三 道程の始まり
──部隊任命までの数日間、わたし達三人は、中央都市の街を観光していった。
──そんな日々はあっという間に過ぎ、わたし達は協会本部の上階の一室にいた。
わたし以外にレノア先輩やライルもいる。
眼の前には偉そうな感じのおじさんも。その傍らには、大人の女性が控えていた。
その一室の扉をノックする音が響く。失礼しますと入ってきたのは、シオンちゃん!
それにファーレイ君だ〜
シオンちゃんは、気まずそうな表情をしていたけれど。
また会えたね~。嬉しいな〜
わたし達の横に二人も並ぶと、偉そうなおじさんが咳払いをした。
「まだ、一名来ていないようだが……始めさせてもらおう。まず……」
おじさんは、またもや、コホンと咳払いを……。
「諸君! 私は君ら裁司者の上官にあたる裁司長官である。君達に集まって貰ったのは、部隊任命の事でだ。ではあとは秘書の君に頼む」
すると傍らに控えていた女性は、書面に目を向けながら口を開く。
「はい。……この場にいるメンバーで部隊を組んで頂きます。部隊長には経験者のレノアーデ・ヴァレット」
レノア先輩が部隊長……すごいね……!
列車の任務の時みたいに隊長って呼ばなきゃだね。
「それと、まだ来ていない経験者のジェイ・オーキスも同じ部隊です」
「呼んだかい?」背後の扉の前には、いつの間にか人が立っていた。
「遅いです。時間までにと通達が届いていたはずですが……」
秘書の女性は、ふぅとため息をつく。
「そんな顔をしてるとせっかくの美人が台無しさ。遅れたが、僕がジェイ・オーキスだ。みんな、よろしく頼むよ」
良く見ると、どこかで会っている気がするんだよね……
そう思うけど……思い出せないでいると……
ジェイって人は話しかけてくる。
「おや、君はもしかして、昨日の?」
昨日の? って何のことだろ?
わたしが首を傾げていると、ライルがゲッとした表情で。
「てめえは、昨日の軟派ヤロウじゃねえか!」
「君は確か野蛮そうな少年! それはそうと、お嬢さん、君の名前は?」
「えっと、アリシェア・フローベルだよ」
わたしが名前を答えると、ジェイって人は急に額を押さえだした。
どうしたんだろ? 頭が痛いのかな?
「あのジェイさん、大丈夫ですか?」
わたしの声かけに、ジェイって人は顔を上げる。
「……アリシェア・フローベル。なんて良い名だろう! あと僕の事は気軽にジェイで構わないさ」
「じゃあ、ジェイ先輩って呼ぶことにしますね〜」
わたしがそう呼ぶと、ジェイ先輩はさらにテンションが上がったのか捲し立ててくる。
「ジェイ先輩……その響きも良い! それはそうと、アリシェアちゃん、僕は君に運命を感じる! 昨日だけでなく今日も会え、更に同じ部隊だなんてね! アリシェアちゃんも、そう思わないかい?」
わたしは適当に、「偶然ですね~」と答える。
「そうだろ? この後どうかな? 良いスイーツのお店があるのだが」
わたしが答えようとすると、裁司長官とその秘書さんの咳払いが聞こえた。
「ジェイ・オーキス。お喋りはその辺にして下さい」
秘書の女性に言われてジェイ先輩は、「なんなら君も来るかい? 両手に花は大歓迎だよ」と茶化す。
すると秘書さんは、ジロリと鋭い睨みを利かした。
さすがにジェイ先輩は、まずいと思ったのか黙る。
「この様に性格に難ありですが、経験者なので実力は保証致します」秘書さんは、眼鏡を指先でちょいと押し上げる。
「それと、他の部隊と区別がつくよう、部隊名を考えて下さいね。以上になります」
そこで、裁司長官のおじさんが「では解散!」と声を上げた。
わたし達は部屋を後にする。
ようやく裁司者になれて……ようやく部隊も結成して……
これからなんだね……わたしの裁司者としての道のりが始まるのは……!