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日常回:ゲーム編

闘龍団なる暴力団組織関連の依頼で研究組織につながる情報を得てから数日が経過したが朱理からの連絡はなく、檸檬もバイト期間を終えて事務所に帰ってきていた。

何もやることがなくなった渡理はすっかりだらけ込んでいると思われたが、意外にも謎にテンションが高くなっていたようだ。


「っしゃオラァ!!!」


「嘘だぁぁぁぁ!!!」


渡理が叫びながらカードを机に叩きつけてガッツポーズを取ると、檸檬の絶叫が呼応する。

檸檬は生活費の少なさに危機感を覚え始め、渡理の説得にゲームの勝負を提案したのだが一向に勝てる気配が見えない。


「お前が俺に勝とうなんて百万年は早いんだっつの! ハッハッハァー!」


「くぅ~~!! 次です次ッ!!」


そして檸檬は今のゲームを片付けると、某有名カードゲームを取り出して渡理のデッキ分を手渡す。

先ほどから負ける度にゲームの種類を変えてるにも関わらず、檸檬が一度も勝てないのは渡理がどれだけ家で引きこもっているかを物語っている。

なぜそこまでのテーブルゲームの種類がこの事務所にあるのかと言うと、朱理がその手のゲームを好み集めているのを渡理がパクってきたからであった。


「今回は負けませんよ!!」


「これで檸檬、一回も勝てたことないじゃん……。」


「一回もって一回しかやったことないじゃないですか!!」


「まあまあ絶対負けないから、さっさとやって次のゲーム行こうぜ。」


「次って、ゲームが目的じゃないんですからねっ!」


「はいはい、建前はねぇー。」


「建前じゃないですッ!!」


そう言い合いながら渡理は山札を雑に切り、渡理が先行でゲームを開始する。

今回の渡理はイカサマを使うことなく真っ当に混ざった山札から、珍しく運だけを頼りにカードを引く。


「いいねぇ、今日はツイてる気がするわ。」


「その顔やめてください、絶対ロクなこと考えてないじゃないですか。」


そしてゲームが進んで両者狙い通りに場が展開されていく。


「ここで持ってきて、エネルギー貼って……。社長、そろそろ年貢の納め時ですよ。」


「いやぁ、まだ短絡的なんちゃいますのん? んじゃ、俺のターンだよな。」


渡理はカードを一枚、ニヤケ顔を隠すこともなく場に叩きつける。


「俺のターン! 罠カード! このカードが存在する限り補助札使用は禁止されるッ!!」


「そ、そう来ましたか。 でも、まだまだですよ……。」


檸檬は顔を曇らせるが、渡理の手は止まらない。さらにもう一枚を滑り込ませる。


「ついでに手札リセット! あちゃー、良い手札揃って来てただろうに、どんまい!」


「ちょっと待っ!? いや、今の流れ全部潰すんですか!?」


自分のターンで引き直したカードを見て、檸檬の表情が固まる。


「予定と違う……。」


「でしょうね。」


特に何も動かず檸檬のターンが終わり、渡理にターンが回る。


「そのベンチ、温存しといた切り札だよなー。さぞ逃げコストも重かろう、ひぇっひぇっひぇぇぇ!」


気味の悪い笑い声と共に渡理が提示したサポートカードの効果で檸檬のベンチのキャラが強制的に前に引きずり出される。


「くっ! 少し早いけど、もう逃げたりなんてしませんよっ!! この子で蹴散らして、さっさと外に連れ出してあげます!!」


「本音は、ゲームしたいだけなんだろ? 正直になっとけよ。」


さらに一枚置いて、場のエネルギーを弾くようにどかす。


「はい、エネルギー破壊。これで逃げる分も攻撃分も足りないな。」


「は………………。 はぁっ!? そういうことですか!? ひどいですよっ!! 人でなしっ!! 人非人っ!! 大っ嫌い!!」


「なんとでも言え、バーカァ!」


渡理は実にいい笑顔でケラケラと腹を抱えて笑いながら、まんまと策にハマった檸檬を嘲る。

檸檬はにっくき渡理を親の仇かのように睨みつける。


「この人間の風上にも置けないカスめっ!!」


流石に今の罵倒は渡理の鋼どころかタングステン製の心にも刺さったようで、そろそろ挑発をやめる。


「んー、なんか心が痛むような……。ま、次のゲームなら勝機あるかもよ。」


「あぁ~~~~!! もうっ!! 次ですッ!!!」


負けを認めた檸檬は、悔しさを噛み殺すように身じろぎしながら、渡理の歪んだ笑みを睨みつけた。

次に檸檬が机の上に広げたのはただのトランプのようだ。


「次は自信がありますよ! 神経衰弱なら純粋な記憶力勝負ですからし、いつもグータラしてる社長に遅れをとるほど私は馬鹿じゃありませんからね。」


「寝言は寝て言え。 檸檬が頭良かったタイミングとかいつだよ。」


軽口を交わしながら神経衰弱の準備が整い、渡理が不利な先行でゲームを始め出す。

「あー、6と4かー。」


「システム的に初手で当たるはずないでしょう。」


「ま、そりゃそうだ。」


そして檸檬のターンになり、2枚のカードをめくる。ハートのキングとクラブのキングが顔を見せた。


「ラッキー。」


「んなこと言いながら初手で当ててんじゃねぇよ。」


「運が良ければこれくらいあるでしょう。」


なんだかさっきと言っていることが違うが、檸檬が続いてカードをめくり、ターンは移ろいでいく。

そしてゲームが中盤を超えた頃、渡理が10組、檸檬は7組、残りのカードは10組。


「あれー? 俺より頭良いんじゃなかったっけか?」


「あんまり差ないじゃないですか。まだまだいつでも巻き返せますからねっ。」


渡理は檸檬のことを心の中であざ笑いながらカードをめくる。かと思われたが、めくろうと触れたカードをすぐにやめ、違うカードをめくる。

見事に8をそろえて見せた。


「余裕そうだが、大丈夫か? 檸檬の頭じゃ巻き返せないんじゃないか?」


実は渡理、先ほどからこのように触れるだけを何度も続けていた。


「やっぱり社長の癖に当てすぎですよ! 絶対イカサマしてません!?」


「やってないって、そんなに疑うなら調べてみろよ。ただ証拠が出なかったら問答無用で負けだけど。」


「そんなこと言う人がイカサマしてないとは思えないけど、一応やめときます……。」


(まあっ! イカサマしてるんだけどなぁああああああ!!!)


渡理の能力は生物にしか作用はしないが、刻印自体は可能であり、それの程度によって番号を区別していた。

しかし触れることでしか因子を確認できないため触れては離すといった行動を繰り返していたのだ。


(残念だが檸檬にはこのイカサマは見破れないぜ。 なぜならテメェは因子がわからねぇからなぁああああ!!! ファッハッハァー!!!)


依然としてポーカーフェイスを貫く渡理を多少は訝しむ檸檬だが、証拠が出ないことを恐れて踏み切れない様子。

8に続けて、クイーン、エースをそろえる。そこでターンが終了し、一気に大差をつけた渡理。


「そろそろ時間も遅くなってくるし、諦めても良いんじゃないか?」


しかしこのイカサマには一つ問題がある。既にめくったカードしかわからないという点である。

現在割れているカードは今めくった2と7と少なく、バレないように檸檬が引いたカードへ触れるのは控えめにしていたのが裏目に出ている。

そして渡理は能力頼りで一切トランプを記憶していない。

今現状の渡理と檸檬は13対7で残りは7組しか残っていない。もう後がない檸檬。


「ここで勝つので心配しなくて大丈夫ですよ社長。」


「……ふーん、あそ。」


この絶体絶命の状況下でも強気な発言をする檸檬。彼女はパチンコとか行かない方が良いのかもしれない。


「とりあえず社長がめくった2と7を取ります。」


「これで残り10枚だが、俺が一枚でも取れば、もう今日はやめだからな。」


「わかってますぅ。 そもそも、日頃の善行で徳を積んでる私と悪行で徳を掘り下げてる社長のことはちゃんと天の神様が見てくれてると思うんですよ。 だからこれくらいなら運で引けたって良くないですか?」


そう言いながら、カードをめくって、めくって、めくって、めくって、――――――。


そして――――――。


「いや、なんで俺が負けるんだああああ!!!! コンチクショウがああああ!!!!!!!」


「やったあああああああああ!!!!!!!」


奇跡の逆転によって全てを覆され、地面に突っ伏す渡理とガッツポーズで喜ぶ檸檬。


「さあ行きますよ社長っ!!!」

「え?」


そして檸檬はすぐに項垂れている渡理の首根っこを掴み、引きずりながら外へ連れ出した。

迅速に行わなければ駄々を捏ねて結局行かなくなることを前もって檸檬は理解していた。

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