三 良い作戦
──わたし達は今、列車が見渡せる位置にいた。
といっても岩陰に身を潜めているけどね。
今、導士のファーレイ君が伝達で列車内の導師と意思疎通をしている。どう突入するか細かい作戦はまだ決まってないんだよね……
偵察はシオンちゃんだっけ?
作戦内容決まりました……これから作戦内容を、ぼく経由で向こうの導士から皆さんの頭の中に伝えます……
ファーレイ君の声が頭の中に響く。しばらくして……
……初めましてぇ〜私のファーレイちゃんがお世話になってまぁす
……誰がお世話になってます、ですか!? 真面目にやって下さい……!
……はぁい……怒られちゃったぁ……
……簡潔に言うとねぇ……そちらの仮部隊のシオンちゃんに列車内の偵察と奇襲を任せます……
で、犯罪者達が動揺している間にこちら列車内の私達で取り抑えます……紛れている罪業者どもは残りの裁司者達が相手するから安心してねぇ〜以上よぉ〜
伝達が途切れたみたい。それからファーレイ君が口を開く。
「……ということで以上です。皆さん準備良いですか?」
そこでわたしは、ふと閃く。
「ちょっと待って! わたしに良い考えがあるの」
「良い考えですか?」ファーレイ君は聞いてくる。
「良いだろう。考えを聞かせてくれないかな、アリシェア?」
レノア隊長はわたしの考えを聞きたいみたい……
「はい、もしもの時を考えて……わたしがレノア隊長を……」
──わたしは考えを話していく。終わると……。
「それは良い考えだな。それでいこう」
レノア隊長は賛成してくれた。良かったよ〜
みんなも頷いてくれたみたいで安心……
「それじゃあ伝達で向こうの導師に伝えます……」
そう言ってファーレイ君は、しばらくしてから親指を突き立てて、OKサインを出してきた。
「ではこれより作戦を開始しよう」レノア隊長はそう告げた。
「ワタシの出番って訳ね! 来なさい!」
するとシオンちゃんの周囲に複数の炎を纏った猫が召喚されてく。わあ〜ネコちゃんカワイイ〜
「シオン、その炎を纏っているのは目立つな。消すことは出来るかな?」
レノア隊長の指摘にシオンちゃんは、「出来るわよ」と指をパチンッと鳴らした。すると、猫の炎が消えていった。
消せるなんて便利な力だね……さすがシオンちゃん……!
シオンちゃんは、「行きなさい!」と複数のネコちゃん達に命令をする。ネコちゃん達はバラバラに列車へ向かってく。
「アリシェア、そろそろ頼む」
「はい、レノア隊長……!」わたしは、レノア隊長の背中に回り込んで胴体を抱える。
次に変化の翼を展開し宙に浮かんでく。高く浮くと、わたしも隊長を抱えながら列車を目指す。
その途中……一匹のネコちゃんが列車の中へ消えていくのが上空から見えた。
……時間を置いて二匹……三匹……さらに複数のネコちゃんが列車に乗り込んでく。
しばらくして……脳内に声が響き渡る……
シオンさんの準備は終わったみたいです……
ファーレイ君の声だ〜
わたしは頭の中で返答する。
ファーレイ君、もう少しで上空に着くからね~
……分かりました……
もう少し……もう少し……
もうちょっと……あとちょっと……
よし……あとは静かに隊長を降ろすだけだね……
わたしはゆっくりと下降してく。
少しして……ようやく……レノア隊長を降ろしきった。
ファーレイ君……準備オッケーだよ〜
……分かりました……隊長、指示を!
ファーレイ君はレノア隊長を促した。
……ではこれより、作戦を決行するとしようか……
レノア隊長の指示に、各々返答する。
了解……!
列車内の導士の声が頭に響く。
……それじゃよろしくねぇ〜
それから……突然、列車内から叫び声みたいなのが聴こえた。
シオンちゃんのネコちゃん達が始めたみたい……