だけ漂わせてみたりした。まぁ、特に意味はないんだけどね!


 


 その後、「スライムが自由を謳歌出来る世界を作るんだ!」と言い残して手を空中に掲げると、またもやジッパーが現れる。


「し、師匠!それはなんですか?!」と興奮した弟子に詰め寄られたので「これがボクのスタ◯ド能力さ(笑)」とだけ言ってジッパーの先へと進んだ。


 まぁ、正直なところ……ボクにもさっぱりわからないんだよね。このジッパーって錬金術でいいのかどうか。錬金術だとして、何と等価交換しているのかすらも謎だった。


 もしかしなくても、ボクの能力って変化してないかい?最近はそんなふうに思う事が多かった気がしてならないよ。


 元々はこれはヴィーから与えられた能力だ。いくらヴィーがポンコツでもそれに気付いていないはずがない。しかし、どうも詳しく話す気はないみたいなんだよねぇ。


 ……まぁ、どうやら行き先は知ってる世界か知らない世界かで選べるみたいだし(ジッパーを作ると、脳内に行き先リストが現れるようになった)しばらくは様子を見るか。


「ユーキ様、次はどこに行きますか?」


『こうなったら、いろんな別世界にバカンスに行きましょうよ!』


「……そうだね。さて、どんな世界に繋がってるのかな」


 どうせなら、退屈しない世界がいいな。そんな風に思うのだ。






 え……、結局どうなったのかって?そうだね、わかっているのはボクの“日常”はまだまだ続くってことだけさ。また面白いことが起こったら、その時はキミにも教えてあげるよ……たぶんね。



 では、近くて遠い未来でまた会おう。








終わり


 








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