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第18話 誰!?

「本当に、アンナの家にお邪魔してもいいの?」


橋を渡りながらハンスが尋ねてくる。


「ええ。狭くて古くて、汚くて、何にもない掘っ立て小屋の様な家ですけどね」


自分で言ってて、情けなくなってきた。


「いいよ、そんなこと気にしないで。嬉しいよ、僕を家に招いてくれるなんて」


「そう言っていられるのも今のうちかも知れませんよ? もしかするとショックで逃げ出してしまうかも」


少し大げさに話を盛ってみた。


「大丈夫、絶対にそんな気持ちにはならないから」


そんなことを話している内に、帰りたくもない家に到着してしまった。


「……いいですか? それじゃ……開けますよ……?」


まるで今から幽霊の出る家にでも入るような雰囲気でハンスを見る。


「う、うん。僕はいつでも準備出来てるよ」


そしてゴクリと息を呑むハンス。彼も私の雰囲気に飲まれているようだ。

そこで私は頷くと、ノブを掴んで一気に扉を開けた。


すると……。


「アンナッ!! 帰ってきたのか!!」


突然大きな声が響き渡り、見知らぬ男性がこちらに向かって駆け寄ってくる。


「きゃあああああ!? だ、誰!!」


まさか家を間違えてしまったのだろうか? 次の瞬間、私は男性に強く抱きしめられている。


「アンナッ!?」


ハンスの驚く声が響く。


「アンナ! どれだけ心配したと思ってるんだ!! こいつめ!! ふざけるな!」


乱暴な口調で男性は私をギュウギュウに抱きしめる。……く、苦しい……!!


「誰ですか!! アンナを離して下さい!!」


ハンスが男から私を引き離そうとする。


「あぁん!? 誰だ! 俺はアンナの父親だ!」


嘘だ! 私はこんな男知らない!


何故なら私を抱きしめている男は、口は悪いもののイケメン爽やか男なのだから。

アンナの父親はボサボサ頭に無精ヒゲをはやした酒臭い男だ。こんなオーデコロンだってつけていない!


「ハンスさん!! た、助けて!」


「アンナを離せ!!」


「気安く娘の名前を口にするな!!」


「だって助けを求めているじゃないですか!!」


ハンスの言葉に、ようやく男性は抱きしめる腕の力を弱める。


「アンナ。お前、本気で言ってるのか? よーく俺の顔を見てみろ」


ようやく男性は私から離れると、自分の顔を指差す。


「……あれ? もしかして……」


「ああ、そうだ。髭をそって髪を整えた俺だ。ついでに粗末な服も着替えて、久しぶりに湯を沸かしてさっぱりさせた。どうだ? 見違えただろう?」


得意げな父。

でも……確かにうなずける。あのむさ苦しい父親が、実はとんでもないイケメンだったとは……。


「お前がマッチを売ってきてれたからな? ほら、どうだ? 薪だって買って暖炉が使えるようになった。掃除だってしたし、お前のために料理も作ったぞ? 尤もあまり残金が無かったから、殆ど具がないスープだけだがな」


少し照れくさそうに笑う父。


「まさか……」


本当はこの父親……それなりにアンナに愛情を持っていたのだろうか?


「それじゃ、本当にこの人はアンナのお父さんだったんだね」


ハンスが尋ねる。


「ああ、そうだよ。それで? お前さんは何処の誰なんだ? 随分身なりの良いお坊ちゃまみたいだが?」



そこで私は今までの経緯を父に説明することにした――










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