波濤の島々と高笑いの歌、そして水没の危機！
『混沌の魔境』を後にし、一行は再び陸路を進むことになった。ギアハルトからアクアリーヌまでは、広大な大陸を横断する必要がある。その道中も、様々な魔物たちが彼らの行く手を阻んだ。しかし、ルナとルクリアの破壊と美学は、どんな魔物をも寄せ付けなかった。
「グオオオオオオオオオオッ！！！」
荒野を突き進む馬車の前に、巨大なゴブリンの群れが現れた。彼らは、錆びた武器を手に、奇声を上げながら襲いかかってくる。
「ちっ、鬱陶しいな！ まとめてぶっ飛ばしてやるぜ！」
ルナは、不機嫌そうに呟くと、掌から紫色の魔力を放った。
「爆裂殲滅弾！！！」
ルナの叫びと共に、魔力の塊がゴブリンの群れに直撃し、轟音と共に爆散させた。肉片と血が飛び散り、周囲の地面は大きく抉られた。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス！ なんて無様な魔物たちでしょう！ わたくしの美しき氷晶魔法で、あなたたちを永遠に凍りつかせて差し上げますわ！ 氷の女王の吐息！！！」
ルクリアは、ルナの攻撃に遅れて、氷の槍を放った。その氷の槍は、爆散したゴブリンの残骸をさらに粉砕し、残ったゴブリンたちを次々と氷の棺へと閉じ込めていく。氷の棺は、ミシミシと音を立てながら、次々と粉砕されていく。
「うるせぇ！ てめぇは邪魔だ！ 余計なことすんじゃねぇ！」
二人の言い争いは、荒野に響き渡った。ゼフィロスは、その喧騒の中で、ただひたすらに馬車を走らせ続けた。彼の胃は、もはや何も感じない。ただ、漠然とした疲労感だけが、彼の全身を支配していた。
何日も旅を続け、一行はついに大陸の東端、海に面した港町へとたどり着いた。港町は、潮の香りと、活気ある人々の声で満ち溢れていた。遠くには、紺碧の海が広がり、水平線の彼方には、かすかに島影が見える。あれが、神秘の島国アクアリーヌだろうか。
「おおっ！ 海だ！ 海だぜ、ゼフィロス！ 美味い魚が山ほどいそうじゃねぇか！ 早く船に乗るぞ！」
ルナは、海を見て、目を輝かせた。彼女の顔には、海の幸への期待が露わになっていた。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス！ なんて美しき紺碧の海でしょう！ わたくしの美貌が、この海をさらに輝かせて差し上げますわ！ まるで、わたくしが海の女神であるかのようですわね！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げ、紺碧の海を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして海の旅への期待が浮かんでいる。
ゼフィロスは、港町の喧騒の中で、安堵の息を漏らした。陸路の旅は終わった。しかし、彼の胃は、まだ安心できなかった。海の旅、そして神秘の島国アクアリーヌには、一体何が待ち受けているのだろうか。彼の胃袋は、新たな不安を抱えながら、船へと乗り込んだ。
地球の最果て、紺碧の海に浮かぶ神秘の島国アクアリーヌ。船が港に近づくにつれて、潮の香りはより一層濃厚になり、遠くから波の音が聞こえてきた。空はどこまでも青く澄み渡り、エメラルドグリーンの海には、色とりどりの魚たちが泳ぎ回るのが見えた。島全体が、生命の息吹に満ちているかのようだった。しかし、ゼフィロスの胃は、その美しい光景を前にしても、安堵することなく、むしろ新たな不安で締め付けられていた。この平和な島で、一体どれほどの破壊が繰り返されるのか、想像もつかなかった。
「おおっ！ ついに海だぜ、ゼフィロス！ そして、あの青さ！ きっと美味い魚が山ほどいるに違いねぇ！ さっさと捜索始めるぞ！」
ルナは、船の甲板から身を乗り出し、興奮したように叫んだ。彼女の瞳は、海の幸への期待でギラギラと輝いている。彼女の金色の髪は、潮風になびき、まるで海に飛び込む前の漁師のようだった。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス！ なんて美しき紺碧の海でしょう！ わたくしの美貌が、この海をさらに輝かせて差し上げますわ！ まるで、わたくしが海の女神であるかのようですわね！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げ、紺碧の海を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして新たな舞台への期待が浮かんでいる。
「は、はい！ かしこまりました……」
ゼフィロスは、深いため息をついた。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、諦めに満ちていた。船が港に着き、ルナとルクリアが我先にと上陸する。港には、新鮮な魚介類が並べられ、活気に満ちていた。
「ゼフィロス！ 見ろ！ この魚たち！ めっちゃ美味そうじゃねぇか！ あたし様の腹が鳴り止まねぇぜ！」
ルナは、魚が並べられた屋台を見て、目を輝かせた。彼女の顔には、食欲を隠しきれない様子が浮かんでいる。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス！ わたくしも、そろそろお腹が空いてまいりましたわ！ 今日の昼食は、このアクアリーヌでしか食べられないという、最高級の海の幸を使った、上品で繊細な料理でよろしくってよ！ もちろん、器は純金製で、飲み物は、最高級の海のワインに限りますわ！」
ルクリアもまた、優雅な仕草で、食事の催促をした。
「は、はい！ かしこまりました……」
ゼフィロスは、よろよろと港の食堂へと向かった。彼の胃は、もはや何も感じない。ただ、漠然とした疲労感だけが、彼の全身を支配していた。
昼食は、海の幸をふんだんに使った豪華なものだった。ルナは、巨大な伊勢海老や、新鮮な魚の刺身を豪快に平らげ、ルクリアは、見た目も美しい魚介のスープや、珍しい海藻を使ったデザートを優雅に味わう。二人の食欲は、どんな過酷な環境でも揺らぐことがなかった。ゼフィロスは、もはや食事をする気力もなく、ただ黙って二人を見つめていた。彼の心の中には、この旅路の終焉を願う、かすかな祈りが芽生えていた。
昼食を終え、一行はリラ＝マリンフォークが消えたという「海の泉」へと向かった。泉は、島の中心部にあり、その水は、驚くほど澄み切っていた。泉の底には、色とりどりのサンゴ礁が広がり、無数の魚たちが泳ぎ回っているのが見える。ゼフィロスの心には、この美しい場所が、再び破壊の舞台となることへの、深い悲しみが募っていた。
「ちっ、こんなチマチマした泉じゃ、捜索も大変じゃねぇか。さっさと公爵令嬢とやらを見つけて、美味いモンでも食いに行きてぇぜ！」
ルナは、泉の水を覗き込み、不機嫌そうに呟いた。彼女の顔には、苛立ちと、そしてどこか面倒くさそうにしている様子が浮かんでいる。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス、ご覧なさい！ なんて美しき泉でしょう！ わたくしの美貌が、この泉をさらに輝かせ、真実の扉を開いて差し上げますわ！ まるで、わたくしがこの泉の女神であるかのようですわね！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げ、泉を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして新たな謎への期待が浮かんでいる。
「うるせぇな！ 美学とかどうでもいいから、さっさと探索するぞ！ 魚ごときに金なんか使ってられっか！」
ルナは、ルクリアをにらみつけ、もはや我慢の限界といった様子で、掌を泉の底へと突き出した。彼女の瞳は、美食への渇望と、どこか金銭的な節約への意識で、ギラギラと輝いている。
「爆裂殲滅弾！！！」
ルナの叫びと共に、彼女の掌から、巨大な紫色の魔力の塊が放たれた。それは、泉の底へと一直線に突き進み、轟音を響かせた。サンゴ礁は、ルナの爆裂魔法をまともに受け、轟音と共に木っ端微塵に砕け散った。色とりどりの魚たちは、驚いて一斉に逃げ惑う。泉の水は、爆発の衝撃で大きく波立ち、泥と泡が舞い上がった。
「なっ……なんて破壊力ですことルナ！ わたくしの美しき氷槍乱舞の方が、優雅で美しいですわ！」
ルクリアは、ルナの力任せな探索に驚きながらも、負けじと掌から氷の槍を連射した。その氷の槍は、木っ端微塵になったサンゴ礁の残骸をさらに粉砕し、逃げ惑う魚たちに次々とぶち当たっていく。魚たちは、氷の槍を受けて瞬時に凍りつき、水面に浮かんできた。
「うるせぇ！ てめぇは邪魔だ！ 余計なことすんじゃねぇ！」
ルナは、破壊の限りを尽くすルクリアに、苛立ちを隠せない様子で怒鳴りつけた。
漁師たちは、その光景を目の当たりにし、顔面蒼白で叫んだ。
「伝説の魔女が海を汚してるーっ！」「我々の漁場がーっ！」
彼らの顔には、絶望と、そして怒りが入り混じっていた。彼らにとって、この泉は、信仰の対象であり、生活の糧である海そのものだったのだ。
ゼフィロスは、その光景を目の当たりにし、全身が震え上がった。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、ただただ虚無感に満ちていた。彼の脳裏には、破壊されたサンゴ礁と、凍りついた魚たちの残骸、そして王室への莫大な「環境破壊賠償金」の請求が、鮮明に浮かんでいた。彼は、水面に浮かぶ魚の死骸を避けながら、どうにか二人の後を追った。
紺碧の海に浮かぶ神秘の島国アクアリーヌ。その海岸線にぽっかりと口を開けた洞窟は、潮の満ち引きによってその姿を変える、神秘的な場所だった。洞窟の奥からは、かすかに、そして不気味なほど、歌声のようなものが聞こえてくる。それは、かつてセシリア公爵令嬢が失踪した際に流れていたディスコダンスの音楽と、どこか海の調べが混じり合った、奇妙な旋律だった。ゼフィロスの胃は、その不気味な歌声と、目の前に広がる暗い洞窟に、新たな不安を抱いていた。
「ちっ、なんだこの薄気味悪い歌声は！ さっさと元凶をぶっ飛ばして、美味いモンでも食いに行きてぇぜ！」
ルナは、洞窟の入り口で不機嫌そうに呟いた。彼女の顔には、この不気味な雰囲気に苛立ちを覚えている様子が浮かんでいる。彼女の金色の髪が、洞窟から吹き出す潮風になびいている。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス、ご覧なさい！ なんて神秘的な歌声でしょう！ まるで、わたくしの美貌が、この歌声に共鳴しているかのようですわね！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げ、洞窟の入り口を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そしてこの謎めいた歌声への好奇心が浮かんでいる。
「うるせぇな！ 美学とかどうでもいいから、さっさと中に入るぞ！ あたし様の腹は限界なんだよ！」
ルナは、ルクリアをにらみつけ、もはや我慢の限界といった様子で、掌を前方へと突き出した。彼女の瞳は、美食への渇望で、ギラギラと輝いている。
洞窟の中は、暗く、湿っていた。足元は滑りやすく、どこからか水滴が落ちる音が響いている。彼らが奥へと進むにつれて、歌声は徐々に大きくなっていった。
「ゼフィロス！ この歌声は、まさか、リラ＝マリンフォークが残した歌声なのか！？」
ルナは、ゼフィロスに尋ねた。彼女の顔には、真剣な表情が浮かんでいる。
「は、はい！ この歌声の周波数は、セシリア公爵令嬢が残した通信機から発せられていたものと酷似しています……。おそらく、リラ＝マリンフォークが、この歌声を残したのでしょう……」
ゼフィロスは、震える声で答えた。彼の胃は、この奇妙な歌声と、洞窟の暗闇に、さらなる不安を覚えていた。
「おーっほっほっほっ！ なんて美しき歌声でしょう！ わたくしの美声で、この歌を再現してさしあげますわ！」
ルクリアは、突如としてそう言い放つと、目を閉じ、大きく息を吸い込んだ。彼女の顔には、自らの歌声に絶対的な自信を持っているかのような表情が浮かんでいる。
ゼフィロスは、嫌な予感がした。彼の胃は、全力で危険信号を発していた。しかし、もう遅い。
「むにゃむにゃ……むにゃむにゃ……ぐがー！」
ルクリアの口から放たれたのは、美声とは程遠い、破壊的な音痴歌唱だった。その歌声は、洞窟の壁に反響し、おぞましい不協和音となって響き渡る。ゼフィロスの鼓膜は、その衝撃で破裂しそうになった。彼の胃は、胃液が逆流するような感覚に襲われた。
「な、なんだこの歌声は！ 拷問か！？」
ルナは、耳を塞ぎながら叫んだ。彼女の顔には、苦痛と、そして怒りが入り混じっていた。
しかし、その破壊的な歌声は、思わぬ影響を及ぼした。洞窟の奥から、何かがざわめくような音が聞こえてきた。そして、海中の生態系が、その歌声によって狂い始めたのだ。洞窟の壁に張り付いていたサンゴは、その衝撃で砕け散り、水中の魚たちは、まるで狂ったかのように泳ぎ回る。
そして、その歌声に刺激されたかのように、洞窟の奥から、巨大な影がゆっくりと姿を現した。それは、深海の闇から現れたような、おぞましい姿をした巨大な海の魔物だった。その魔物の瞳は、ルクリアの歌声に怒りを覚えているかのように、赤く輝いていた。
「グオオオオオオオオオオッ！！！」
魔物は、怒りの咆哮を上げ、ルクリアへと向かって突進してきた。その巨体は、地響きを立て、周囲の水を巻き上げた。
「ひぃっ！ なんてことですの！ わたくしの美声が、こんな醜い魔物を刺激するなんて！」
ルクリアは、魔物の突進に驚き、顔面蒼白で叫んだ。彼女の顔には、恐怖と、そして自らの歌声が招いた事態への困惑が入り混じっていた。しかし、彼女はすぐに冷静さを取り戻し、掌から魔力を放った。
「氷壁結界！！！」
ルクリアの叫びと共に、彼女の周囲に、巨大な氷の壁がいくつも出現した。氷の壁は、魔物の突進を食い止め、ルクリアを囲い込んだ。魔物は、氷の壁に体当たりを繰り返し、ミシミシと音を立てながら氷の壁を砕こうとする。
「くっ……なんて頑丈な壁ですこと！ ですが、わたくしの美貌は、こんな魔物に傷つけさせるわけにはいきませんわ！」
ルクリアは、氷壁結界の中で必死に耐えていた。彼女の顔には、苦痛と、そしてどこか、自らの美貌を守ろうとする執念が浮かんでいる。
ルクリアが巨大な海の魔物に追い回され、氷壁結界でなんとか凌いでいる間、ルナは、その様子を冷めた目で見ていた。彼女の顔には、ルクリアの自業自得だというような表情が浮かんでいる。しかし、やがて、ルナは深いため息をついた。
「ちっ、いつまで見てりゃいいんだよ。結局、あたし様が助けてやんねぇとダメじゃねぇか！」
ルナは、そう呟くと、獰猛な笑みを浮かべた。彼女の瞳には、強敵との戦いへの純粋な喜びと、そしてどこか底知れない破壊衝動が宿っていた。彼女の全身から、紫色の魔力が噴出し、髪は逆立ち、瞳は不気味な光を放つ。
「てめぇ、邪魔なんだよ！ さっさとどけ！ 爆裂殲滅弾！！！」
ルナの叫びと共に、彼女の掌から、これまでにないほどの巨大な紫色の魔力の塊が放たれた。それは、氷壁結界に体当たりを繰り返す巨大な海の魔物へと一直線に突き進み、轟音を響かせた。魔物は、ルナの爆裂魔法をまともに受け、轟音と共に爆発した。肉片と墨が周囲に飛び散り、洞窟の中は、一瞬にして黒く染まった。
「なっ……なんて破壊力ですことルナ！ わたくしの美しき氷槍乱舞の方が、優雅で美しいですわ！」
ルクリアは、ルナの力任せな救援に驚きながらも、負けじと掌から氷の槍を連射した。その氷の槍は、爆散した魔物の残骸をさらに粉砕し、洞窟の壁にぶち当たっていく。洞窟の壁は砕け散り、岩の破片が飛び散った。
「うるせぇ！ てめぇは邪魔だ！ 余計なことすんじゃねぇ！」
ルナは、破壊の限りを尽くすルクリアに、苛立ちを隠せない様子で怒鳴りつけた。
ゼフィロスは、その光景を目の当たりにし、全身が震え上がった。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、ただただ虚無感に満ちていた。彼の脳裏には、破壊された魔物の残骸と、半壊した洞窟、そして王室への莫大な「環境破壊賠償金」と「洞窟修繕費用」の請求が、鮮明に浮かんでいた。彼は、砕け散る岩の破片を避けながら、どうにか二人の後を追った。
巨大な海の魔物を倒し、洞窟の奥へと進むと、そこには、祭壇のような場所があった。祭壇は、サンゴと貝殻で飾られており、その中央には、小さな泉がある。泉の水は、わずかに発光しており、その光が、洞窟全体を不気味に照らしていた。そして、その泉のほとりには、リラ＝マリンフォークが残したと思われる白いドレスと、古びた巻物が置かれていた。
「ちっ、また誰もいやしねぇのかよ！ 無駄な破壊だったじゃねぇか！」
ルナは、祭壇の周囲を見回し、不機嫌そうに呟いた。彼女の顔には、期待外れだったことへの苛立ちと、どこか不満げな表情が浮かんでいる。
「おーっほっほっほっ！ ゼフィロス！ ご覧なさい！ なんて美しき祭壇でしょう！ わたくしの美貌が、この祭壇をさらに輝かせ、真実の扉を開いて差し上げますわ！ まるで、わたくしがこの祭壇の真の女神であるかのようですわね！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げ、祭壇を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そしてこの謎めいた状況への好奇心が浮かんでいる。
ゼフィロスは、祭壇の上の巻物を手に取った。巻物には、リラ＝マリンフォークの筆跡で、何かの詩のようなものが記されていた。そして、その中に、奇妙な紋様がいくつも描かれていた。その紋様は、これまでの失踪事件で共通して現れた「闇の連鎖」の魔力の波動と酷似していることが明らかになった。
「は、はい！ この巻物には……リラ＝マリンフォークの歌声の楽譜と、そして……『闇の連鎖』の紋様が記されています……。そして、この歌声は、特定の周波数を持ち、何かを呼び出す力があるようです……」
ゼフィロスは、震える声で答えた。彼の胃は、この恐ろしい真実を前に、激しく鼓動していた。リラ＝マリンフォークは、その歌声で、何かを呼び出そうとしていたのかもしれない。そして、その呼び出されたものによって、彼女自身が「闇の連鎖」の贄となってしまったのだろうか。
さらにゼフィロスは、巻物の隅に描かれた、古びた人魚の絵と、その横に記された古代文字に目を留めた。それは、この島に伝わる古代の人魚の儀式に関する記述だった。そして、その儀式は、世界各地の令嬢たちに共通する特定の「血筋」を持つ者を必要とすることが示唆されていた。
「なるほどな……。つまり、あの歌声が、この儀式と関係があるってことか。そして、あのバナナの皮も……」
ルナは、そう呟くと、ニヤリと口角を吊り上げた。彼女の瞳には、事件の全貌が見えてきたことへの興奮と、そして、この「闇の連鎖」とやらをぶち壊してやるという、強い決意が宿っていた。
「おーっほっほっほっ！ なんてことですの！ わたくしの美貌と才覚が、こんなにも恐ろしい真実を解き明かしたのですわ！ ゼフィロス！ この儀式を、いますぐ止めなさいませ！ わたくしが、その醜い儀式を、美しく粉砕して差し上げますわ！」
ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女の顔には、自らの美学を汚されたことへの憤りが浮かんでいた。
ゼフィロスは、頭を抱えながら、これまでの失踪事件の情報を整理し始めた。ファティマ王女の身体能力、セシリア公爵令嬢の魔導技術、リラ＝マリンフォークの美声……。そして、判明した「血筋」の共通点。彼の脳裏には、これらの断片的な情報が、ゆっくりと繋がり始める光景が浮かんでいた。
失踪した令嬢たちの血筋の共通点：
ファティマ王女（灼熱の砂漠王国サハラデス）： 王族としての強靭な肉体と生命力、そしてその血筋に伝わる魔力への強い適応性。
セシリア＝フォン＝ギアハルト公爵令嬢（西の技術大国ギアハルト）： 最高科学庁の公爵令嬢という立場に相応しい極めて高い知性と分析能力、そして代々受け継がれる魔導技術への深い理解と応用力。
リラ＝マリンフォーク令嬢（神秘の島国アクアリーヌ）： 伝説の「人魚の歌姫」の血を引く、癒しと魅了の美声、そして水や生命との共鳴能力。
ゼフィロスは、これらの共通点をリストアップしながら、愕然とした。それぞれの令嬢が持つ能力は、単なる個人差ではなく、その「血筋」によって受け継がれた、特定の性質と密接に結びついているのだ。そして、「闇の連鎖」は、この「血筋」の特性を利用して、何かを召喚しようとしている……。
