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底辺ダンジョン配信者高橋、市長になる。  作者: 松本生花店
第2章 ダンジョンの中に企業を誘致しようとしたら面倒なのに絡まれた
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第49話 【悲報】黒幕の末路が悲惨過ぎた

(あー、疲れた。早く家に帰りてえ)


 公開討論から10日後。

 全ての仕事を終えた高橋は、スマホを取り出し、ネットニュースに目を通す。

 そこには、相変わらず石神信者に関する見出しが並んでいた。


”SNSで拡散中、石神市長支持者が仕掛けたフェイクニュースの数々”

”暴徒化する石神支持者たち、佐藤忠本社にデモ隊が押しかける”

”石神支持者が市議会議員を襲撃、毛利市で集団暴行事件が相次ぐ!”


(古い話題ばっかりだな。今は、もう状況が変わってるのに)


 公開討論後に、石神の扇動に影響された信者たちは暴走して、逮捕者が続出した。


 以前から石神は、こうした行為をけしかける発言を繰り返していたが、自身には責任が及ばないよう、慎重に言葉を選んでいた。

 だが、あの場では、直接的に信者を煽動する発言をしてしまった。

 そのため、扇動の責任を各所から追及されることとなった。

 見苦しい言い訳をして、なんとか逃れようとはしていたが、世論がそれを許すはずもなっかった。

 最近のYapooニュースでは、TVのニュース映像もLIVEで視聴できる。高橋は、それをぼんやりと見始めた。


「石神市長! 毛利市のダンジョン管理で、また新たな疑惑が浮上しましたが、何かご存知ですか?」

「備後市での、不正占拠事件について説明をお願いします!」

「その他にも脱税や公金横領の疑惑がありますが、今日こそお答えいただけますか!?」

「知らないよ! だいたい君たちいつもなんなんだ!? 記者会見で話しただろ!」

「記者会見での説明が不十分だから、こうして質問に来ているんじゃないですか!」


 沢山の報道陣に自宅前で囲まれた石神が、ヒステリックに叫んでいた。

 彼の家の壁には卑猥な落書きが沢山描かれ、玄関先には、多数の動物の死体が横たわっている。


「このクソ野郎が! よくも俺たちを騙しやがって!」

「俺は騙されてないけど、空気に流されてた!」

「最初からゴミだって俺は気づいてたんだ! 本当だぞ!」


 集まっている記者たちをかき分けて、元石神信者だと思われる3人組が乱入してきた。

 直後、3人は鉄パイプで石神を袋叩きにし始める。

 さらに、倒れ込んだ石神の頭に、背負っていたビニール袋を破って、なにかをかけた。

 袋の中身は糞尿のようだ。

 石神の後頭部は血と糞尿が混じり、大変なことになっていた。


(石神もアホだけど、元信者達も同じくらいにはクズだよなぁ)


 ニュース映像を見ながら、高橋はため息をつく。

 公開討論直後、石神信者たちは暴徒化した。だが、石神の様々な不正行為や違法行為が、明らかになるに連れて、その数は急速に減少していった。

 今ではネットの世界に、石神信者は、ほとんどいない。

 しかし、元信者たちは反省している様子が全くない。

 自分たちの過去の行動など、完全に無かったことにして、平然と石神に過剰な攻撃を行っている。


(こういうどうしょうもない連中しか、石神は信者化できなかったってことだな)


 だが、元信者達もこのまま無事では済まない。石神の扇動で散々苦しめられてきた被害者達は、情報開示請求をして、訴訟の準備を進めていると聞いている。醜い独善に酔いしれ続ける元信者たちの歓喜は、そのうち悲鳴に変わるだろう。

 しかし、まだ石神は逮捕されていない。人づてに聞いた話では、罪状が多すぎて捜査が追いつかないのだという。

 ただ、報道を通して知る石神の近況は、捕まった方がマシではないかと思うようなものばかりだ。

 海外に逃げようとしていたという話も聞いたが、それも失敗に終わったらしい。

 毛利市の市議会は、近日中に不信任決議を提出する予定だという。


(ったく、この野郎のせいで公開討論が終わってから、俺はずっと忙しくてたまんねえよ)


 警察、総務省、国税、毛利市の市議会議員、マスコミ。討論の直後から現在に至るまで、石神の不正を暴いて手柄をあげたい色んな人間達が、情報提供を求めて高橋の元に、毎日押しかけてきている。

 それらに丁寧に対応しつつ、通常の公務もこなしているので、高橋の疲労はピークに達していた。


(それに、いらねえ実績も作っちまったし)


 今までは配信者上がりの口達者な市長ということで、ネットでバズっていただけだった。

 レッドドラゴンを追い返して、市を経済的に救ったことはあるが、あれは市長というより元ダンジョン配信者としての功績だ。

 だが、今回起こった一連の騒動で、自分は政治家として、確固たる実績を作ってしまった。

 まず、今まで全ての自治体で複雑な利害が絡み合い、触れることすらタブーになっていた、亜人との関わりについて、市議会で議論してしまった。

 次に、日本の憲政史上初めてになる、ダンジョンの中での行政代執行を実施してしまった。

 さらに日本国内で始めて、ダンジョン内に農園を開発し、巨大農業法人を誘致することに成功してしまった。

 不本意なことに世間は、高橋を有能な市長として注目し始めている。


(クソ、俺は政治家なんかやりたくねえ。早くダンジョン配信者に戻りてえんだ)


 そんな事を思っていると、ふたばがコーヒーを持ってきた。


「し、市長、どうぞ」

「ふたば君、君は副市長なんだ。秘書みたいな事させるのは申し訳ないから、そういうのは良いって何度も言ってるだろ」

「す、すみません。でも、今日は特にお疲れのようでしたから」

「いや、気持ちは嬉しい。ありがとう」


 ふたばの淹れてくれたコーヒーをゆっくり飲み、高橋は一息つく。


(なんにしても、後は大きな予定が無いから、残り1時間くらいで仕事も終わりだな。イヤッホー! 久しぶりに早く帰ることができる!)


 1時間が経ち、椅子から立ち上がろうとしたとき、高橋は自身の身体に大きな異変が起きていることに気づいた。



(な、な、なぬーー! どうしてこんな事になってるんだあああ!)


 下半身にある高橋の男性自身が、信じられないほど元気に、いきり起っている。

 このままでは恥ずかしくて椅子から立てない。

 訳が分からず混乱していると、ふたばが再び声をかけてきた。


「し、市長、先ほどのコーヒーですが……実はマムシとスッポンと、にんにくのサプリメントを砕いて入れておきました」

「え!? そうなの? でも、味は全然普通だったけど?」

「ほ、ほとんど無味無臭の奴ですから……あ、後、青い錠剤も砕いて入れておきました」

(あ、青い錠剤! それってバイアグラの事か!?)


 なんで、この様なことをしたのか理解できずにいると、ふたばは顔を真っ赤にしながらたどたどしく言葉を続けた。


「わ、私も、その、ゆず希さんや片桐議員に負けないように、もっと積極的になった方が良いのかと思いまして……」

(いや、意味分かんねえ! 俺は気づかないうちに、何かふたば君に恨まれることをしてしまったのか!? もしかしてさっきのコーヒー淹れなくて良いって言葉が気に障ったのか!? いや、飲む前から、この仕込みはされてたみたいだし……)


 高橋はひたすら混乱する。

 いずれにしろ、このままでは席を立てないので、何とかして早く帰る方法を考えなければならなかった。




ご拝読頂きましてありがとうございました。

第二部は、これにて終了になります。

カクヨムには先行して第三部を掲載しておりますので、よろしければこちらをご覧ください


https://kakuyomu.jp/works/16818093080549226564

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