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第11話 不審な目を向けられて

「う〜ん! このフカフカベッド最高!」


ベッドにダイブした私はゴロリと横たわり、ここまで来たときのことを回想した。


***


あの後家を出た私は、予め目星をつけていたホテルに足を運んだのだ。フロントでは明らかに不審そうに私を見つめるフロントマンが偉そうに言った。


「ただいま、こちらのホテルは既に満室でございます。申し訳ございませんが、別のホテルをあたって下さい」


「あら、そうなのですか。仕方ありませんね……」


肩をすくめ、ため息をついた。……けれど、私は知っている。このホテルに空き室があることを。

何故分かるかと言うと、答えは簡単。

フロントマンの背後には部屋の鍵が置かれた棚がずらりと並んでいるのだが、まだ幾つもの鍵が残されている。

つまり、鍵の数だけ部屋が余っているということだ。

今はもう23時になろうという時間。この時間に鍵を預けて出かけるような人々が居るとはとても思えない。



「ええ、どうぞお引取り下さい」


私の言葉に淡々と返事をするフロントマン。


「残念です。それでは他を当たることにします」


そして私はわざとらしくハンドバッグの蓋を開けた。そこには大量のコインが入っている。(何故かこの世界には紙幣が存在していない)


「え……」


フロントマンが私のカバンに目をやり、すぐに私に視線を移す。その目は大きく見開かれ、「何故お前のような小娘がこんなに大金を持っているのだ?」と言わんばかりんの目つきだ。


「空いている部屋があればどこでも良かったのですけどね……満室なら仕方ありません」


そして背を向けたとき――


「お、お待ち下さい、お客様!」


慌てた様子で背後から声をかけられた。


「何でしょうか?」


「い、いえ。先程、満室と申し上げましたが……それは一般的なお部屋のことでございます。ワンランク上のお部屋なら……空いております。いかが致しましょうか? 1泊3万エンほどしますが……」


「ええ、では3万エンのお部屋をお願いします」


私はニッコリと笑い……話は冒頭へと戻る。



***


「やっぱり、あの家に戻らなくて正解だったわ。あんな寒い家で眠れるはず無いものね。その点、この部屋は薪ストーブがあって温かいし」


それに、この部屋が素晴らしい点はまだ他にもある。なんと、部屋に浴室もついているし、ナイトウェアまで用意されているのだ。


「よし! 早速お風呂に入ろう!」


私は意気揚々と浴室へと向かった――



**


「ふぅ〜気持ちよかった〜」


バスローブを着て、浴室から出た私はマッチの箱を数えることにした。


「え〜と、今回持ってきたマッチの数は全部で142箱か……これを今日と同じ金額で売ったとして……21万3千エンか……。かなり稼げそうね。まだあの家にはかなりの数のマッチが残っていたし……よし! それじゃ、明日に向けて今夜はもう寝よう!」


部屋の明かりを消し、ベッドの中に潜り込むとすぐに私は眠りについた。


こうして『マッチ売りの少女』となった私の記念すべき? 第1日目が終了した――


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