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渡理の便利屋と本業

2人とも仕切り直して互いの椅子に着く。

渡理がお茶を注ぎながら話を振る。


「で、なんの依頼だ?」


剛田は継がれたお茶を啜り茶が薄いことに渋い顔をしてから慌てて顔を戻し口を開く。


「実は自分の父が行方不明になってしまったのだ。」


そう前置きをし1つの写真を差し出される。

その写真には60代程の白髪の爺さんが載っており、指輪や金歯など明らかに金持ちそうな見た目をしている。


「この老人は自分の父、それを探して助け出して欲しい。 金ならある。」


その言葉に渡理の耳がピクリと反応する。

実際この依頼はツッコミどころがたくさんあることには渡理も気がついていた。

警察や他の探偵事務所など他にも頼れるとこがあるにも関わらず、どう見ても信頼性のない渡理のもとを訪ねた点など叩けば埃はいくらも出そうであった。

だが渡理はそんなことよりも気にしなくてはならないことがあった。


「ちなみにその金ってのはいくらくらいを想定して?」


そういうと剛田はおもむろに指を4本立てた。

それを見て渡理は絶句し、表情を失った。


「流石に4桁の仕事じゃないだろ! 馬鹿にすんな。 他、当たれや、コラッ!」


「いや違う! 1000万だ。 それまでなら許容しよう。 貴方たちしか頼れる人がいないんだ。 というか、2人組だと聞いていたが、もう1人はどこに?」


渡理は剛田の話を聞いて目の色を変える。


「して、社長! 私は何をすればよろしいのでしょうか。」


今さっきジャイアンなんて呼んでいたはずの相手に頭を下げ片膝をついて対応する。

渡理にプライドなんて殊勝なものは持ち合わせていなかった。


「なぜ急に態度が変わる!? そんなに財政難なのか!?」


「恥ずかしながら、些か窮屈な生活を迫られております。」


「そ、それは大変だな……。」


剛田の視線が床に開いた大穴や割れた窓などに注がれる。


「では、そちらのお父上の情報を調べさせたく存じます。」


「あ、あぁ……。それでそれはいつまで続けるつもりなのだ?」


「そろそろやめるから安心しろ。」


渡理は素に戻って椅子に座り直した。


「おう、そうか、良かった。実はある程度父についての調べは付いていてな。元々どこの組織から恨みを買っていてもおかしくなかった人だ。ここより先に縁のある興信所に依頼して探し出してもらっていたのだ。だが、ある程度特定できた時にこの件に特に携わってた興信所の人の家に、脅しの手紙が届いたらしい。それでその興信所も怯えきってしまってな依頼料もいらないと手を引いてしまい途方に暮れていたのだ。そして藁にもすがるような気持ちで貴方たちの便利屋を頼ったというわけだ。」


どうやら渡理と檸檬は藁程度の存在であるらしい。再び渡理の眉間に皺がよった。


「んで、そのある程度特定できた犯人はどこの組織だったんだ。」


「この街では知らない人などいないあの闘龍団だ。」


この街にずいぶん住んでいる渡理のはずだが、なぜかそんな名前聞いたことがなかった。


「へ、へぇ~、闘龍団ねぇ。 そ、そりゃやべぇな。 あれだろ? トレーナーの持っているボールを奪って回る危険な組織だろ?」


口に出しては言わないが、は?とでも言いたそうな呆れ混じりの表情で渡理をジト目見る。


「何故知らん。というか、どこだそれは。闘龍団はこの地域を取り仕切ってる暴力団組織だ。 恐らく父はその組織の事務所に囚われていると思っている。」


「じゃあ、その暴力団から親父さんを奪還しろってのが今回の依頼か?」


そう渡理が問うと、剛田は微妙な表情を浮かべる。


「なんだ違うのか?」


「いや、な……。」


剛田が言い淀むことで渡理はなんとなく察しがついた。


「あー、そうか。 わざわざ警察なんかじゃなくて、俺たちのとこを訪ねたんだ。 それだけなわけないか。 大方その親父さんは警察を頼れない理由でもあんだろ。 例えば、その暴力団に頼んでライバル企業を潰してもらった、とかな。」


当たっていたのか剛田は一瞬驚いた表情をして、息を漏らすように小さく笑った。

渡理は今まで便利屋としての仕事を行って来たが、このような警察を頼れないケースの依頼も物によっては引き受けていた。それがこの「渡理の手助け屋」の本業である。

ただそのような裏の依頼の場合、身の安全のため朱理を通して厳重に情報を統制して行っていた。

この仕事を始めて長いため渡理もなんとなく内容が分かるようになってきてーー。


「違うが。」


いなかった。


「違うのかよ! 今のいかにも図星みたいな顔はなんだったんだよ!」


「いや、大体は合ってるんだが、ライバル企業は関係ない。」


「ほとんど合ってるやん!」


「自分の会社はライバル企業に負けて廃業するような会社ではない! 大きな間違いだ。だが、父は闘龍団と交渉をしたのは事実だ。だからくれぐれも内密にやってほしい。」


渡理は一息ついて頭の中で依頼の内容を整理する。


「つまり、今回の任務は父親の奪還と守秘義務でいいのか。」


剛田は頼む、と首肯した。


「じゃあ交渉成立な。 書類用意するから待ってろ。」

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