表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

灼熱の砂漠と高笑いの残響、そして予期せぬ破壊!  その3

ゼフィロスは、震える手で地図を広げた。


「は、はい! 実は、先ほど王宮より緊急の連絡が入りまして……」


ゼフィロスは、言葉を詰まらせながら、王宮からの報せを二人に伝えた。王宮からの伝令は、ファティマ王女の失踪事件に関するもので、その手がかりを求めてルナたちに協力を要請する内容だった。王宮からの連絡には、事件の概要と、王女の私室に残された「バナナの皮」という不可解な遺留品のことが詳しく記されていた。


「バナナの皮だとぉ!? なんだそりゃ!? 王族の娘が消えて、バナナの皮が残されてるってのか!? ふざけてんのか!?」


ルナは、思わず噴き出した。彼女の顔には、困惑と、そしてどこか面白がるような表情が浮かんでいた。しかし、すぐに彼女の顔は真剣なものに変わる。


「だが、王族が消えるってのは、尋常じゃねぇな……。しかも、王都の貴族の娘たちも消えてるんだろ? この事件と関係があるかもしれねぇ」


ルナは、そう呟くと、ニヤリと口角を吊り上げた。彼女の瞳には、新たな「獲物」を見つけたかのような、狩人のような光が宿っていた。彼女にとって、この不可解な事件は、新たな挑戦であり、そして新たな美食への道標となるかもしれない。


「おーっほっほっほっ! バナナの皮ですって!? なんて滑稽な事件でしょう! ですが、わたくしの美貌と才覚があれば、どんな謎でも解き明かすことができますわ! ゼフィロス! その『灼熱の砂漠王国サハラデス』とやらに向かいなさいませ! わたくしが、この事件の真実を、美しく解き明かして差し上げますわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして新たな謎への挑戦を楽しんでいるかのような表情が浮かんでいる。


「よし! ゼフィロス! 砂漠に向かうぞ! 食料と水を、ありったけ買い込むぞ! 金は、もちろん王室持ちでよろしくな!」


ルナは、そう言い放つと、馬車へと乗り込んだ。彼女の瞳は、新たな冒険への期待で、キラキラと輝いている。


「は、はい! かしこまりました……」


ゼフィロスは、深いため息をついた。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、諦めに満ちていた。灼熱の砂漠……それは、彼の胃袋にとって、新たな地獄の始まりを意味していた。彼は、王女失踪の不可解な手がかり「バナナの皮」が、一体何を意味するのか、漠然とした不安を抱えながら、馬車を砂漠へと向かわせた。


聖なる森を後にし、馬車は広大な平原を横切り、やがて地平線の向こうに、赤茶けた大地が広がり始めた。空気は次第に乾燥し、熱気を帯びてくる。空は、抜けるような青空だが、太陽の光は、まるで容赦なく大地を焼き尽くすかのように、強烈に降り注いでいた。


「うわっ、なんじゃこりゃあ! 熱っつー! まるで地獄じゃねぇか!」


ルナは、馬車の窓から顔を出し、そのあまりの暑さに顔をしかめた。彼女の金色の髪が、熱気に揺らめいている。彼女の顔には、不快感が露わになっていた。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! なんて過酷な場所ですこと! わたくしの美しき肌が、砂漠の太陽で焼けてしまいますわ! わたくしに相応しい、日差し避けの傘と、最高級の化粧水を早く!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女は、すでに大きな日傘を差し、涼しげな顔をしているが、その言葉はゼフィロスの胃をさらに抉る。


「うるせぇな! てめぇはそんな優雅にしてられるからいいだろうが! あたし様は、汗でベタベタだぜ!」


ルナは、苛立ちながらルクリアをにらみつけた。彼女の額には、大粒の汗がにじんでいる。


ゼフィロスは、二人の口論を聞きながら、静かに景色を眺めていた。道は、乾いた砂地となり、馬車の車輪は、砂にめり込むたびに重い音を立てる。周囲には、背の低いサボテンがまばらに生えているだけで、生命の気配はほとんど感じられない。遠くには、蜃気楼がゆらゆらと揺れ、幻のように見え隠れしていた。空気は、熱風となり、ゼフィロスの顔を焼く。彼の心には、新たな困難への不安と、そしてこの先の旅路への絶望が入り混じっていた。


「ゼフィロス! そろそろ腹減っただろうが! 飯にしろ! こんな暑いとこじゃ、食欲も湧かねぇけどな!」


ルナの声が、馬車の中に響き渡った。彼女の食欲は、どんな過酷な環境でも揺らぐことがなかった。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! わたくしも、そろそろお腹が空いてまいりましたわ! 今日の昼食は、わたくしの美貌に相応しい、上品で繊細な料理でよろしくってよ! もちろん、砂漠の中でも、最高の食材を使ったものを!」


ルクリアもまた、優雅な仕草で、食事の催促をした。


ゼフィロスは、深いため息をついた。彼の胃は、もはや何も感じない。彼は、もはや思考を伴わず、ただひたすらに食事の準備を続ける機械と化していた。


馬車の中には、大量の食料が積まれていたが、砂漠の熱気の中で、それらの食料がどの程度持つのか、ゼフィロスは不安だった。ルナは、それらの食料の中から、干し肉と、固いビスケットを取り出した。


「フン、こんなとこじゃ、こんなもんが精々か。まぁ、美味いなら食ってやるよ」


ルナは、そう言いながら、豪快に干し肉を齧り付いた。肉の旨味が口いっぱいに広がり、彼女は満足げな唸り声を上げる。


「おーっほっほっほっ! ルナ、あなたのような野蛮な食べ方では、わたくしの魔力が濁ってしまいますわ! ゼフィロス、わたくしには、この砂漠でも凍らせることができる氷で作った飲み物と、最高級のドライフルーツを用意なさいませ!」


ルクリアは、干し肉を食べるルナを見て、顔をしかめた。彼女は、優雅にドライフルーツを口に運び、それに続く冷たい飲み物を丁寧に味わっていた。彼女は、一口食べるごとに、詩的な言葉でその味を表現し、高笑いを響かせた。


「うるせぇな! 美味いもんは美味いんだよ! てめぇの能書きはいいから、さっさと食え!」


二人の言い争いは、再び馬車の中に響き渡った。ゼフィロスは、その喧騒の中で、ただひたすらに食事の準備を続ける。彼の胃は、もはや何も感じない。ただ、漠然とした疲労感だけが、彼の全身を支配していた。


灼熱の砂漠王国サハラデス――その威容を誇る王宮も、第一王女ファティマ=アル=マハラフの失踪という未曾有の事態に、活気を失っていた。太陽が容赦なく降り注ぐ昼下がり、ルナとルクリアを乗せた馬車は、王宮の門をくぐり、広大な中庭を進む。砂漠の熱風が、ざわめくように彼らを包み込んだ。ゼフィロスの胃は、既に砂漠の乾燥した空気に完全に順応し、もはや何も感じない。彼の心は、ただただこの旅の終焉を願っていた。


「ちっ、こんな暑いとこで、王族の娘が消えるなんて、やってらんねぇな。早く事件を解決して、美味いもん食いてぇぜ!」


ルナは、馬車の窓から、王宮の砂岩の壁を眺めながら、不機嫌そうな顔で呟いた。彼女の顔には、苛立ちと、そしてどこか、未知の美食への期待が入り混じっていた。

灼熱の砂漠王国サハラデス。その中心にそびえる王宮は、日中の砂漠の熱を吸い込み、夜になってもなお、じっとりとした暑さを保っていた。王宮の一室、ファティマ王女の私室は、まるで時が止まったかのように静まり返っている。しかし、ゼフィロスの胃は、その静寂とは裏腹に、不安でざわめいていた。王女失踪の報せを受けて、急遽この地へと赴くことになった一行は、今、その事件現場に立っていた。


「くっ……この暑さで胃の調子がさらに……」


ゼフィロスは、額に滲む汗を拭いながら、王女の部屋を見回した。豪華絢爛な調度品、壁一面に描かれた砂漠の精霊たちの絵、そして部屋の隅に置かれた瞑想用の黄金の絨毯。全てが整然としているにもかかわらず、そこに王女の姿はない。


「ちっ、こんな暑苦しい部屋で瞑想なんて、あたし様には無理だな。とっとと王女とやらを見つけて、美味いモンでも食いに行きてぇぜ!」


ルナは、開け放たれた窓から吹き込む熱風に、不機嫌そうに顔をしかめた。彼女の金色の髪が、湿った熱気の中でまとわりつく。美食への渇望が、彼女の顔にありありと浮かんでいた。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス、ご覧なさい! この部屋の豪華さは、まさにわたくしの美貌に相応しいですわ! ファティマ王女も、さぞかし美しい方だったのでしょうね! わたくしの美学に共鳴する気配がしますわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げ、部屋の調度品を品定めするように眺めている。彼女の瞳は、王女の美的センスに興味を抱いているかのようだった。


「うるせぇな! 美学とかどうでもいいから、さっさと手がかりを探すぞ! あたし様の腹は限界なんだよ!」


ルナは、ルクリアをにらみつけ、部屋の中央にある黄金の絨毯に視線を向けた。その上には、王宮魔術師団長が報告した通り、真新しい、熟れすぎたバナナの皮が、奇妙なほど滑稽に転がっていた。


「これが例のバナナの皮か……。ふざけてんのか? 王女が消えて、こんなもん残されてるなんて」


ルナは、バナナの皮を足でツンツンとつついた。その表情には、困惑と、そしてどこか侮辱されたような苛立ちが入り混じっていた。


「おーっほっほっほっ! ルナ! バナナの皮に足で触るなど、なんて野蛮なことを! これは、わたくしたちの知性を試す、高度な謎解きの手がかりですわ!」


ルクリアは、バナナの皮をじっと見つめ、何かを思考しているかのような表情を浮かべた。彼女は、まるで芸術作品を鑑賞するように、そのバナナの皮を観察している。


ゼフィロスは、そのバナナの皮を見て、背筋が凍りつくのを感じた。王女の失踪と、この奇妙な遺留品。彼の胃は、再びキリキリと痛み始めた。


「王宮魔術師団長の話では、この部屋は堅牢な結界と砂の精霊によって守られていたはずだと言っていました。外部からの侵入は不可能だと……」


ゼフィロスは、震える声で報告した。彼の頭の中では、様々な可能性が渦巻いていた。内部犯行か、それとも精霊の仕業か。しかし、このバナナの皮は、あまりにも不可解だった。


ルクリアは、ゼフィロスの言葉を聞くと、突然、高笑いを響かせた。


「おーっほっほっほっほっ! ゼフィロス! なんて無知なことを! わたくしの知性をもってすれば、この程度の謎、一瞬で解き明かせますわ! 結界は、あくまで外からの侵入を防ぐもの! しかし、中から発動される魔法や、物理的な破壊には無力ですわ!」


ルクリアは、そう言い放つと、突然、部屋の壁を触り始めた。彼女の指先は、壁の表面を滑るように動き、まるで何かを探しているかのようだった。ルナは、ルクリアの行動に訝しげな表情を浮かべている。


「おい、ルクリア。てめぇ、何やってんだ? そんなとこ触って、何かわかるのかよ?」


ルナは、不機嫌そうな顔で尋ねた。


「おーっほっほっほっ! ルナ! わたくしの知性は、あなたのような脳筋には理解できないでしょうね! わたくしは、この部屋の構造と、王女の瞑想時の行動、そしてこのバナナの皮の配置から、ある仮説を立てていますわ!」


ルクリアは、そう言い放つと、突然、壁の一部に手を当て、魔力を集中させた。彼女の掌から、白い光が放出され、壁に小さな亀裂が入り始めた。


「なっ……てめぇ、何してんだ!? 壁を壊す気か!?」


ルナは、驚いて叫んだ。しかし、ルクリアは、ルナの言葉に耳を傾けることなく、さらに魔力を集中させていく。壁の亀裂は、徐々に広がり、やがて、壁の一部が大きく崩れ落ちた。


「おーっほっほっほっ! 見つけましたわ! やはり、わたくしの知性は、この世界で最も優れていますわ!」


ルクリアは、高笑いを響かせた。壁が崩れ落ちた場所には、隠された空間が現れ、その奥には、地下へと続く階段があった。そこからは、ひんやりとした空気が流れ出し、奥から、微かに、そして不気味なほどの砂の匂いが漂ってくる。


「なっ……なんだと!? 地下への階段だと!?」


ルナは、驚いて目を見開いた。彼女の顔には、新たな発見への興奮が浮かんでいた。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! わたくしの知性で場所を特定したのですわ! わたくしの美貌だけでなく、知性もまた、この世界で最も優れているのですわ!」


ルクリアは、得意げに胸を張り、高笑いを響かせた。彼女の顔には、自らの功績に満足しているかのような表情が浮かんでいる。


「うるせぇ! てめぇは邪魔だ! わめいてないで、さっさと降りるぞ!」


ルナは、そう言い放つと、ルクリアを一蹴し、地下へと続く階段を降り始めた。彼女の足取りは、新たな謎へと向かう狩人のように軽やかだった。


ゼフィロスは、呆然と、ルクリアが壁に開けた大穴と、そこから続く地下への階段を見つめていた。彼の胃は、今や痛みさえ通り越して、ただただ虚無感に満ちていた。彼の脳裏には、また新たなトラブルと、王室への莫大な請求額が積み上がっていく光景が鮮明に浮かんでいた。


地下へと続く階段は、薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。階段の壁には、古代の象形文字が刻まれており、そこがただの地下室ではないことを示唆していた。一歩足を踏み入れるごとに、足元から砂が舞い上がり、不気味なほど静まり返っている。


「ちっ、なんだか薄気味悪いところだな。こんなとこに、王女がいるのかねぇ?」


ルナは、階段を降りながら、不機嫌そうな顔で呟いた。彼女の顔には、暗闇への不快感と、そしてどこか、未知の場所への警戒心が入り混じっていた。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス、ご覧なさい! この神秘的な地下空間が、わたくしの美貌をさらに際立たせてくれますわ! まるで、わたくしがこの地下神殿の女神であるかのようですわね!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げ、薄暗い地下空間を背景に、優雅にポーズを決めた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして地下神殿の神秘への期待が浮かんでいる。


「うるせぇな! てめぇの高笑いが、せっかくの不気味な雰囲気を台無しにしてるだろうが!」


ルナは、不機嫌そうな顔でルクリアをにらみつけた。二人の口論は、地下空間に響き渡り、不気味なほど反響した。


ゼフィロスは、二人の口論を聞きながら、静かに周囲を観察していた。階段の先には、広大な空間が広がっていた。そこは、古代の地下神殿のようだった。中央には、巨大な祭壇が置かれ、その周囲には、無数の石像が並んでいる。石像は、砂漠の精霊たちを表しているかのようだった。空気は重く、そしてどこか澱んだような匂いがする。彼の心には、明確な不安感が芽生えていた。この場所は、ただの地下室ではなく、何か不穏な力が潜んでいることを示唆していた。


神殿の奥へと進むと、祭壇の周囲に、いくつかの足跡が残されているのを見つけた。足跡は、新しいもので、王女の足跡ではないように見えた。


「ゼフィロス! この足跡、誰のものだ!? 王女の足跡じゃねぇぞ!」


ルナは、足跡を指差し、ゼフィロスに尋ねた。


「は、はい! この足跡は……明らかに、男性の足跡でございます……。しかも、かなり大きな足のサイズのようです……」


ゼフィロスは、震える声で答えた。彼の視線は、足跡を追う。その足跡は、祭壇の奥へと続いていた。


「なるほどな……。つまり、王女は、こいつに連れてこられたってことか。そして、バナナの皮は、そいつが残していったもの……」


ルナは、そう呟くと、ニヤリと口角を吊り上げた。彼女の瞳には、新たな「獲物」を見つけたかのような、狩人のような光が宿っていた。この地下神殿には、王女失踪の真実が隠されているに違いない。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! わたくしは、この足跡から、ある重要な情報を手に入れましたわ! この足跡の持ち主は、かなりの巨体で、しかも、足を引きずるように歩いているようですわ! まるで、何か重いものを運んでいたかのようですわね!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女は、足跡から、犯人の特徴を推理しているようだった。


「ちっ、余計なこと言ってんじゃねぇ! さっさと奥に進むぞ! あたし様の腹が減ってきただろうが!」


ルナは、ルクリアをにらみつけ、足跡を追って神殿の奥へと進み始めた。彼女の足取りは、新たな謎へと向かう狩人のように軽やかだった。


神殿の奥へと進むと、祭壇のさらに奥に、巨大な石扉が立ちはだかっていた。石扉には、古代の文字が刻まれており、そこがこの神殿の最も重要な場所であることを示唆していた。


「ちっ、こんなもん、あたし様の魔法でぶっ飛ばしてやるぜ!」


ルナは、そう言い放つと、掌から紫色の魔力の光を放った。その光は、石扉に命中し、轟音と共に石扉は吹き飛ばされた。石扉の向こうには、さらに広大な空間が広がっていた。そこは、地下のさらに奥深くへと続く、隠された空間だった。


その空間の中央には、巨大な水晶が置かれ、その水晶の中には、何人かの人間が閉じ込められているのが見えた。彼らは、顔色が悪く、生気が感じられない。しかし、まだ息はしているようだった。そして、その中に、ファティマ王女の姿もあった。彼女は、水晶の中で、まるで眠っているかのように横たわっていた。


そして、その水晶の前に、見覚えのある影が立っていた。その影は、漆黒のローブを羽織り、その顔はフードで隠されている。しかし、その体格と、周囲に漂う不気味な魔力は、ゼフィロスに、ある魔物を思い出させた。


「なっ……まさか、お前は!?」


ゼフィロスは、思わず叫んだ。彼の胃は、再び激しい痛みに襲われた。


「おーっほっほっほっ! なんてことですの! わたくしが、この謎を解き明かしたのですわ! ゼフィロス、わたくしの知性を褒め称えなさいませ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女は、まだ目の前の魔物の正体には気づいていないようだった。


「ちっ、てめぇは黙ってろ! あたし様は、あいつに用があるんだよ!」


ルナは、そう言い放つと、魔物へと向かって、紫色の魔力の稲妻を放った。


「貴様ら、よくぞここまで来たものだ……。だが、貴様らの命も、ここまでだ……!」


ローブの男は、そう言い放つと、フードをゆっくりと持ち上げた。その顔は、以前見た純魔族ヴォルグと瓜二つだった。しかし、その瞳には、ヴォルグとは比べ物にならないほどの、深い闇が宿っていた。


「くっ……! お前は……!?」


ゼフィロスは、その顔を見て、絶句した。彼の脳裏には、魔物図鑑の記述が蘇った。純魔族の中でも、最も上位の階級である『支配者』……。


「我が名は……純魔族ピュア・デーモン、『絶望の支配者』ベリアル……。貴様ら、人間如きが、この我の計画を邪魔するとはな……。貴様らの命、ここで終わりとする……!」


ベリアルは、そう言い放つと、巨大な影を纏った。その影は、まるで生き物のように蠢き、周囲の空間を歪ませる。その存在感は、ヴォルグとは比べ物にならないほど、圧倒的だった。


ベリアルは、そう言い放つと、巨大な影を纏った。その影は、まるで生き物のように蠢き、周囲の空間を歪ませる。その存在感は、ヴォルグとは比べ物にならないほど、圧倒的だった。


ルナは、ベリアルの姿を見て、ニヤリと口角を吊り上げた。彼女の瞳には、かつてないほどの、興奮と闘志が宿っていた。


「ハッ! やっとまともな獲物が出てきたじゃねぇか! てめぇのその醜いツラを、あたし様の爆裂魔法でぶっ飛ばしてやるぜ!」


ルナは、そう言い放つと、全身から紫色の魔力を放出させた。彼女の髪は逆立ち、瞳は魔力の光で輝いていた。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! なんて美しき光景でしょう! わたくしの美貌が、この強敵を魅了し、一瞬で凍りつかせて差し上げますわ! わたくしの美しき氷晶魔法に、酔いしれるがよいのですわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして強敵との戦いへの期待が浮かんでいる。


ルナは、躊躇なくベリアルへと向かって突進した。彼女の体から放出される紫色の魔力は、触れるもの全てを内側から破壊する性質を持つ。それは、彼女の破壊衝動が具現化したかのようだった。


「死ねぇっ! 爆裂殲滅弾バースト・カタストロフィ!!!」


ルナの叫びと共に、彼女の掌から、これまでにないほどの巨大な紫色の魔力の塊が放たれた。それは、ベリアルへと一直線に突き進み、神殿の壁や床を歪ませながら、轟音を響かせた。


ベリアルは、ルナの攻撃を軽々と避けた。彼の体は、まるで影のように実体を掴ませず、ルナの爆裂魔法は、空を切った。


「フン……。愚かな人間よ。その程度の力で、この我を倒せるとでも思ったか……?」


ベリアルは、低い声で嘲笑った。彼の赤い瞳が、ルナを射抜く。


「なっ……避けやがっただと!?」


ルナの顔から、一瞬にして笑顔が消えた。彼女の攻撃が通用しなかったことに、驚きと激しい苛立ちを覚えているようだった。


その隙を狙って、ルクリアの魔法がベリアルを襲った。


「おーっほっほっほっ! なんて動きが鈍い魔族ですこと! わたくしの美しき氷晶魔法で、あなたを永遠に凍りつかせて差し上げますわ! 氷の女王の吐息フリーズ・クィーンズ・ブレス!!!」


ルクリアの叫びと共に、彼女の掌から、強烈な冷気を帯びた白い光線が放たれた。それは、瞬く間にベリアルへと到達し、彼を巨大な氷の塊へと閉じ込めた。氷の塊は、透明で、その中にベリアルの姿が鮮明に浮かび上がっていた。


「くっ……! この氷は……!?」


ベリアルは、氷の中で苦悶の表情を浮かべた。ルクリアの氷晶魔法は、ただ凍らせるだけでなく、対象の魔力を吸い取り、その動きを封じる効果を持っていた。


「ハッ! やったなルクリア! その調子で、あの醜いツラを永遠に凍らせてやれ!」


ルナは、ルクリアの魔法に、満足げな顔で頷いた。しかし、彼女の視線は、まだ氷の中に閉じ込められたベリアルから離れない。


「おーっほっほっほっ! ルナ! やはり、わたくしの知性と美しき魔力は、この世界で最も優れていますわ!」


ルクリアは、得意げに胸を張り、高笑いを響かせた。彼女の顔には、自らの活躍に満足しているかのような表情が浮かんでいる。


しかし、その高笑いは、すぐに凍り付くことになる。氷の塊の中で、ベリアルの赤い瞳が、一瞬、強く輝いた。


「フン……。この程度の氷で、この我を封じ込められるとでも思ったか……?」


ベリアルの声が、氷の塊の中から響き渡った。その声は、氷を震わせ、神殿全体を揺るがせる。そして、氷の塊が、ミシミシと音を立て始めた。


「なっ……なんだと!?」


ルナとルクリアは、同時に目を見開いた。氷の塊に、亀裂が入り始めたのだ。


氷の塊は、急速に砕け散った。ベリアルは、氷の破片の中から姿を現した。彼の漆黒のローブは、冷気でわずかに白く凍り付いていたが、その体には、何一つ傷が見当たらない。彼の周囲には、闇の魔力が渦巻いており、その魔力は、神殿全体を覆い尽くさんばかりに広がっていた。


「フン……。貴様らの小細工など、この我には通用しない。今度は、この我の力を見せてやろう……!」


ベリアルは、そう言い放つと、掌をルナとルクリアへと向けた。彼の掌から、漆黒の闇が放出され、それはまるで生き物のようにうねりながら、二人へと襲いかかった。それは、ただの闇ではない。見る者の心に、深い絶望を植え付ける、負の感情の塊だった。


「くっ……! なんだ、この闇は!?」


ルナは、その闇の攻撃を避けようとしたが、闇はまるで意思を持っているかのように、彼女の体にまとわりついた。彼女の心に、これまで感じたことのない、強烈な絶望感が襲いかかる。彼女の心の中で、過去の失敗や、自身の無力感がフラッシュバックした。


「おーっほっほっほっ! なんてことですの! この闇は、わたくしの美貌を、醜い闇へと引きずり込もうとしているのですわ! 許しませんわ!」


ルクリアは、必死に白い光の魔法を放ち、闇を払おうとする。しかし、闇は彼女の光を飲み込み、彼女の心にも、深い絶望が襲いかかった。彼女の心の中で、自らの傲慢さや、誰にも理解されない孤独感が、鮮明に浮かび上がった。


ゼフィロスは、その光景を目の当たりにし、全身が震え上がった。彼の胃は、すでに機能停止しているはずなのに、まるで針で刺されているかのような痛みが走った。ベリアルの放つ闇は、彼の心に、最も根源的な恐怖と絶望を呼び起こしていた。彼の脳裏には、王室の財政が破綻し、自分が極貧の中で飢え死にする未来が、ありありと浮かんでいた。


ルナは、絶望の闇の中で、苦悶の表情を浮かべていた。彼女の心は、闇に侵食され、まるで底なし沼に沈んでいくかのようだった。


「くっ……! こんなところで……あたし様が……!」


その時、ルナの心の中に、ふと、これまでの旅で味わった美食の記憶が蘇った。香ばしい肉の塊、甘美なデザート、そして何よりも、この先の旅で出会うであろう、まだ見ぬ究極の美食への渇望が、彼女の心を突き動かした。


「ふざけんな! こんなところで、あたし様が死ねるわけねぇだろうが! まだ、この世界には、あたし様が味わってない美味いモンが山ほどあるんだぞ! てめぇなんかに、あたし様の美食ライフを邪魔されてたまるか!!!」


ルナの叫びと共に、彼女の全身から、これまで以上の紫色の魔力が噴出した。それは、絶望の闇を切り裂くように、力強く輝き始めた。彼女の瞳は、怒りと、そして美食への執念で、赤く燃え上がっていた。


「おーっほっほっほっ! なんてことですのルナ! あなたのその野蛮な美食への執念が、こんなにも美しい輝きを放つとは! わたくしも負けていられませんわ!」


ルクリアもまた、ルナの叫びに応えるかのように、心の中で自らの美学と、この世界に美を広めるという使命を思い出した。彼女の体から、白い魔力の光が放出され、それは闇の中で、ますます輝きを増した。


ルナは、絶望の闇を振り払い、ベリアルへと向かって突進した。彼女の掌には、これまでにないほどの強大な魔力が集中している。


「てめぇの絶望など、あたし様の美食への執念の前では、無力なんだよ! 超・爆裂破滅撃スーパー・バースト・ディザスター!!!」


ルナの叫びと共に、彼女の掌から、巨大な紫色の魔力の奔流が放たれた。それは、神殿全体を揺るがすほどの破壊力で、ベリアルへと襲いかかった。


その間にも、ルクリアの魔法がベリアルを襲った。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! わたくしの美しき氷晶魔法で、あなたを永遠に凍りつかせて差し上げますわ! 絶対零度の女王アブソリュート・ゼロ・クィーン!!!」


ルクリアの叫びと共に、彼女の掌から、全てを凍てつかせるような強烈な冷気が放たれた。それは、ベリアルを覆い尽くし、巨大な氷の塊へと閉じ込めた。


ルナの魔力の奔流が、氷の塊に閉じ込められたベリアルに直撃した。神殿全体が激しく揺れ、轟音が響き渡る。壁や床が崩れ落ち、砂埃が舞い上がった。


土煙が晴れると、そこには、巨大なクレーターができており、ベリアルの姿は、どこにも見当たらない。彼がいた場所には、ただ、焦げ付いた地面が広がるだけだった。


「ハッ! こんなもんか。絶望の支配者とやらも、あたし様の爆裂魔法には敵わねぇな!」


ルナは、そう言い放つと、満足げに鼻を鳴らした。彼女の顔には、強敵を打ち破ったことへの達成感と、そしてどこか、物足りなさのようなものが混じっていた。


「おーっほっほっほっ! ルナ! わたくしの美しき氷晶魔法がなければ、あなたもここまで苦戦したことでしょうに! やはり、わたくしの存在は、この世界に不可欠ですわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を閉じ、高笑いを響かせた。彼女の顔には、自らの活躍に満足しているかのような表情が浮かんでいた。


ゼフィロスは、その光景を呆然と見つめていた。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、ただただ虚無感に満ちていた。彼は、この二人の女性が、一体どれほどの破壊力を持っているのか、改めて思い知らされた。そして、この旅の終焉を、心から願っていた。


灼熱の砂漠王国サハラデス、その地下深くにある古代神殿は、純魔族ベリアルとの激戦の後、再び重い静寂に包まれていた。神殿の奥へと続く道には、古代の複雑な罠が張り巡らされているのが見て取れた。ゼフィロスの胃は、ベリアルとの戦いで一時的に麻痺していた痛みが、新たな問題の予感と共にじわりと蘇ってきた。彼の心臓は、この先待ち受けるであろう破壊の嵐を前に、すでに悲鳴を上げていた。


「ちっ、なんだこのチマチマした仕掛けは。こんなもん、いちいち解いてられるか!」


ルナは、複雑に絡み合ったワイヤーや、床に仕掛けられた魔法陣を見て、不機嫌そうに顔をしかめた。彼女の顔には、苛立ちと、そしてどこか面倒くさそうにしている様子が浮かんでいる。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス、ご覧なさい! この巧妙な罠の配置は、まさにわたくしの知性に挑戦しているかのようですわ! わたくしの美学に共鳴する気配がしますわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げ、罠の構造を品定めするように眺めている。彼女の瞳は、罠の美しさに興味を抱いているかのようだった。


「うるせぇな! 美学とかどうでもいいから、さっさと進むぞ! あたし様の腹は限界なんだよ!」


ルナは、ルクリアをにらみつけ、もはや我慢の限界といった様子で、掌を前方へと突き出した。


紅蓮粉砕波クリムゾン・クラッシャー!!!」


ルナの叫びと共に、彼女の掌から、燃え盛るような紅蓮の魔力の奔流が放たれた。それは、眼前に広がる罠を全て飲み込み、轟音と共に破壊しながら突き進んでいく。ワイヤーは千切れ飛び、魔法陣は爆音を上げて消滅し、床は大きく抉られた。神殿全体が激しく揺れ、砂埃が舞い上がった。


「なっ……なんて破壊力ですことルナ! わたくしの美しき氷槍乱舞アイス・ランス・ワルツの方が、優雅で美しいですわ!」


ルクリアは、ルナの力任せな突破に驚きながらも、負けじと掌から氷の槍を連射した。その氷の槍は、ルナが破壊し尽くした空間をさらに荒らし、無関係な神殿の柱に次々とぶち当たっていく。柱は砕け散り、砂埃がさらに舞い上がった。


「うるせぇ! てめぇは邪魔だ! 余計なことすんじゃねぇ!」


ルナは、破壊の限りを尽くすルクリアに、苛立ちを隠せない様子で怒鳴りつけた。


ゼフィロスは、その光景を目の当たりにし、全身が震え上がった。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、ただただ虚無感に満ちていた。彼の脳裏には、また新たなトラブルと、王室への莫大な修繕費用が積み上がっていく光景が鮮明に浮かんでいた。彼は、崩れ落ちる柱の破片を避けながら、どうにか二人の後を追った。


破壊の限りを尽くしながら神殿の奥へと進むと、そこには、かつてファティマ王女が調べていたと思われる書斎のような部屋があった。部屋の中央には、大きな机が置かれ、その上には、広げられた巻物や、古びた書物が散乱している。そして、壁には、不気味な紋様がいくつも描かれていた。


「ちっ、またこんな薄気味悪いもんか。さっさと王女とやらを見つけて、美味いモンでも食いに行きてぇぜ!」


ルナは、部屋の中央にある机の上の巻物に目を向けた。巻物には、ファティマ王女の筆跡で、様々な調査記録が記されていた。


「ゼフィロス! これ、なんて書いてあるんだ!? 早く読め!」


ルナは、ゼフィロスに巻物を手渡した。ゼフィロスは、震える手で巻物を広げ、その内容を読み始めた。


「は、はい! これは……ファティマ王女の調査記録のようです……。各地で起こる失踪事件について、彼女が独自に調査していたものと思われます……」


ゼフィロスは、震える声で読み上げた。巻物には、これまでの失踪事件の詳細と、共通する特徴について記されていた。そして、その中に、奇妙な紋様と、「闇の連鎖」という言葉が何度も登場していた。


「この紋様は……まさか!?」


ゼフィロスは、巻物に描かれた紋様と、部屋の壁に描かれた紋様を見比べ、驚愕の声を上げた。その紋様は、これまでの失踪事件で、被害者が最後に目撃された場所に、共通して描かれていたものと酷似していたのだ。


「なるほど……。この紋様が、事件の共通点だったってことか。そして、『闇の連鎖』……」


ルナは、そう呟くと、壁の紋様をじっと見つめた。彼女の顔には、事件の核心に近づいていることへの興奮と、そしてどこか、理解を超えた現象への好奇心が入り混じっていた。


「ふーん、そんなもん、まとめて焼き払ってやる!」


ルナは、そう言い放つと、掌に再び魔力を集中させ始めた。彼女にとって、謎の紋様も「闇の連鎖」も、結局は邪魔な障害物に過ぎないようだった。


「おーっほっほっほっ! ルナ! なんて乱暴なことを! これは、わたくしたちの知性を試す、高度な手がかりですわ! わたくしの知性をもってすれば、この紋様と「闇の連鎖」の謎を、美しく解き明かせますわ!」


ルクリアは、ルナの行動に驚きながらも、すぐさま自らの知性を誇る高笑いを響かせた。彼女は、壁の紋様を熱心に観察し、何かを書き留めているようだった。


「待ってください、ルナ様! これは、非常に貴重な手がかりでございます! まだ、全てを解明したわけでは……」


ゼフィロスは、慌ててルナの前に立ち、貴重な手がかりである紋様を守ろうとした。彼の胃は、ルナの破壊衝動と、ルクリアの無駄な高笑いに挟まれ、限界を迎えていた。彼は、この手がかりを失えば、事件の真相が永遠に闇に葬られることを恐れていた。


ルナは、ゼフィロスの必死な抵抗に、不機嫌そうな顔をしたが、最終的には魔力の集中を解いた。彼女は、面倒くさそうに腕組みをしながら、ゼフィロスの説明に耳を傾けた。


ゼフィロスは、巻物と壁の紋様を照らし合わせながら、「闇の連鎖」の真実について語り始めた。


「この紋様は、古代の呪術によって描かれたもので、対象の生気を吸い取り、別の場所へと転送する効果があるようです。そして、『闇の連鎖』とは、その生気を吸い取られた者たちが、別の場所で、ある種の『闇の儀式』の贄とされていることを指しているものと思われます……」


ゼフィロスは、震える声で説明した。彼の心臓は、この恐ろしい真実を前に、激しく鼓動していた。


「なるほどな……。つまり、生気を吸い取られてた娘たちも、王女も、みんなどこかに転送されて、その『闇の儀式』とやらの贄にされてるってことか」


ルナは、そう呟くと、ニヤリと口角を吊り上げた。彼女の瞳には、事件の全貌が見えてきたことへの興奮と、そして、この「闇の儀式」とやらをぶち壊してやるという、強い決意が宿っていた。


「おーっほっほっほっ! なんてことですの! わたくしの美貌が、こんな恐ろしい儀式の贄にされるなど、許されることではありませんわ! ゼフィロス! その儀式が行われている場所を、いますぐ特定しなさいませ! わたくしが、その醜い儀式を、美しく粉砕して差し上げますわ!」


ルクリアは、優雅に扇子を広げながら、高笑いを響かせた。彼女の顔には、自らの美学を汚されたことへの憤りが浮かんでいた。


ゼフィロスは、再び地図を広げた。巻物と紋様、そして王女の残した手がかりを総合すると、次の目的地が明らかになった。


「は、はい! この紋様が指し示す場所は……この砂漠のさらに奥深く、**『幻影のオアシス』**でございます……。そこは、常に蜃気楼に包まれており、決して到達することのできない場所と言われております……」


ゼフィロスは、震える声で答えた。彼の心臓は、新たな危険を予感して、激しく鼓動していた。幻影のオアシス……そこには、一体何が待ち受けているのだろうか。


「幻影だとぉ!? 面白ぇじゃねぇか! ゼフィロス! さっさと馬車を用意しろ! あたし様は、美味いモンを食いに、幻影のオアシスとやらに行ってやるぜ!」


ルナは、そう言い放つと、立ち上がった。彼女の瞳は、新たな冒険への期待で、キラキラと輝いている。彼女は、もはや幻影のオアシスそのものよりも、そこにあるかもしれない未知の美食に心を奪われているようだった。


「おーっほっほっほっ! ゼフィロス! 幻影のオアシスですって!? なんて神秘的な場所でしょう! わたくしの美貌が、その幻影と融合し、さらに輝きを増すことでしょう! わたくしに相応しい、最高の化粧品と、美しい衣装を早く!」


ルクリアは、優雅に扇子を閉じながら、高笑いを響かせた。彼女の顔には、美への飽くなき探求心と、そして幻影のオアシスへの冒険を楽しんでいるかのような表情が浮かんでいる。


「は、はい! かしこまりました……」


ゼフィロスは、深いため息をついた。彼の胃は、もはや痛みさえ通り越して、諦めに満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ