二 馬車に揺られながら
それから日が明るい内に、緊急で手配して貰った馬車に乗り込み出発した。
わたしの……初任務……。胸がドキドキするよ……
まだ正式に裁司者になってないけどね……
それからみんなそれぞれに名乗る。
二人とファーレイ君は知ってるけど、残る一人……
名前はシオン・アーデルっていうらしい。
仲良くなりたいな……
わたしは、握手しようと手を差し出す。「シオンちゃんっていうんだね〜よろしくね」
すると手を弾かれるようにはたかれた。けど、気にしない。仲良くしたいし……
わたしは自分から両手で、シオンちゃんの片手を掴み握手した。
「ちょっ、アンタ……!」
シオンちゃんは迷惑そうな顔をしていたけど。
素直になれないだけなんじゃ。そんな気がするんだよね……
それぞれ、あいさつが済むと次は任務について話し合う。
レノア隊長は早速、ファーレイ君に伝達を頼む。
ファーレイ君はしばらく無言になる。
ふとして、「結論から言うと……ぼく達の仮の部隊は救出作戦の参加が認可されました。それで隊長、作戦はどのように考えて?」ファーレイ君は発言する。
「作戦なんだが私が前線に立つよ。アリシェア、ライル、シオンにはサポートを頼みたい」
「それならワタシは偵察が良いと思うわ」
シオンちゃんの力は分からないけど、すごい自信だね……!
するとライルが。
「おいおい、偵察が良いとか。自分の力を教えないで何様だぁ?」
「それならアンタこそ。そのガントレット付けてる感じじゃ本当は前線でしょ? サポートできるのかしら?」
シオンちゃんも突っかかるとライルはさらに。
「なんなら今、力を見せてやっても良いんだぜ?」
「女の子相手に力ずくで分からせようってわけ? 最低ね、アンタ」
「何だと!?」ライルは今にも手を出しそうだったので、わたしは止めに入る。
「ストーップだよ! ライ落ち着いて! それにシオンちゃんも仲良くしよ〜」
そんな私に対して、シオンちゃんは棘のある視線で見ると。
「仲良く? 冗談でしょ? ワタシにはそんな暇ないわ」
そっぽを向いてしまった……
するとレノア隊長が咳払いする。
「……ともかくだな。作戦のためにシオンと導士であるファーレイに何が出来るか教えてほしい。どんな力を持ってるのかな?」
シオンちゃんとファーレイ君の力か〜興味あるな〜
わたしがそう思ってるとシオンちゃんは口を開く。
「分かったわ。ワタシの力は簡単に言うと、炎を纏った生物を召喚できる。炎の使い魔って所ね。偵察が良いと提案したのはそれが理由よ」
「次にファーレイは?」レノア隊長は促す。
「ぼくの……力は……伝達の他に体術だけなんです……。すいません、他の導士だと導術や予見の力もあるんですけど……」
「ふむ、だけど君は既に経験者の導士だね?」
「はい、隊長の言う通りです……今までの部隊のみんなは、ぼくをハズレと言ってました……。でも……その通りなんです……予見はまだしも、導術が使えないなんて……」
気を落とすファーレイ君にレノア隊長は、「それはこれから私が決める事だね。君には状況を見て動いてもらいたい。場合により前線に出るのもありだな。それに……」と手を取って握る。
「この怪我だらけでぼろぼろの拳を見れば、君がどれだけの努力をしてきたかが分かる」
わたしもファーレイ君の拳をそっと握った。
「そうだよ〜ファーレイ君。わたし達は、ハズレだなんて言わないよ」
「ではこれで大体決まった訳だな……あとは、着くのを待つだけだ」
レノア隊長はそう締めくくる。
仮の部隊で不安はあるけれど……わたしはみんなを信じてみようと思う。
馬車はガタガタと揺れながら、着実に列車ジャックの場所へ近付いていってる。
わたしの夢にも……裁司者になる前に異例の初任務だけれどね。