ー04ー 自粛期間
12月のレオさんの生誕イベントの告知がツイッターのタイムラインに流れた頃、ヘルプデスクを新しく担当するナカノシマ氏が、市役所にやってきて、前任のアズマミヤ氏から引継ぎを受けていた。
この頃、庁内ポータルの入れ替えなども実施されていて、そのポータルシステムの使用方法の問い合わせも増えていたために、電話対応の回数も多かった。
前任のアズマミヤ氏は電話を受けると、まず、自分の知識で回答可能な範囲は、ワンストップで対応してくれていた。
具体的には、WORDやEXCELなどの基本ソフトウェアの取り扱いについてだけは、スムーズに対処できていた。
しかし、後任のナカノシマ氏は、それらの基本ソフトウェアについて講習や実践の経験が少なく、庁内からの問い合わせに回答することができず、そのまま、問い合わせの電話を私に引き継ぐケースが増えた。
マイナポイント第1弾が、9月に開始されたことで、相変わらず市役所の1階に設けられたマイナポイント窓口には、情報政策課の職員の方が張り付く形となっていたため、電話問い合わせのほとんどを、私とナカノシマ氏の二人で対応するしかない状況でもあった。
市民からの具体的な問い合わせは、次のような内容だった。
「総務省の問い合わせ先に電話しても、全然つながらないんだけど…マイナポイントを貰う方法って市役所でも教えてもらえますか?」
「大丈夫ですよ…カードの申請は、お済みですか?」
「申請って…まだやってないんです」
「お手元に郵送されてる申請用の通知書はありますか?」
「申請用の通知が必要なんですね。ちょっと探してきます」
「見つかりそうですか?」
「心当たりはあるので、たぶん、見つかります」
「もしも、探すのにお時間がかかるようでしたら、こちらから折り返しいたします。お電話番号を教えていただけるようなら、折り返します。どうしましょうか?」
このように、市役所では問い合わせした市民の方の電話代の負担を軽減するために、折り返して良いかどうかを確認するのが基本となっている。
課に設置されている電話にはナンバーディスプレイ表示機能がないため、聞きださないと、相手の電話番号はわからない。
「すぐ見つかると思うので、少し、このまま待ってもらえますか?」
「わかりました。このまま待ちます。ごゆっくり、お探しください」
すぐに申請用の通知が見つかる場合もあれば、ずっと待たされる場合もある。
時間がかかりそうな時は、問い合わせた方のほうから「時間を置いて電話してほしい」と言われるケースがほとんどなので、相手先の電話番号と氏名を確認して1時間ほど時間を置いてから折り返すことになる。
「市役所・情報政策課のアカギと申します。マイナンバーカード申請用の通知は見つかりましたか?」
「見つかりました。これを持って市役所に行けば良いですか?」
「そうですね…市役所の1階に特設のマイナンバーカードの窓口がありますので、そこで手続きが可能です。また、申請用の通知書に記載されている手順に従って、スマホやパソコンを使ったオンライン申請もできます」
「スマホもパソコンも持ってないのですけど、市役所でできますか?」
「9時から16時半までの時間内であれば、市役所で用意したパソコンを使用して申請が可能です」
「申請すれば、5000円を貰えるんですよね」
「マイナンバーカードの作成申請をして、マイナンバーカードが作成された後で、クレジットカードや電子決済との契約をすることで、5000ポイントを受け取れる資格を得る事ができます」
「はぁ?」
「まず、市役所に来ていただき、マイナンバーカードの申請をしてカードを作っていただきます」
「はいはい」
「申請が済みますと、カードができるまでに、少し時間が必要です。カード受け渡しの準備ができたところで、交付通知書を郵送しますので、そこで、カード受け取り日の予約をしてもらいます」
「通知書が届くんですね」
「はい、それの交付通知書で、受け取り予約が可能になります」
「はいはい」
「受け取りの予約が済みましたら、受け取り日に市役所に来ていただきます。必ず、ご本人が受け取りに来てください」
「家族の分を一緒には受け取れないのですか?」
「未就学児童は、親御さんが受け取れますが、ご家族は?」
「小学生です…」
「親御さんと一緒に来ていただく必要がありますね」
「家族の分の5000円も、もらえますか?」
「お二人分であれば、合計で10000ポイントを受け取る資格ができます」
「ポイントは、商品券みたいなものですか?」
「協賛する会社がたくさんありますので、それぞれに受け取る方法が違います」
「はぁ」
「ポイントを受け取れるのは来年の3月末までなので、今月、申請をしていただければ、1月中に交付通知書が届いて、それから1か月後の2月にはカードを受け取ることができるはずです。
そこで、マイナポイントの受け取り手続きをしていただければ、ぎりぎりの3月末までにはポイントが付与されるはずです。付与されたポイントは、それぞれの協賛会社のポイント有効期限まで使用可能になります」
「その協賛会社というのは…」
「スマホをお持ちでないのであれば、クレジットカードや銀行カードということになると思います。クレジットカードはお持ちですか?」
「クレジットカードは持っていますが、ほとんど使ったことはないです」
「スマホを購入する予定はありますか?もしくは、スマホを持っている家族の方はいますか?」
「持っていないです…買う予定はありませんが、スマホを買ったほうがいいですか?」
「マイナポータルというサービスはスマホでしか利用できないので、スマホは持っていたほうが便利ではありますが、付与される5000ポイントでは、スマホを買う事は難しいです。
ただ、マイナポータルは、スマホありきのシステムなので、今後、マイナポータルを利用するために、スマホを購入するとするなら、PayPayというシステムであれば、スマホで使うことができて、20000円のポイントをチャージするだけで、即日に5000ポイントが付与されます」
「PayPayですか?それでは無理ですね」
「スマホを使用しない場合、例えばワオンカードでは、20000円の買い物をすることで、満額の5000ポイントが付与されます」
「ワオンカードも持っていないんです…」
「カード受け取りの時にクレジットカードを持参していただければ、市の担当職員が詳しく説明することができます…私などよりずっと詳しい職員が揃っておりますので、お手持ちのカードを用意していただければ、お客様が一番使い易い方法を案内することができます。安心して、マイナンバーカードをお作りください」
「いろいろ難しいのですね…」
「説明が行き届かなくて申し訳ありません」
「今月中に、市役所にこの申請通知書を持っていけば、ポイントは貰えるんですね」
「そうですね、ポイントを受け取る資格を得ることができるようになります」
「緊急事態宣言が出ても、市役所の窓口は空いていますか?」
「開始の時間帯と終りの時間帯は密になる場合が多いですが、中間の時間帯であれば、蜜を避けることができる可能性が高いです。今は、どの時間帯でも、ちょっと、お待ちいただくことになるかとは思いますが…
感染症対策を充分にして、お越しいただければと思います」
というような市民とのやり取りが、この時期のヘルプデスク作業の主だった。こういうやり取りが、マイナポイント事業が発表された頃から延々と続いていたのだ。
アニソンバーソロデビューの1週間後の2020年12月4日。
いつもの川越アニソンメンバーが中心となって開催される新宿オフ会に参加した。
この年の5月25日に緊急事態宣言が解除されてから、およそ6か月。
個人の判断に自粛を任せていたこの期間も、月に一度のオフ会参加は継続していた。
初めてアッキー氏と一緒に参加した川越系のオフ会。
もちろん、宣言解除後の感染対策をきっちりとした上での参加。
このオフ会の主催者による感染対策としてmixiにコメントが記録されているので引用。
『【感染症対策】
・手指用消毒アルコール、除菌ウェットティッシュは十分に用意します。
・食べ物の持ち込みは大歓迎なのですが、今回は個包装のみに限定します。
・入室前の石鹸での手洗いうがい、手指のアルコール消毒を必須とします。
(お店の受付にも各部屋にも常備されてます)
・部屋を出入りした際も都度アルコール消毒を実施してください。
・マイクと共用タブレットは使うたびに除菌シートでふいてください。
・休憩タイムを設けますのでご協力ください。
時間:以下の時間に10分ずつ
13:00、15:00、17:00
※カラオケを停止し、窓や扉を開放して換気し、机やマイク、タブレットなど手の触れる物を拭き掃除します。
※お掃除は人手で時短できますのでご協力のほどお願いします。
当日来てくださった方は以上を全てご了承いただいたとみなします。』
そして、当時のmixiのオフ会開催後の私の投稿コメントは次の通りでした。
『6日から日が過ぎてしまいましたが、オフ会では、参加者の皆さま、たいへん、お世話になりました。
久しぶりに「電磁」ソングをまとめて歌えたオフ会でした。
また、アイドルソングも、いつもより少し多めに歌えて、そして、まさかの「エレガ縛り」と言う嬉しい状況の中で、歌える曲が奈々さん関連ソング連投になってしまうことに気付き、ラブライブ曲に逃げてしまいました。
次回開催は3月かな?
今後も、よろしくお願いいたします。』
そして、この日のオフ会主催者の方の最終コメントは次のとおりです。
『ご挨拶、大変遅くなってしまってごめんなさい。
ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
機材を出してくださったAさんとBさん、貴重なものをありがとうございました。
合間合間の除菌や清掃活動にみなさんとても積極的協力的でとてもありがたかったです。
その後、体調不良などのご報告はいただいていないのでおかげさまで感染予防は上手く機能したものと思われます。
諸々に気をつけながらではありますが、みなさんとカラオケを楽しめた、みなさんにも楽しんでいただけたものと思いますので、大満足で大成功でした!
今年、新宿で4回もカラオケオフを実施し、
感染者を一人も出さなかった(多分)というのはきっと胸を張っていい成果だと思います。
参加者に恵まれているオフ会ですね。
ホントにホントにありがとうございました!!』
そして、12月に開催された川越アニソングループの定期オフ会にも感染対策をした上で参加。
2020年12月19日
川越オフ会
『おはようございます。
帰宅後、アニメも観ず、ゲームもせず、爆睡していました。
「バット」「となりのトトロ」が書けて、とても気持ちのよいクイズタイムでした。
まさに「答えられる快感」年齢とともに記憶や知識が失われていく中で、
この快感は、なにものにも代えることができないと実感しました。
(ストレス性の胃潰瘍で職場で血を吐いて倒れた時、医師から、
「なんでもいいから趣味を見つけて、ストレス発散しないとすぐにボケてしまうぞ」
と言われた事、その後、水樹奈々さんのあの曲を聴いて、この曲を歌いたいと思って、
妻を含め家族が耳を塞いでしまうほどの音痴の私が無謀にも奈々さん曲を歌うという暴挙。
そんなこんなで、カラオケにどっぷり浸かって、こんなに楽しい時間を過ごせている。
病気治療や命の大切さが、とても重視された今年。
コロナだけでなく、ストレスでも人は命を失う可能性があること、
たくさんのアーティストの方の楽曲に触れる事で生かされているんだと思える1年だった。
(病気にならない努力や注意はする。それでも病気になったら全力で治療する)
川越オフ会の主催者でもあるZさんのコメントに、このことを改めて気付かされた。
今回も、主催者に最大の感謝を。
mixiのオフ会掲示板に書き残されている私のコメントでは…
『(クリスマスオフ会でプレゼント交換の時間に受け取った)COCO'Sのバンドリアイテムは、めっちゃ欲しかったので、超絶嬉しかった。
バンドリメンバーを見てるだけで幸せいっぱいです。
Cさん、素敵なアイテムをたくさん、ありがとうございました。
来年の忘年会は、RASの倉知玲鳳さんのライブ衣装を着てみたいと思ってます。
(キーボードメイド服です)
二次会も、とても楽しかったです。
やっぱり、アニメの話をたっぷりできる時間は貴重です。
「ガンダムW-エンドレスワルツ」の「デスサイズヘルカスタム」の戦闘シーンが大好きです。
参加者の皆さん、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。』
と記されているように、12月のこの時期から、ある意味、オフ会に参加することに積極的ではありながらも、4月に発出された緊急事態宣言が、近いうちに、もう一度発出されるのではないかという空気が、オフ会のメンバー間でも蔓延していた。
そして、年が明けた2021年1月8日に、緊急事態宣言が発出され、この時の宣言は、1回目の緊急事態宣言が4月7日から5月25日までという2か月弱で解除されたのに較べ、2か月を超える3月21日まで解除されずに続くことになった。
この2回目の緊急事態宣言が発出された期間に私の行動は…というと、川越オフ会には参加し、アニソンバーギルティへは3月12日までは行くことはなかった。
以下は、この自粛期間に開催されたmixiオフ会に参加した時に書き残したコメントの引用。
【2020年1月31日のコメント】
『昨日は、大変お世話になりました。
通路に溢れるほどの群衆に、まず、びっくりでした。
どの人も、みんなカラオケ大好きなんだなって、ちょっと感激でした。』
(最近、通い始めた入間のラウンドワンは、週末であっても、利用者がほとんどいなくて、いつも貸し切り状態なのに。。。)
この日のオフ会では、歌おうと思っていた曲を決めていたので、選曲には迷わなかったけれど、
川越オフでオフボで歌うことは、ほぼなかったので、あのハプニングの時は迷子状態でした。
機材係の皆さま、ほんとうに、いつもありがとうございます。
そして、合唱では、新作の映像をたくさん観ることができて。。。
今期のアニメは、全て見尽くした満足感を得ることができました。
ああ、でも飲み会で、おしゃべりができないって、こんなに辛いものなんですね。
「緊急事態宣言」延長決まってしまったようで、もうしばらく我慢が必要ですね。
それでは、次回もよろしくお願いします。
2月21日
今月の合唱曲です(川越では、オフの最後に合唱を行っております)
『D4DJ』挿入歌
曲:電乱★カウントダウン
歌:Peaky P-key
日曜日は、たいへんお世話になりました。
超久しぶりのお酒の席だったので、飲み過ぎました。飲み部屋に居座ってしまってごめんなさい。
楽し過ぎて完全に、HPとMPを使い切ってしまい、月曜の夜まで体力の回復に使っていました。
課題曲「電乱★カウントダウン」電気系ソング+倉知玲鳳さん参加ユニットということだけでお気に入りにしていたのですが、皆さんのカウントダウンの迫力が凄すぎてカッコよくってホントに素敵でした。
ありがとうございました。
そして、合唱曲の中で「虹色passions!」9名揃ってのパート分け合唱に、めっちゃ感激しました。
私と同様に表情がうまく作れない「璃奈ちゃん」パートを虹ヶ咲曲合唱の時は歌えるように練習しておきます。(次回の合唱曲も、バンドリ曲かラブライブ曲になると思います)
さらに、今回1番の収穫!「ダンシング」がカッコよかった~(映像も曲も)
次は、お酒の誘惑に負けないよう、そして今季の曲も1曲くらいは歌えるように練習して参加したいと思います。
3月28日
・mixiネーム でんすけ
・一言
ガルパ4周年らしいので、今(3/15 PM8:05)RASライブ無料配信中です。観てます。
今期アニメ、「進撃の巨人」やっと追いつきました。
そして、この頃には、宣言解除で五輪も開催決定となるシナリオのようなので、そうなった場合、スポ根アニメを多めに歌ってしまいそうです。
・持ち物
マイマイク1本持参します。
3月28日
今日も、たいへんお世話になりました。
自己紹介でも申しましたが、RASのパレオちゃん、3月25日誕生日だったので、
「Beautiful Birthday」を歌うタイミングを探っていました。
昭和の時代は、オリンピックの年はオリンピックを目指すスポーツアニメが注目されたりしたのですが、最近は、そういう内容のアニメが少なくなってしまって寂しい想いをしてます。
「YAWARA」とか「アタック№1」とかも歌ってみたかったのですが、その辺はまた次の機会でと思ってます。(「走れマキバオー」を川越で歌える雰囲気になるとは予測してませんでした)
前回の東京オリンピック年(1964年)生まれの身としては、他の人以上に五輪に思い入れがあるのです。
今回、画面を疾走するウマ娘さんたちの姿を目にして、やっぱりこれはスポーツなんだなぁって感じました。自分でも身体を動かしたくなってしまったので、4月中にラウンドワンのスポッチャに行ってみようかなと思ってます。
いつまでもいつまでも、音楽とスポーツを楽しむことができるように、自分にできることはやっていこうと思います。
(月に1度のオフ会以外では、なるべく人と接しない。。。くらいですが^^)
この時のコメントにもあるように、この時期までは本気で私は、東京オリンピックの開催を楽しみにしていたのだ。
そして、この3月28日が、川越オフ会に参加した最後だった。
少しだけ時間を巻き戻して、2月28日。
2020年11月に「ひとりアニソンバーデビュー」を果たした私は、その後、アニソンバーギルティに行く日を決めることができずにいた。
レオさんにもう一度会いたいという気持ちは強くあったのだけれど、1月8日に発出された緊急事態宣言が解除されるというアナウンスがあり、宣言解除後に行くか解除前に行っていいものか非常に悩んでいた。
既に2月7日までだった緊急事態宣言は3月7日まで延長されることが決定していた。
そして、3月7日では解除されずに再延長となることもほぼ予測できていた。
ツイッター(現X)では、レオさんやリサさんのつぶやきを毎日チェックしていたので、キャストさんたちが元気にしていることは知っていた。
実際に、検索可能なツイッターのつぶやきの中で、私がレオさんに宛てた返信では「13日に会いに行きたい」とつぶやいている。
宣言が再延長ということになれば3月21日頃までギルティに行く事はできない。
元々は7日で解除されるはずだったからという理由で、13日か12日にギルティに行く事を決めていたが、そのつぶやきの後、3月5日に、東京都の緊急事態宣言の再延長が決定された。
3月12日…およそ3か月半ぶりにアニソンバーギルティにやってきた私は、ギルティの一番奥の席…最初にアッキー氏と来た時に座った席に座った。
金曜日の18時過ぎ…遅い時間だと少し混むような気がしていて、レオさんの出勤時間に合わせたつもりで入店したのだが、まだ、レオさんはお店に来ていなかった。
そして、この日、初めて会ったのがコハルさんだった。
「はじめましてですね…コハルと言います」
もふる×クロスの現リーダーのコハルさんは、この時、持ち前の笑顔で明るく接してくれた。
「レオさんって…今日、お休みですか?」
「あ…シフト変わったんですよ。今日、レオさんは19時からになりました。それまでは私が…」
コハルさんが18時までの予定だったのが19時までになって、レオさんは19時からとなったらしい。
コハルさんにカシスオレンジを注文してレオさんが来るまではカラオケを楽しむことにして、予約用のキョクナビもお願いした。
さすがに金曜日ということで、この日は、お客さんも多く、キャストさんへの歌のリクエストもあったりで、私の歌う順番はなかなか回って来なそうだったので、あれこれ歌うのは諦めて、最推しであるRAS曲やパスパレの曲を歌うことに決めた。
リサさんも、ののさんも、この日はお休みで、前回会ったトチローさんのような同じ世代のお客さんもいないようだったので、特に誰かに選曲を合わせることもなく、RASの「Beautiful birthday」パスパレの「もう一度ルミナス」といった、この頃練習していた曲を、リクエスト予約した。
お店の中で、忙しそうに立ち回っていたコハルさんが、もう一度、話しかけてくれた。
「バンドリの曲…お好きなんですね…」
「はい…知ってますか?」
「バンドリ好きのお客さんがいるので、いろいろと情報を受け取ってます…自分では、まだ歌えないんですけど」
「コハルさんは、どんな曲歌うんですか?」
「アニソンだとラブライブとか…アイドル曲好きです。ハロプロとかも大好きで…」
「そういえば、レオさんもアイドル活動するって言ってました…コハルさんも?」
「はい…アイドル大好きです」
「アニメの世界のアイドル…ラブライブは、私も大好きです。去年来た時に【HAPPY PARTY TRAIN】歌いました」
「aqoursの曲ですね。私はμ’sの曲、良く歌いますよ」
この時は、まだ、コハルさんが翌月の4月にアイドルユニットとしてデビューを予定しているということに、私は全然気づいていなかった。
私が2曲ほどを歌い終わったあたりで、レオさんがお店に入って来た事に気づいた。
あっという間に、1時間が経過したということだ。
ただ、レオさんはそのままカウンター内に入ってしまったようで、カウンターから離れて座っている私には気づいていなかったようだった。
ツイッターでも「13日に来たい」と言ってあって、この日に来ることは伝えていなかったから、気づかなかったんだと思う。
それに11月に会った後、もう3か月以上もお店に来ていないのだから、気づかなくてもしょうがない。
レオさんが出勤したことで、いろいろと話しかけてくれたコハルさんは予定どおりに19時で帰ってしまった。
レオさんが、席の近くを通ったら話しかけようと思っていたけれど、やっぱり、なかなかカウンター内からは出てこない。
(11月に来た時の曲をもう1回歌ってみようか…)
(フロア担当のキャストさんに呼んでもらおうか…)
(ツイッターに、来店報告のつぶやきを入れてみようか…)
(いや、席を立ってカウンターに向かえば…)
気づいてもらえる方法をいろいろ考えてはみたが、実際には実行することができずに、時間が過ぎていく。
(そういえば、追加注文しないで居座ってしまった…)
(「会いに来たよ」とか言って、あんまり馴れなれしくするのも、今は忙しそうだし失礼だよなぁ…レオさんは社交辞令で、「また来て」って言ってるはずだし)
カラオケを歌う事が目的で、アニソンバーに来ることにしたけど、この時点で、もう既に、レオさんという【推し】に会う事が目的になっていることに、この時の自分は気づいていたのかいなかったのか…
特に何も行動を起こすことはなく、レオさんがホールに出てくることもなく、この時間帯は他に知っているキャストさんもいなかったので、よーし、予定した残りの時間は、カラオケを目一杯楽しもうと決めた。
アニソンバーの一番良いところは、おしゃべりをしなくても、カラオケの選曲がアニソンに限定されていることから、他のお客さんが歌う曲のほとんどが聞き覚えのある曲ばかりであるということだ。
初回はアッキー氏と、二回目はトチロー氏とレオさんと楽しくおしゃべりをして過ごしていたけれど、この日は、他のお客さんが歌う曲や、キャストさんへのリクエスト曲を集中して聞くことができた。
男性客が多いことは変わりなく、お客さんの選曲は男性ボーカルが多いけれど、キャストさんがリクエストに応えて歌う曲は女性ボーカルなので、おしゃべりよりもアニソンをたくさん聴くことで、耳を幸せにすることができた。
この日の最後にリクエストした曲を歌い終えた後、付箋にカラオケ回数を書いてくれたキャストさんにそっと聞いてみる。
「レオさんって厨房ですか?」
「あ、はい…あ、呼んできましょうか?」
「すいません…お願いしていいですか?」
「いいですよ~呼んできますね」
レオさんはすぐに来てくれた。
「でんじいです…憶えてますか?」
「久しぶり~もちろん、憶えてるよ。明日来るって言ってたから…えっと…会いに来てくれたの?」
「うん、約束したからね…コロナが落ち着いたら来るって…まだ、宣言は解除されてないけど…もう永遠に解除されないんじゃないかと思ったから…来ちゃった」
「そうだね。でも、来てくれて嬉しいよ」
「この前教えてくれた『メジャーセカンド』を観終わったので、またおしゃべりしたかったけど、今日はずっと忙しそうだったから、声をかけづらかった」
「今日は2時間?」
「そのつもりだったけど…実は追加オーダーしてなくて…ちょっと、今からフードを食べる時間はないから、どうしようかなって思ってて…」
「追加オーダーは、キャストドリンクでも大丈夫だよ…でんさんが飲まないなら、わたしがいただいてもいい?」
「それは、もちろん…」
「ありがとう…じゃ、ドリンク持ってくるね」
「うん」
「今日は、せっかく来てくれたのに、あまり、おしゃべりできなかったけど…また、来てくれる?」
「もちろん」
レオさんは、一度カウンター内に戻るとグラスを手にしてすぐに戻って来た。
「そっちのグラスからっぽだけど、乾杯しよう」
「そうだね…じゃ、これで」
私はほぼほぼカラになっているグラスを持ち上げ、レオさんと乾杯をした。
レオさんは、私の眼の前で、グラスの中身をイッキ飲みしてくれた。
「ありがとう。ごちそうさまでした…じゃ、お会計でいい?」
「うん…」
「明日はホワイトデーイベントだよ」
「知ってる…」
レオさんとは、時間にして、たぶん5分弱くらいのやりとりだったけれど、とにかく会えたことが嬉しくて、帰りの電車の中では、この日のレオさんのツイッターのつぶやきを読みながら帰宅した。