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最後の光景

 私がまいちゃんと過ごし始めて数日がたった。「わんわん」にお漏らしをしてからは特に出来事のない、のんびりとした日々に心の底から感謝しつつも、過去の私への未練を捨てきる事は出来ていなかった。理由はわからない。あんなに嫌だった過去に未練を感じてしまう私という人間を。数日間、いろいろな事を考えながらまいちゃんと過ごしていた。私がこの数日でしたことは家でテレビを見て寝ていたくらいのものだ。ちなみにここ数日で分かった事なんて、今日が交通事故の23年前の9月28日である事と、異常な残暑により、今日の天気予報では35度を超えるだろうという事だけである。そんな日なのに、まいちゃんはこれから公園に行くらしい。「朝なら、まだ涼しいし大丈夫」と、おかあさんは言っていた。私はその元気さに私はとても感心する。まいちゃんが公園に行っている間に私は家で「わんわん」とお留守番するつもりだ。「わんわん」の横で寝ていると安心して熟睡してしまう私がここにいる。まいちゃんが速く公園に行かないかなー、と思っていたのもつかの間、まいちゃんが、私を見つめながら言った発言に私は絶望を感じた。


まいちゃん「わんた、連れてく。公園。一緒に遊ぶ。」


おかあさん「わかったわ。おかあさんが遠くでまいちゃんが遊んでいるのを一緒に見てるね」


私、心の声「私、外行きたくない。絶対いや」


本当にこれ以上もこれ以下もなかった。私は、そもそも小さいころから外で遊ぶ事は、本当に嫌いなのである。正直、私は外に行って遊ぶ人の気持ちを理解できるような気が全くしない。私がもし「影」の姿だったら、駄々をこねていると思う。絶対に行きたくなかったが、私はまいちゃんに捕まえられ抵抗することも無く、ドアの向こう側に連れていかれた。

外に出て数秒、わかった事がひとつだけある。それは、残暑でとても暑いという事である。まいちゃんは抱っこしながらお母さんと手をつないで歩いていた。暑い。本当に暑い。まいちゃんに抱っこされている事もあり、太陽の日差しに加えてアスファルトからの熱で私は意識が飛びそうだった。また、まいちゃんは公園で遊ぶ事が楽しみなようでピョンピョンと飛び跳ねていたこともあり、気持ち悪い。「お願いだ。普通に歩いてくれ」と思っていたら意外とすぐに公園についた。公園までの距離は感覚的に300メートルくらいで坂を下ったところにあるみたいだ。まいちゃんはお母さんに私を渡し遊びに行った。お母さんは、日陰になっているベンチにタオルを敷いて座らしてくれた。その後、お母さんはママ友と話していた。また、まいちゃんは公園で友達と遊んでいた。私はなぜ連れてこられたのかはわからないが現在座っているベンチは現在日陰になっており、心地の良い風邪が吹いていたので昼寝にはそこそこ良い環境であった。

私は、やる事がないので寝ていたのだが、まいちゃんの泣き声で起きてしまった。どうやら転んでしまったようで膝から血が流れてしまっていた。お母さんも駆け寄っていたが、泣き止まない。私のいるベンチまで、まいちゃんをお母さん連れてきて座らせた。


まいちゃん「えーん、わんた、ころんじゃって痛いよ。くすん」


おかあさんは水で流すねと言い膝の砂をペットボトルの水で流した後に、消毒液を傷口にかけた。


まいちゃん「しょーどく液が沁みていたいよ。うわーん。わんた。助けてよ」


そのように言われても私が何を言っても通じないと思っているので、気にしない事にした。どうせ私はぬいぐるみであり何をいっても通じることはないと思っているからである。


まいちゃん「わんた、無視しないでよ、わーんーたー、公園に来たくないのに連れてきたの拗ねてる?わんた。えーん」


私は正直、焦った。そしてびっくりした。もしかしたらこの子はわんたに感情があるのに気が付いてくれているのかもしれないと感じた。でも、ここ数日の間そのような事を感じた事はない。たまたまだと思うが図星を突かれた感覚だ。しかし、小さい子ならばぬいぐるみに気持ちがあると感じてもびっくりはしない。だとしても、公園に行きたくない事をばれてしまっていたかもしれない事にびっくりした。


おかあさん「泣いていても仕方がないからお水飲んで落ち着いたら帰るよ、はい水筒」


まいちゃん「ぐすん、うん」


数分後、まいちゃんは泣き止んだ。おかあさんは「帰ってお昼ご飯食べるよ」と言いおかあさんが私をもって立った。そしておかあさんのリュックから顔だけ出るような形で入れられた。まいちゃんは、ベンチからたった後「うん」と言い、帰路についた。


 帰り道、この親子は、仲良くお話しながら帰っていた。私は話しているのを聞いていて気になる事が一つだけあった。私は正直この話の内容を理解するほどの頭が回っていなかった。


まいちゃん「まい昨日変な夢見た」


おかあさん「どんな夢だったの?」


まいちゃん「交通事故の夢。女の人、くるまが前から飛んできた。まいちゃんすごい怖かった」


私、心の声「⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」


まいちゃん「わんた、心ある。」


私、心の声「⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」


おかあさん「まいちゃんは、想像力があっていいわね。なんて言っていたの?」


まいちゃん「また、会いに来るねって」


この、まいちゃんが見た光景。それは私が「八雲影」だったころに見た最後の光景であった。私はそのことについて理解することが出来ず、思考が停止した。もしかしたら「わんた」を公園に連れて行ったのは、お話できるかもと思ったからかなと私は考えた。しかしながら、まいちゃんはなぜ「わんた、心ある」と発言したのか。また、なぜ車が飛んでくる夢を見たのか。私にはまったく理解できなかった。

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