一 部隊結成
わたしが裁司者になる決意を新たにしてると、先頭のレノア先輩は声を発する。
「どうやら何かあったみたいだな。駅員に話を聞こうか」
レノア先輩は駅員のいる方へ進んでいく。
「はい」わたしは気を引き締め返事した。
ライルも「だな!」と返答する。
駅員に近付くと、レノア先輩は「すまない。トラブルがあったみたいだが……何があったのかな?」と質問した。
「あなた方は……?」駅員の男性は怪訝な顔をしていた。
「私は裁司者のレノアーデ・ヴァレットという。何か力になれればと思い声を掛けたんだが……」
「これは裁司者の方でしたか……ではそちらのお二人も?」
駅員の男性は、わたしとライルをチラッと見る。
「いや、こっちの二人はこれから裁司者になりに行く所だ」
レノア先輩は言葉を続ける。
「良ければ、何があったのか話してほしい。この二人も異形との実践はすでに経験してる」
「……実はですね。ここに着くはずの中央都市に向かう列車がジャックされたのです。一応、裁司者も何人か同乗してるらしいのですが……ここだけの話……」
そこで駅員の男性は声を潜める。
「……罪業者が一般市民に紛れているという情報がですね。罪業者と繋がりがあるとの伝達が届いてまして。なのでうかつに列車ジャック犯達に手を出せずにいるらしく」
罪業者……裁司者の力を持つ人が罪を犯すと罪業者になるんだったよね……わたしの力で通用するかな?
「そうなのか……良ければ私達も協力したい所だが……導士がいなく伝達手段が……」
レノア先輩から導士といった耳慣れない単語が……
確か導士は、相手の頭に語り掛け遠くにいても意思疎通をできるだっけ? だからか裁司者達の部隊に一人は導士を入れるとか……だったような……
その時わたしの後ろから前へ進む人がいた。
可愛らしい年下の子供……少女? 少年?
「キミ、どうしたの?」わたしは中腰にしゃがんで子供に話しかける。
「あ、あの、ぼくは導士でし……てその……」
「そか〜導士になりたいの? ダイジョブ! いつかなれるよ」
わたしがフォローすると子供は顔を真っ赤にする。
「ち、違うんです! ぼくは導士でして……」
必死に顔を真っ赤にして可愛いな〜
わたしが癒されていると、「んっ? アリシェア、その子供は? 迷子かな?」とレノア先輩が話しかけてきた。
「迷子……そうかも……!」
わたしは閃くように言う。すると子供が若干大きな声を上げる。
「なんでそうなるんですか!? ぼくは導士なんです! 今証拠を見せます!」
ぼくは……導士のファーレイ・ミデルです……どうです? これで導士って分かりましたよね?
わたしの頭の中にそう声が響いていった。
「すっ……すごいね! 本当に導士なんだね〜」
わたしはファーレイ君に思わず抱きつく。
「わっ!? やめてください!」
「これは驚きだな。ともかく導士も揃って大丈夫な訳だな」
レノア先輩が笑みを浮かべると、同意するようにライルも。
「だな!」と拳同士を合わせたのだった。
近付いてくる足音が聴こえた。
わたしはそっちの方を見る。さっきの女の子だ!
わたしと同じ……裁司者になりに行く子だった。
その女子は後ろ髪を手でかき上げると。
「ねぇその話、ワタシにも協力させてくれないかしら?」
その質問にレノア先輩は、「ということは君も裁司者なのかな?」と返した。
「これから裁司者になる予定だけど? 何か問題あるわけ?」
「いや、正直に言って……裁司者は私だけなんだ。未登録者がもう一人増えてカバーしきれるか……」
わたしは横から声を上げる。
「レノア先輩、この子も一緒にじゃダメですか? なにかの縁だと思うんです。戦力も多いほうが……」
ライルもわたしに続いてフォローして同意する。
「アリシェアの言う通り戦力はあるに越したことはないぜ! レノ姉、おれからも頼む!」
「……分かった、仕方ないな。只、私の指示には絶対従って貰う。私の事は一時的だが隊長と呼んでほしい……良いかな?」
「はい、レノア隊長!」
わたしは勢い良く返事する。
ライルも。
「了解だぜ、隊長!」
「分かりました! レノアーデ隊長」
ファーレイ君も続いた。
最後に新たに加わった子は「分かったわ、隊長」と返事するのだった。