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第13話 今夜のマッチ棒クイズは?

――17時


待ち合わせ場所の橋に行ってみると、既にハンスの姿があった。


「ハンスさん!」


大きな声で名前を呼ぶと、驚いた様子で振り向く。


「ごめんなさい! お待たせして!」


雪の上を走り、ハンスに駆け寄った。


「ううん、そんなに待ってはいないけど……どうして、こっち側から来たの? てっきり向こう側から来ると思ったのに」


ハンスは私が来た方向とは別方向を指す。その先には貧しい集落がある。


「アハハハ……お恥ずかしい話ですけど我が家は隙間風も吹き込むし、暖炉にくべる薪も無いので昨夜はホテルに泊まったんです。何しろ昨晩はマッチが売れて懐が潤ったので。でもそれもハンスさんのおかげです」


「そんな、僕は何もしていないけど……そうだったんだ。アンナの家は……薪も買うことが出来ないくらい貧しかったんだね」


ハンスの目に同情が浮かぶ。


「はい、でもこれからは貧しくなくなる予定です。何しろ、この私がマッチを売って売って売りまくりますから」


ハンスを心配させないために話を盛る。正直、マッチの数にも限度がある。恐らく後1回売りにいけば無くなるだろう。……もっともあの父親にマッチの買い置きがあれば話はまた変わってくるが。


「そうだね。それじゃ、今夜もマッチを売りに行くんだよね? 今日は何処へ行くのかな?」


「ええ。昨晩と同じ店に行きます」


「え? そうなの?」


「はい、まずは店に向かいましょう。歩きながら説明しますから」


ハンスは私の言葉に頷き、私達は早速店に向かった。



****


「そうだったのか。昨晩のお店の人に頼まれたんだね」


私の話に頷くハンス。


「ええ、それだけじゃありません。無料で食事をさせてくれるのですから。ハンスさんも一緒にご馳走になりましょうよ」


「え!? そんな、僕はちゃんとお金を払うよ。大体、その話を持ちかけられたのはアンナだし」


「そうですか? 別に遠慮なんかする必要は無いのに……」


すると私の話に吹き出すハンス。


「プッ! 本当にアンナは明るくて面白くて……それに知的だよね」


「え? 知的? この私が?」


確かに前世はバリキャリなどやっていたけれども。


「そうだよ、だってあんなすごいマッチ棒ゲームを披露するんだから。結局あのゲームを解けた人は誰もいなかったじゃないか」


「う〜ん……確かにそうですけど」


いや、逆に誰も解けなかったことのほうが驚きなのですけど。


「それで? 今夜のマッチ棒ゲームも難しいのかな?」


「はい! 自信あります! きっと解ける人はいないと思いますよ? しかも今夜は沢山お客さんも来るはずですから」


店のマスターが客寄せのために、今夜は店の全てのメニューを割引サービスしてくれるらしい。

きっと昨夜よりも沢山客が来るに決まっている。


「それは楽しみだな。僕も期待しているよ」


「ええ、期待していて下さい。あ、ちょうど店の前に着きましたよ」


窓から店内を覗き見すると、昨晩の倍近い人数が集まっていた。


「それじゃ、中に入ろうか?」


「はい。ハンスさん」


今夜のマッチ棒クイズは正しい式に直すクイズだ。初級者向けから上級者向けまで用意している。


きっと盛り上がるに違いないだろう。


私は意気揚々と、ハンスと一緒に店内に足を踏み入れた――


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