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それでも王子なのですか?

 ざわつく貴族達にマレクは青くなったり赤くなったり、顔色をころころと変えていた。


「では本題に入ろう」


 凜としたエリアスの声が、広間に響く。


「私が本日、マレク王子に謁見したのは他でもない。バイガル国が和平協定を破った経緯を確認し、返答次第では相応の罰を下すためだ」

「和平協定? そんなもの、いつ交わした?」

「貴方の祖父が我が国で署名しました。ロワイエを中心に、東の十七の国が二度と戦を起こさないために厳しい決まりを作ったのです」


 マレクは再びぽかんとして首を傾げる。


「聞いた事もないぞ。大きな争いがあったのは家庭教師から聞いているが……我がバイガルは関係の無い事だ」

「ではここにいる貴族の方々に問いましょう。あの大戦の悲劇と和平協定に至る道のりをご存じの方は、足、もしくは杖で床を叩いてください」


 するとそこかしこから、鈍い音が幾つも聞こえた。


「大陸の全ての国が、当事者だったのですよ。王子、貴方は王族として知っていなくてはならない歴史だ。なのに歴史を軽んじ深く学ばなかったのは貴方の罪だ」

「歴史なんて役に立たないものを、どうして学ぶ必要がある? 今は平和なのだから、ワインの銘柄と服の流行を知っていれば十分だ」


 あまりにお粗末な返答に、アリシアはため息も出ない。

 ちらとエリアスに視線を送るが、彼は一切の感情を殺してマレクを見据えている。


(すごい、流石騎士団長だわ。こんなトンデモ理論を聞かされても、ちゃんと仕事の顔を保ってる)


 変なところで感心してしまうが、アリシアも笑ってしまわないよう懸命に気を引き締めた。


「貴方が歴史を知らないことは分かった。しかし協定を破り、戦争の準備を進めていた事実は変わらない。これが証拠だ」


 エリアスが手を掲げると、空中に周辺国と遣り取りをした手紙が浮かび上がった。アリシアとマリーはそれが魔術だとすぐに理解したが、他の貴族達は空に浮かぶ手紙に驚き固まっている。


「これらはバイガルが取り込もうとした国々から、我が国に証拠品として送られた書簡だ」


 王の署名と内容が広間に集った貴族達にも読めるよう、魔術で拡大される。

 そこにはそれぞれの国に「侵略が成功したら、協力した国に土地の半分を譲る」と書かれていた。

 戦争の愚かさ、恐ろしさを知っている各国の王たちは、バイガル王の真意を見極めようと秘密裏に相談した。そして証拠が揃った時点で、調印を行ったロワイエに全ての書簡を提出したのだ。


 勿論エリアス率いる騎士団も、実際にバイガルが軍を動かしているのか見極め、多くの証拠を揃えた。


「嘘だ! 私はなにも知らない! 戦争をしようなど、思ったこともないぞ」

「貴方が知らなかったとしても、王族である貴方は罰を受けなくてはならない」

「私はバイガル国の王子だ!」

「ええ、知ってますよ。王族は様々な特権がありますよね。ですが有事の際には、責任を負わねばならないのです。まして今回は、王が率先して戦争を起こそうとした。その息子である貴方も罪人です」


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